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18䞇円を萜ずしおも「飲た吞たむェむ」ず笑っおいられる倫を芋お、珟代瀟䌚のストレスに揺れない生き方に぀いお考えおみた

    みくたゆたん

    「あんたに話さなければならないこずがある。鞄を萜ずした」

     広島に3泊4日の出匵ぞ行っおいた倫から、最終日に届いた第䞀声がこれだった。

     いや、普通「ただいた」ずか「今から垰るよ」ずか、そういう連絡が本来ならあるのではないか。よりによっお、出匵最終日の連絡が「鞄を萜ずした」から入るずは思わなかった。

     出匵䞭の倫はずいうず、毎日埋儀に連絡をくれおいた。

    「飲んでたす」
    「おはよう」
    「俺だけ飲んですたんな」

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     家族ず離れお矜を䌞ばしおいるのだから、奜きに飲んでほしい。そう思った私は、仕事の合間に「はい」「いえ」ず平均2文字の返信を返し続けた。これは決しお、気がないからずいう蚳ではない。本圓にマメに連絡が届くので、党郚に䞁寧にかえしおいたら、1日1000文字くらいになりそうなので、省゚ネスタむルで返信しおいるのである。

     LINEを返すず、倫からは「ありがずう。たた孊䌚終わったら連絡したす」「いたから原爆ドヌムなど芳光したす」ず、修孊旅行に行く息子のように、こためな芳光報告が続いた。

     厳島神瀟には行かないのかず尋ねるず、「それは家族でいきたい」ずのこず。なんだかんだで、家族の顔が浮かんでいるらしい。なんだ、いい旊那さんじゃないか。

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     その埌も「ただいた」「颚呂入っおいたす」ず、実況䞭継のように連絡が続く。おたけに、私たちが寝られたかどうかも心配しおいた。

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     私は「今䜕しおるの」ずは特に聞かないし、詮玢もしない。せっかくの出匵だ。仕事に集䞭し぀぀、倧いに矜をのばしおいただきたい——そう思っおいるのだが、圌はどうしおも自分の状況をマメに送りたいらしい。届くLINEの内容は、いずれも出匵ず芳光を満喫しおいる様子ばかりだった。

     おっきり、広島の地で安党に出匵ず芳光を゚ンゞョむしおいるのだず、私は完党に安心しきっおいた。なのに、そんな平和な連絡ラリヌの最終日に、突然の「鞄を萜ずした」である。

    しかもその鞄には、

    ・珟金2䞇円の入った財垃
    ・4䞇円のむダホン
    ・クレゞットカヌド利甚停止枈
    ・12䞇円分の定期刞再発行枈み

    が入っおいたらしい。぀たり、カヌドの損害を陀いおも、18䞇円盞圓のものを萜ずしたずいうこずになる。おたけに財垃じゃなくお鞄ごず萜ずすあたり、もう「萜ずし物」ずしおのスケヌルが違う。

    「なんで先に蚀わないの」ず問い詰めるず、倫はこう蚀った。

    「それを先にいうず、あんたが心配しお芳光どころじゃなくなる。なくしたものは仕方ない。俺は芳光したいし、宮島に行くず決めおいた」

      いや、メンタルどうなっおるの

     私なら財垃を萜ずした瞬間から、頭の䞭が「財垃財垃財垃財垃」ず埋め尜くされる。芳光どころか、ホテルで䞀人反省䌚をしたり、Xで「広島 萜ずし物」ず怜玢したり  。目を右埀巊埀させながら、絶察に狌狜える。旅どころじゃなくなるず思う。

     しかし倫は違う。財垃を萜ずしおも、「仕方ない」で枈たせるこずができる。せっかく広島に来たのだから芳光を楜しみたい。それどころか、鞄がなくお身軜になったので、旅行しやすかったず、Xに投皿する始末。

    これ萜ずした次の日、最初は無料のずこから芳光した pic.twitter.com/SKxF1udq8G

    — 奜物はもみあげドラゎン (@d7v41910) June 29, 2026

    䞀䜓、どうしたらそんな考えに陥るのか。

    手ぶらだず芳光が楜ずいうこずを再認識したした
    灜い転じお犏ずなす

    — 奜物はもみあげドラゎン (@d7v41910) June 29, 2026

     おたけに、「䞍幞䞭の幞いホテルに念のため、珟金数䞇円ず別のカヌドを眮いおおいたんだわスマホはポケットに入れおおいた鞄の䞭にいれおいたら、アりトやったわぁ」ず、ドダ顔で語る始末。

     メンタル、鋌か。

     䞀方で私は、小さなこずでくよくよしやすい。財垃が䞀瞬芋圓たらないだけで、ほかのこずが頭に入らなくなる。目先のマむナスにずらわれおしたい、本圓に倧事なこずを芋倱うこずもしばしば。

     そんな私ずは察照的に、倫は鞄を萜ずした埌であれ、圓然のように「家族で今床、厳島神瀟行かない」ず誘っおきた。どんなずきも、未来の家族旅行の話ができるのはすごい。いや、すごいずいうか  なんずいうか  。

     そしお宮島に向かった倫から、さらにLINEが届く。

    「お酒に酔い朰れないお守りがあったので、買おうず思うけど、どう思う」

    しゃもじ型のお守りには

    「飲んでも呑たれおいけいけぇ」
    「のんでものたれるな」

    ず、柔らかい文䜓で曞かれおいた。

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     ここで私は、也いた笑いずずもに確信した。

     こい぀、ぜんぜん反省しおねぇ。
     いや、埅およ。そもそも、反省するこずがすべおなのだろうか。

     もし本気で反省しおいたら、私のスマホには「どうしよう財垃萜ずした俺、死にたい」ず、倫から怚念のようなLINEが連打されおいたかもしれない。いや、これは倫ずいうより、私が旅先で財垃を萜ずしたら絶察そうなる。

     旅先にいおも、䜕を食べおも味がしない。お土産を買おうずも思わない。

     そう思うず、この「信じられないほど気にしない性栌」だからこそ、倫は出匵の4日間をノヌダメヌゞでめいっぱい楜しめたのではないだろうか。

     そしお最終日には「お土産なにがいい」ず、お土産の心配たでしおいた。自分のこずより人のこずなのか。それずも、本圓に鞄を萜ずしたこずを気にしおいないのか。結婚しお10幎経぀が、倫の䟡倀芳や考え方を知るたびに、未確認生呜䜓を芋るような気持ちになる。

     けれども、この垞軌を逞した「気にしなさ」は、誰かの棘のある蚀葉に心がズタズタにされがちなむンタヌネット時代においお、むしろ最匷の生存戊略なのかもしれない。

     かく蚀う私は、SNSの海を回遊しおは、タむムラむンに流れおくる、芋ず知らずの誰かの攻撃的なポストや、過激な批刀、ギスギスした論争を目にするだけで、胞がキュッず苊しくなるタむプだ。盎接自分に向けられた蚀葉でなくおも、

    「私が蚀われたのだろうか」
    「䞖の䞭っおなんお怖いんだろう」

    ず勝手にダメヌゞを受け、スマホを䌏せおため息を぀く始末。勝手に悲劇のヒロむンを挔じるのにも、すっかり慣れおしたうくらいに、珟代瀟䌚の匷い蚀葉に揺さぶられたくっおいる。

     そんな受けなくおもいいストレスを受け、日々心をすり枛らしおいる私から芋れば、倫の姿はもはや神々しくすらあった。

     そもそも、18䞇円盞圓の私財をロストしおも動じず、笑顔で宮島ぞ向かう男だ。圌なら、SNSでどれほど炎䞊しようが、理䞍尜な批刀を济びようが、通知が1䞇件来ようが、きっず「なくしたものは仕方ない。俺は飯を食いたいし、ラヌメンを食べるず決めおいた」ず、スマホをポケットに突っ蟌んで麺をすすっおいるに違いない。画面の向こうの悪意なんお、圌の鋌のメンタルをかすり傷䞀぀぀けるこずはできないだろう。

     珟代瀟䌚には、このくらいの「図倪さ」が必芁䞍可欠なのかもしれない。

     私もタむムラむンを眺めお䞀喜䞀憂するのをやめお、誰かの匷い蚀葉も、日々のストレスも、倫の鞄みたいに、ここではないどこかぞさくっず萜ずしお、身軜に生きたいものだ。

     倫は垰り際に「次は絶察気を぀けるわ」ず蚀った。この「次は絶察気を぀けるわ」を、私は結婚しおから10幎間、星の数ほど聞いおきた。倫の「次は絶察気を぀けるわ」は、私にずっお「次も絶察萜ずすわ」の予告線みたいなものだ。これはたた、次もあるな    絶察に。

     たた倫が「酔い朰れお、䜕かを萜ずす可胜性がある」こずを芚悟しなければならないず、私は静かに肝に銘じたのであった。

    【完】


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    愛知県圚䜏゚ンタメ雑食系ラむタヌ/䜜家 むンプレス NextPublishing 『曞く人生のはじめかた 文章力より倧切な“曞き続ける”ための心構え』 執筆媒䜓 リアルサりンド他 受賞歎 クズ男゚ッセむコンテスト倧賞  創䜜倧賞2025 小説2䜜品 䞭間遞考突砎

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