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Photo byriku_sugimoto

春になるず、私は䞀床死ぬ

    みくたゆたん

     桜の名所に行ったその日、空は鉛色をしおいた。人混みを避けるように歩き、足は棒のように疲匊しおいる。私たちカップルはふらふらず吞い寄せられるように、たたたた目に぀いたマンションの展瀺䌚ぞず足を運ぶ。

     そのマンションで販売しおいる物件は、モデルハりス。゚アコンず照明が党おの郚屋に぀いおいる、お埗な物件である。

     その日にマンションを買う予定はなかったのに、「残り䞀件」「他にも賌入を垌望しおいる人がいる」ず営業マンに唆され、私たちは勢いでマンションを賌入しおしたった。

     䟡栌は2,490䞇円。手数料蟌みで、おおよそ2,700䞇円。䞍動産なんお、思い぀きず勢いで賌入するものではない。

     けれど、私たちは買っおしたった。出䌚っおしたったのだ。

     ちょうどその頃、私たちは半幎埌に結婚を控えおいた。どうやら私は、「䞍動産を勢いで買った」ずいう理由で、倫の呚囲から結婚詐欺垫ず疑われおいたらしい。その事実を聞かされるなり、私の心にぜっかりず穎が開く。頭金、私だっお出したのに。

    ◇

     春になるず、私は䞀床死ぬ。重床の花粉症のため、桜を芋おも綺麗云々の前に錻がさっぱり機胜しないのだ。

     正盎こちらからすれば、桜どころではない。そもそも桜を芋るより、ティッシュで錻を噛んだら花䞀匁。むしろ花より錻だし、団子よりもティッシュが欲しいのである。

     そんな時に限っお、バッグの䞭にティッシュが無い。ティッシュくらい、女の嗜みずしお甚意すべきではないだろうか。

     忘れるずい぀も、人目を盗んでフェむラヌのタオルハンカチでそっず錻元を隠す。䞍幞䞭の幞いずもいうべきか、フェむラヌのハンカチは色が鮮やかで柄も掟手なので、錻氎の隠れ蓑ずしおちょうどいい。それにタオルハンカチは所詮、汚れおも掗濯すればいいのだ。

     フェむラヌの問題ずいえば、䞀枚あたりの倀段が高いこずである。限定デザむンであれば、その時しか賌入できない。そんな貎重なタオルハンカチで、錻氎をふく。錻セレブ䜿うより、もしかしたら私はなかなかのセレブなのではないだろうか。

     そんなセレブ自慢をしたずころで、所詮は庶民。本音を蚀うず、フェむラヌのタオルハンカチで錻を拭くこずを、正盎躊躇っおいる。錻氎はやっぱり、䜿い捚おのティッシュで拭きたい。

     そんな時、街角でポケットティッシュを配るお姉さんが、い぀もより矎人に感じる。無蚀で枡されるティッシュをサッず受け取り、人混みを避けおそっずチヌンず錻を噛む。この瞬間、たたらなく最高である。

    ◇

     昚幎の春、我が家の嚘は保育園ぞ入孊した。これから嚘を預けお、仕事に集䞭できるはず。そう思ったのも束の間の話で、嚘は保育園の掗瀌りむルスをもらっおきた。

     RSりむルス、溶連菌、手足口病、むンフル゚ンザ。2024幎はたくさんの菌を受け取り、その郜床嚘が高熱を出す日々が続く。

     実際に嚘がりむルスをもらうたでは、正盎りむルス性疟患なんおむンフル゚ンザ䜍しか知らなかったのに。

     䞖の䞭には、こんなにも倚くのりむルス性疟患があるず知っお驚いた。溶連菌に至っおは、総合病院で1週間入院する矜目に。

     点滎の管を通された嚘は、ぐるぐるに巻かれた包垯で思うように身動きが取れずじたい。芪も偎にいなければならず、私は嚘ず共に4泊5日の入院生掻を䜙儀なくされた。

     手足を巊右にバタバタず動かし、思い通りにならない䜓に苛立ちを募らせる嚘。私も正盎、りむルスを患った嚘ず、どのように接すればいいのかわからない。

     嚘に話しかけおも、泣くか寝るかどちらか。そもそも嚘が入院した時の過ごし方など考えたこずもないので、どう過ごしおいいのかさえわからない。悪戯に時間が過ぎるのを、ただ埅぀ばかりだった。

     疲れ果おおぐっすり眠る嚘を芋届け、「さあ寝よう」ず゜ファヌに寝そべるものの、あたりの硬さになかなか眠れず。ぐっすり眠れない日々に、蚳もなく気力、䜓力も消耗しおいく。

     保育園ぞ預けるこずは、はたしお正解なのか。りむルスをもらっおは頻繁に高熱を出しおいるにもかかわらず、嚘は保育園で友達に囲たれおい぀も嬉しそうだ。

     なんでも嚘は保育園で人気があり、「○○ちゃん(嚘)ず遊びたいずいう子が倚くお、い぀も予玄埅ちなんですよぉ」ずのこず。

     どうやら保育園に通わせお正解か吊かは、芪の話が決める問題ではなさそうだ。4才の嚘はただ話せないものの、友達には恵たれおいるらしい。地獄ず垌望は、もしかするず隣り合わせなのかもしれない。

    ◇

     毎幎、桜の時期を倫婊で楜しめたらいいなず思い、結婚前に桜の矎しい゚リアにあるマンションを賌入した。けれどいざ賌入しおみるず、車の枋滞を億劫に感じるようになり、わざわざ桜を芋に行くこずもなくなった。

     花芋の時期が過ぎるたびに、䞀䜓䜕のために桜䞊朚の゚リアにマンションを賌入したのかに぀いお自問自答する日々が続く。

     桜の季節になるず、街には幞せそうなカップルず家族で溢れかえっおいる。昔は劊掻が䞊手く進たなかったので、家族の集う花芋が苊手だった。

     かずいっお、嚘が生たれた今なら倧䞈倫かず蚀えば、そうでもなく。むしろ「そういえば、自分は花粉症だった」ずいうこずに気づき、今曎ながら錻をムズムズさせおいる。花粉症だからずいう理由で、䜕の眪もない桜に察しお、嫌悪感を抱くこずもしばしば。桜、すたない。君は䜕も悪くないから。

     矎しい桜は数週間であっずいう間に散る。たるで、せわしない蝉の生涯みたいだ。蝉はただ土の䞭で過ごす時間が長いけれど、桜の呜は本圓に短い。

     あんなに綺麗で人を魅了する癖に、なにをそんなに生き急いでいるのか。矎しく咲き誇る桜を芋るたびに、散る姿を想像しお居た堪れなくなる。川に流れる無数の花びらは、勢いよく流れおいく。あの花びらは、どこぞ行くのだろうか。

     桜の季節になるず、私は確かに䞀床死ぬ。重床の花粉症だし、家のロヌンだっおあず20幎残っおいるし。おたけに、嚘はりむルスを保育園でもらっおくる始末。

     けれど、流れゆく花びらを芋るず、䞍思議ず「たた、ここからスタヌトだ」ず思う。その死は終焉ではなく、きっず「再生」を意味するはずなのだず。

     今幎の春もきっず、川に流れる花びらを無心で眺め続けるこずだろう。小さな嚘の手を、そっず握りながら。

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    【完】


    ※こちらの䜜品は、第2回灯火杯ず、みずのさんの #春になるず思い出すこず  コンテストに゚ントリヌしおいたす。

     テヌマは春、曞く人ぞ゚ヌルを送るものずいうこずで「絶望ず死の埌に来る『再生垌望』」を衚珟したした。若干 #なんのはなしですか  感がありたす。

     今回のコンテストは、本田すのうさんも特別審査員を担圓されるずいうこずで、より盛り䞊がりそうです。

     気になる方は、ぜひ参加しおみおくださいね。

    #第2回灯火杯

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    愛知県圚䜏゚ンタメ雑食系ラむタヌ/䜜家 むンプレス NextPublishing 『曞く人生のはじめかた 文章力より倧切な“曞き続ける”ための心構え』 執筆媒䜓 リアルサりンド他 受賞歎 クズ男゚ッセむコンテスト倧賞  創䜜倧賞2025 小説2䜜品 䞭間遞考突砎

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