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012 愛ってこんなんだっけ? (前編)


    20代半ばの頃、ジョニー先輩(仮名)から「ウチのバンドでギターを弾いてみないか?」と誘われた。

    自分はギターをただ所持していただけに等しく、バンドに加入した事も無かったが、ライブハウスで見かけてカッコ良いなと思ってた人だったので、無謀にも請け負ってみる事にした。

    先輩はオタク気質で温厚な人だったが、一旦スタジオに入ると鬼と化して怒鳴りまくった。

    嫌になる事も多かったが、スタジオ外では不思議と温厚キャラに戻るので、ストレスが限界を超える所までは行かず、3回行った県外でのライブも旅行気分で楽しかった。

    1年ほど経って他のメンバーの都合で解散となったが、先輩との交流はその後も続き、時々遊びに行ったりもした。

    そして特に理由もなく一旦疎遠になり、その間に先輩は結婚して息子が生まれ、幸せに暮らしてると聞いた。

    こちらとしても、家庭を持った人の家にフラフラ行くのは憚られたので寄り付かなかったが、数年後に離婚したとの噂を耳にしたタイミングで、ちょうど本人から連絡があって久しぶりに元メンバーと遊びに行く事となった。

    先輩のアパートには、まだ家族3人で暮らしてた痕跡がたくさん残ってて、溺愛する小さな息子くんも一緒だった。

    離婚の原因は、元嫁さんが日々の子育てでどんどんストレスを募らせて行き、とうとう職場の若い男と浮気して出て行ったという事を赤裸々に語られたのだが、明らかに先輩は未練たっぷりだった。

    そして「これを観てくれ」とも言わずVHSのビデオテープをセットして、先輩が撮ったのであろう、かつての仲良し家族だった時代のホームビデオを流し始めた。

    何なんだこの時間は。こんな物を見せられたところでどうすれば良いのだ?

    …と思ってる我々の事などお構いなく先輩は、ブランコに乗る息子くんの背中を押しながら微笑む元嫁の姿を見て、

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    「いや〜、この頃は良かった」


    などと言いながら涙ぐんでいる始末だ。

    聞けばカミさんが出て行って3ヶ月、毎晩このビデオを観ているのだと言う。

    しかし、よく後輩の前でそんな女々しい姿をさらけ出せるねこの人は。

    挙げ句の果てに、こんな事まで言い出した。

    「最近はどうにも眠れなくて、気付いたら夜中に1時間掛けて嫁の実家に行って、明け方まで部屋を見つめてしまうんよな…」



    「いや、『見つめていたい』って、Policeの歌じゃ無いんだから…」


    「オレって多分…愛が深過ぎるんだわ」



    いやいや、


    世界はそれをストーカーと呼ぶんだぜ!

    世間じゃそれを犯罪者と呼ぶんだぜぇ〜!



    さっきまでミニカーを乱暴に走らせてヤンチャに遊んでた坊やが、いつの間にか床で寝てたのをきっかけに、その日はお暇する事とした。


    急展開の後編に続く…

     
     
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