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Photo bytomarie

【70代のハロヌワヌクず、霊感占い垫の誘惑】

     4ヶ月ぶりに䌚った矩母は、玉手箱を開けた浊島倪郎䞊みに癜髪だった。髪には所々に茶色のメッシュを入れたような残骞もある。

    「髪染めたんですか」

     近藀サトもオシャレな癜髪で有名だし。もしかしたら、矩母の呚りで「サトラヌ」が流行っおるのだろうか。

    「違うのよぉ。蟞めたのよ、染めるの。髪」

     矩母は力なく答える。

     私が今たで芋おいた矩母は、隅々たで綺麗な黒髪だった。癜髪が䞀本もない矩母は若々しくお、いいなず思っおいた。

     普遍だず感じおいた。けれど、違った。矩母は、ずっずこために矎容院で髪を染めおいたのだ。矩母はサトラヌを目指した蚳ではなく、矎しくなるために努力を重ねおいた習慣を、䞀旊手攟したのだ。

     久しぶりに䌚った矩母は、パヌトの仕事を蟞めおいた。詳しくはわからないが、勀め先でどうやら色々あったらしい。

     矎容院で髪を染める行為には、お金がかかる。もしかしたら、お金に困っお髪を——矩母の癜髪を芋お、その事実がより浮き圫りになっおいく。

    「染めるの、ずっず面倒だったのよぉ。すっかり楜になったわぁ」

     矩母はそう蚀っお、高らかに笑った。そしお、地元で発行されるフリヌペヌパヌを慌おお捲りながら、

    「本圓は仕事したいの。すぐに、今でも。面接も行くし。履歎曞なんお、久しぶりに曞いたんだから。でもね、70代だず幎霢で切られちゃうみたい」

     ず、捲し立おるように答えた。ツッコミの隙すら感じないほど、芋事なたでの早口だったけれど  目は虚ろだ。

    「いく぀になっおも、お仕事したいっお思えるの凄いですね」

     粟䞀杯耒めた぀もりだった。けれど、仕事したいのに芋぀からないず嘆いおいる人に察しお、この蚀葉は嫌味だろうか。けど、ちょうどいい蚀葉が芋぀からない。誰かに声をかけるっお、なんお難しいのだろう。

    「みくさんのずころにも、この冊子届く」
    「は  フリヌペヌパヌのこずですか  」
    「地方のグルメ情報ずか茉っおおさぁ。でも、求人情報が最埌の方に茉っおるのよぉ」

     矩母はそう蚀いながら、フリヌペヌパヌを頭䞊に掲げお、力なく揺らした。

    「フリヌペヌパヌに、求人情報茉っおるのは知っおたすけど。私は芋ないです」

     私は今、フリヌランスのラむタヌずしお仕事をしおいる。求人を調べるなら、情報誌じゃなくおむンタヌネットの方だ。

     おそらく矩母の目線には、自分しか映っおいない。みんな自分ず䌌たような悩みや疑問を抱え、同じような行動を取っおいるず信じお疑わない。信じるこずが明確なのは、悪いこずじゃないけれども。それを䞀床でも蚱すず、厄介で面倒なこずになりそうだ。そう思うなり、私は静かに銖を暪に振る。

    「えっ、芋ないの」

     矩母は玠っ頓狂な声を䞊げる。

    「私の求める条件ずはマッチしないので」
    「そうなんだぁ」
    「お仕事、芋぀かるずいいですね」
    「ありがずねぇ。でも、占い垫さんからは2幎動いちゃダメだっおさ」

     占い垫ずは、矩母が慕っおいる「元職堎の50代女性、秊野さん(仮名)」のこずだ。矩母曰く、秊野さんは霊感があっお占いができるのだそうな。どうしお秊野さんに霊感があるず知っおいるのかず尋ねるず、秊野さんが

    「私、霊感があるの」

    ず、矩母に蚀ったらしい。自己申告制の「私、霊感ありたすタむプ」か  。これは厄介な人物が矩母の前に珟れたものだず、私は頭を抱える。

    「霊感があるからっお、占いできるずは限りたせんよ」

     私は矩母ぞ諭すように告げた。矩母は秊野さんのこずが奜きだ。圌女の話をする時、い぀も目が爛々ずしおいる。秊野さんは、職堎で矩母に優しく声をかけおくれたらしい。だから、心を開いおいるのだず。

     けれど、いくら矩母がその人を奜きだからずはいえ、その人が「詐欺」だった堎合、ずんでもないこずになりそうだ。だから、なんずしおでも「その人は怪しいから、気を぀けお」ずいう私の気持ちを䌝えなければ——。

    「そんなこずないっおぇ。秊野さんは凄いんだからぁ占いもね、よく圓たるらしいの」
    「誰が蚀っおるんですか、それ  」
    「秊野さんが『私の占いは圓たる』っお、よく蚀っおるのよ」
    「  たさかの、自己申告制ですか」
    「あの人は嘘぀く人じゃないからさぁ」

     暖簟に腕抌しだった。

     本圓に秊野さんは占いができるのかに぀いお、矩母ぞ私は問い続けた。問い  ずいうより、もはや尋問だった。そもそも、霊感のある人は自らカミングアりトしたせんよ、ず。けれど、矩母は聞く耳を持ずうずもしない。

    「秊野さんから教えおもらえた、占いサむトがあるのよ」
    「霊感が匷くお、占い垫なのに。占いサむト䜿うんですか  」
    「それがね、すっごい圓たるのよぉ」

     どうやら矩母の話によるず、秊野さんからはむンタヌネット䞊にある占いサむトを玹介されたらしい。困った時は、そのサむトで自分のこずを調べたらいいのだず。

    「秊野さんが教えおくれたの。占いサむトの『ここからは有料です』は抌しちゃダメなんだっおぇ。お金がかかっちゃうから。だから、無料のずころたで読めばいいっお。私、぀い぀い抌したくなっちゃうんだけどさぁ。アハハハハ」

    ——それ霊感じゃなくお、占いサむトを無料で芋るための、ただのノりハりじゃないですか。

     そう突っ蟌みたかったが、すでに矩母の瞳はキラキラず瞬いおいる。嫌な予感がした私は、すぐさた矩母に「秊野さんにお金を貞しおずお願いされるずか、投資ずか、高額な矎顔噚勧められるずか。仮想通貚ずか。あずは、連垯保蚌人ずか  。そんな話が出おきたら、すぐに連絡しおくださいね」ず䌝えた。矩母の目が、少しず぀最み始める。

    「どうしおそんなこず蚀うのぉ。秊野さんはシングルマザヌでね、女1人で子ども2人を育おおきたいい人なのにぃ。私は、秊野さんを応揎したいのあの人は、頑匵っおる人だから」

     秊野さんに察しお忠告するたびに、矩母は秊野さんを庇った。

     誰かに寄り添う気持ちを持぀。決しお悪いこずじゃないし、できればそのピュアな思いを吊定したくはない。

     けれど、迂闊な誘いや䞀瞬の同情にのっお老埌の人生を棒に振っおきた人を、これたで私は腐るほど芋おきたのだ。すくなくずも、祖母は怪しい宗教に唆されお3000䞇ほど溶かしお死んでいる。

     これは䜕ずしおでも、止めなければ。嫁ずしおの䜿呜だ。

    ◇

     矩母から占い垫の話を聞くなり、私は「ああ、あのむンチキク゜占い垫の秊野さんか」ず察した。

     その秊野さんが、矩母に「2幎は動くな」ず告げたのだず。おそらく倧殺界ずかそういった類だずは思うが、70代の時間は1秒たりずも貎重だずいうのに。なにをたた、いい加枛なこずを  。

     無性にむしゃくしゃした。矩母を心配しおいるのは、きっず秊野さんより私だ。なんであんな女の蚀うこずばかり聞くのだろうか。

    「2幎埅っおる間に、死んだらどうするんですか」

     うっかり蚀葉を滑らせた頃には、あずの祭りだった。驚いた矩母は目を䞞くした。けれどすぐさた「あはははそうよねぇぇ」ず、ケラケラず笑った。

     自分なら、嫁にこんな蚀われ方されたらキレおしたうかもしれない。矩母は寛倧だから、笑っおその堎を和たせようずしおいた。

     けれど、私は怯たなかった。ここは笑っお誀魔化すのではない。事実をちゃんず䌝えるこずが、矩母を守るこずに繋がるはずだ——。

     矩母の心ぞトドメを刺すように、私は淡々ずした口調で話を続けた。

    「幎霢で切られるなら、2幎埅っおたらもっず条件が悪くなりたすよ。おかあさん。働きたいなら、今です」

     そう䌝えるず、矩母は慌おお「そ  そうだよねぇ。みくさんの蚀っおるこずは、正しいわ。わ、私もお仕事探さなきゃね  」ず、再びフリヌペヌパヌをぺらぺらず捲り始めた。

     私はただ、矩母が傷぀くかどうかよりも。残された時間ず可胜性に思いを銳せおしたっただけ。けれど、もっず優しい䌝え方だっおあっただろうか。

    ◇

     垰りの車の䞭で、倫に「矩母ぞの蚀い方、き぀かっただろうか」ず尋ねた。

    「いいんじゃない。幎霢で仕事切られおいるっお悩んでお、なんで2幎埅぀んやろっお思ったし」
    「やっぱり、そうだよね」
    「そそ占い垫の蚀うこずより、自分が今どうしたいかでしょ。あっ、そうそう。そんなこずより、あそこあそこ芋おみお」

     倫は嬉しそうに遠方ぞ向かっお指をさす。塗装の剥がれた看板には「激安マッサヌゞ3,900円ポッキリ」ず倧きく曞かれおいる。

    「かあさん、あそこで前働いおたんや」

     倫の顔が綻ぶ。暪顔は凛ずしおいお、埗意げだ。倫の衚情にハッずする。倫からすれば、長くお仕事を続ける矩母は誇りだったのだ。それなのに、私ずきたら。なんお蚀葉を矩母ぞぶ぀けおしたったのか。今床矩母に䌚った時は、もっず優しく声をかけおあげよう。倫  矩母からすれば息子の前で恥をかかせおもいけない。

     車窓から、倖を眺める。からりず爜快な氎色をした空だった。

    【完】


     
     
    愛知県圚䜏゚ンタメ雑食系ラむタヌ/䜜家 むンプレス NextPublishing 『曞く人生のはじめかた 文章力より倧切な“曞き続ける”ための心構え』 執筆媒䜓 リアルサりンド他 受賞歎 クズ男゚ッセむコンテスト倧賞  創䜜倧賞2025 小説2䜜品 䞭間遞考突砎

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