
ありがとう
私はお互いに家庭のある父と母の間に
生まれてきました。
母方の家族と同居していましたが、
週末には父と遠方に外出していました。
お父さんはいる。
だけどお父さんがいると言ってはいけない。
そんな環境で育ちました。
「ねえねえ、お父さんいないの?」
何も知らない周りの子たちは聞いてきました。
いる。大好きなお父さんが。
優しくて、おもしろいお父さんが。
私をぎゅーっと抱きしめてくれるお父さんが。
だけど誰にも言えませんでした。
母はよく泣いていました。
一緒に楽しく外出して、自宅に帰る父の背中。
小さな街ですぐ広がる噂と、他人からの目。
父の家族からのたくさんのいやがらせ。
「悪いのは私たち」
「私たちはおまけなんだ」
小さな私を抱きしめて母は泣いていました。
成長してきた私は思うようになりました。
「私が産まれなければ」
父と母は別々の道を歩み、
こんなに泣くことなく生きていけたのに。
そう思った時、心に浮かぶ言葉が。
「あなたはお母さんが産みたくて産んだのよ」
「お父さんとの子どもを産みたい、育てたい。
そう思ったからあなたはこの世に産まれたんだよ」
その言葉が暗闇の中に射し込む、一筋の光でした。
「生きていていい」
「私は望まれて産まれてきた」
そう思うと未来が明るくなりました。
私の父と母はとにかく愛情深い人達。
私の心には父と母の愛情がたくさん
詰まっています。
高校生の時、悪さをして家に電話がいきました。
どうせ母だけが来ると思っていた私は、
開いたドアから出てきた父の姿に目を疑いました。
私のことを母から聞いた父は、
すぐに母と合流し、駆けつけてくれたのだという。
これはこっぴどく怒られるなと思いました。
しかし車に3人で乗り込んだ時、
父はいつもの優しい声でこう言いました。
「おなかすいただろ?」
そう言って私が好きな納豆巻きをくれました。
父の優しさで涙が溢れてきました。
時が経ち、私が半分ヤンキーの元旦那と
授かり婚をした後、元旦那の不甲斐なさに
泣きながら母に電話をした時がありました。
すぐに電話は父に代わりました。
「お父さんはちゃんとわかってるからな。
大丈夫だ。泣かなくて大丈夫だ。
みーちゃんと赤ちゃんを育てるくらいなら
お父さんにもできるから。大丈夫。
だから安心していい。お父さんが守るから。」
よくわからない男性を突然家に連れていき、
数日後に妊娠を報告し、
何がなんだかわからなかったのは父の方。
なのに、そんな言葉で私の心を包んでくれました。
あぁ、私はこの人の子どもに産まれてこられて
なんて幸せなんだろうと思いました。
再婚してからうつになった私。
涙が止まらず子どものように泣く私を
駆けつけてくれた母は抱きしめてくれました。
「頑張ったよな。
小さいときからいっぱい頑張ったよな。
我慢ばっかりさせてごめんね。」
と言いながら。
辛かったのはお母さんのほうなのに。
自分のことは後回しで私を守ってくれました。
今でも父と母は私の心を支えてくれています。
状況が変わり、2人はいま一緒に暮らしています。
そして笑いながら一緒にテレビを観ています。
昔は一緒にいられなくて辛かったのに、
今では一緒にいるからこその悩みを
娘の私にぼやいています笑
でも思います。
「幸せだね」と。
太陽のように底抜けに明るい母と、
優しくあたたかい月のような父と、
生きていられることが幸せです。
泥の中をがむしゃらに生きていたあの頃。
今、「幸せ」という華を咲かせられたのは
紛れもなく周りの人のおかげです。
特に父と母。
父も母も年をとりましたが、
まだまだ元気でいてほしいです。
誰も気にすることなく一緒にいられる今を、
たくさん抱きしめていこうね。
ありがとう、大好き。