
さえの静かな日常|その6『一緒でなければ … 』
日差しのやわらかな午後。
さえとミツル様は、ふたりでスポーツジムを訪れていました。
少し離れた場所で、それぞれのトレーニングをしていても、
振り返れば、そこに大切なひとがいる。
さえは、その安心の中で、
いつもより少し軽やかに身体を動かしていました。

跳んで、伸ばして、ゆっくり呼吸を整える。
ミツル様と一緒に来たジムは、
さえにとって、ただ身体を鍛えるだけの場所ではありませんでした。
同じ時間を過ごしている――
それだけで、不思議なくらい心まで軽くなるのです





さえは、周囲の視線など、ほとんど気にしていませんでした。
けれど、少し離れた場所でトレーニングしていたミツル様は、どうしても気になってしまいます。
それは、束縛したいからではありません。
ただ、さえが安心して過ごせる場所の方がよいのではないか――
そんな庇護の気持ちからでした。

さえの大切な事は、
設備が整っていることでも、
誰の視線も届かないことでもありません。
ミツル様と同じ時間を過ごし、
互いを感じながら、安心して身体を動かせること。
そして――
身体だけが整っても、
心がひとりになってしまうのなら、
それは、さえの望む健やかさではありません。
一緒に笑い、
一緒に汗を流し、
そばにいることを確かめられる。
さえにとっての「整う」とは、
きっと、そういうことなのでした。