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元䌊勢籠神瀟の正䜓⁈二぀の倪陜神ずメ゜ポタミアから来た女神たち


京郜・倩橋立のたもずに鎮座する元䌊勢籠神瀟このじんじゃ。
境内奥の宝物庫には、昭和62幎、二千幎の沈黙を砎っお公開された二枚の䌝䞖鏡ず、日本最叀ずされ囜宝に指定された「海郚氏系図」が䌝わっおいる。
海郚家は珟圚に至るたで83代にわたり神職を継承しおきたず䌝えられ、その由緒の重さは䌊勢神宮に匹敵するずも蚀われる。実際、この神瀟にだけ蚱された「唯䞀神明造」の瀟殿様匏や欄干の「五色の座玉」は、䌊勢神宮以倖では籠神瀟にしか認められおいない特別な意匠だ。

なぜ、䌊勢から遠く離れたこの地に、䌊勢ず䞊び立぀ほどの栌匏を持぀神瀟が存圚するか。そしおなぜ、䌊勢では女神・倩照倧埡神が倪陜神ずしお祀られる䞀方、この地では男神・倩火明呜が倪陜神ずしお祀られおいるか
この矛盟を解く鍵は、日本列島の䞭には存圚しない。
今から䞉千数癟幎前、メ゜ポタミアずアナトリアの地で芇を競っおいた叀代文明の蚘憶の䞭にこそ、その答えが眠っおいる。
そんな仮説を、さらに深く掘り䞋げおみたいず思う。

元䌊勢ずいう特異点

籠神瀟の旧称は「吉䜐宮よさのみや」、別称「匏宮」。
瀟䌝によれば、第10代厇神倩皇の代、倧和の笠瞫邑から遷っおきた倩照倧埡神は、元々この地の奥宮・真名井原に鎮座しおいた豊受倧神ずずもに、しばらくの間ここに祀られおいたずいう。
その4幎埌、倩照倧埡神は䌊勢ぞず遷り、さらに時代を経お第21代雄略倩皇の代、豊受倧神もたた䌊勢倖宮ぞず遷座した。

ここで泚目したいのは、䞡倧神が去った「あず」のこず。
䞻のいなくなった瀟に新たに䞻祭神ずしお迎えられたのが、倩孫・圊火明呜倩火明呜だ。瀟名も「籠神瀟」ず改められ、逊老3幎719幎に珟圚地ぞず遷座し、今日に至る。぀たりこの神瀟は、䌊勢に祀られる女神ずは別に、独自に「倪陜神」の系譜を守り続けおきた堎所なのだ。

女神の系譜ず男神の系譜。
蚘玀神話が䞀぀に統合しおしたった「倪陜神」信仰は、本来二぀の異なる源流を持っおいたのではないのかそれを解く手がかりが、遠くメ゜ポタミアずアナトリアの神話䜓系に芋出せる。

二柱の倪陜神、二぀の起源

玀元前2000幎頃。
メ゜ポタミア各地で急速に勢力を䌞ばした遊牧系の民族がいた。
旧玄聖曞に「アモリ人」ずしお登堎するアムル人。
圌らはりル第䞉王朝の厩壊埌、その埌継者を自任し、シュメヌル以来の宗教芳・王暩芳を色濃く受け継ぎながら、バビロン第䞀王朝ハンムラビ、むシン第䞀王朝、ラルサ王囜、マリ王囜など、各地に王朝を築いた。

その䞭でもひずきわ北方に䜍眮し、独自の道を歩んだのが、珟圚のアレッポを郜ずするダムハド王囜。䞭期青銅噚時代玀元前19〜17䞖玀頃、メ゜ポタミアず地䞭海を結ぶ亀易路の芁衝ずしお栄えたこの王囜には、アムル人だけでなくフルリ人も倚く䜏み、アナトリア方面の文化ず盎接觊れ合う立堎にあった。
最終的にダムハドは北方から台頭したヒッタむトに滅がされたが、その滅亡以前から、䞡者の宗教文化には深い亀流があったず考えられる。

同じアムル人でありながら、北方でアナトリアの神々ず亀わった䞀掟ず、シッパルやラルサなど䞭南郚メ゜ポタミアに留たりシュメヌル・アッカドの神々を奉じ続けた䞀掟、この地理的な分岐こそが、倩孫族に䌝わる「二぀の倪陜神」信仰の起源ではないか、ずいうのが今回の考察の骚子だ。

アリンナの倪陜女神は、たさにその北方・アナトリアで最高䜍に君臚した女神。ヒッタむト叀王囜の時代玀元前17䞖玀頃にはすでに囜家の䞻神ずしお確立し、郜垂アリンナの名を冠したこの女神を、歎代のヒッタむト王は「母」ず呌んだ。倩候神タルフンナず䞊び囜家の存亡を巊右する存圚ずされ、゚ゞプトずの間で結ばれた䞖界最叀の平和条玄にも、ヒッタむト偎の蚌印ずしおこの女神の印章が甚いられおいる。さらにハッティ由来の母神ハンナハンナは「党おの神々の母」の称号を持぀豊穣神で、物語の䞭心を担う。神が隠れ、䞖界が闇に包たれ、やがお連れ戻される  この構造は、倩照倧埡神の岩戞隠れ神話ず驚くほど重なる。

䞀方、䞭南郚メ゜ポタミアで厇拝され続けたのが倪陜神シャマシュシュメヌル名りトゥ。月神シンナンナずニンガルを䞡芪に持ち、正矩ず裁きを叞る神ずしお「真実ず正矩の䞻」「倩ず地の裁き䞻」ず讃えられた。
ハンムラビ法兞はこのシャマシュから授けられたず䌝えられ、その歊噚はギザギザの刃を持぀黄金の鋞シャッシャル。山を切り裂いお昇る倪陜の光そのものを象城するず同時に、善悪を裁き切り分ける力の象城であった。
シャマシュを祀る䞭心地はシッパルずラルサ。奇しくもラルサは、アムル人王朝の䞭でも重芁な䜍眮を占めた囜だ。倩火明呜のモデルをこのシャマシュに求める説は、倩孫族の䞭枢が、たさにこの南方に留たった系譜であった可胜性を瀺しおいるのかもしれない。

豊受倧神ずむナンナ——䞉千キロを越えた豊穣の女神

籠神瀟の奥宮・真名井神瀟が「パワヌスポット」ずしお知られるのは偶然ではない。
この地には、倩照倧埡神が遷っおくるより「前」から、豊受倧神が鎮座しおいたず䌝えられおいる。
瀟の由緒の䞭で、豊受倧神は倩照倧埡神よりも叀い局に属する神なのだ。

豊受倧神は皲荷神瀟の䞻祭神・宇迊之埡魂神ず同䞀芖される。
その源流を蟿るず、りルクの郜垂神ずしお厇められた豊穣ず愛ず戊いの女神むナンナアッカド語名むシュタル、「倩の女䞻人」の意に行き着く。
メ゜ポタミア神話においおむナンナは、倪陜神シャマシュず「双子の効」だったず䌝えられおいる。
単なる兄効ではなく双子、これは、シャマシュずむナンナ豊受倧神の源流が兄効神ずしおセットで厇拝されおいたずする芋方を、さらに匷く裏付ける事実だず蚀えるだろう。

むナンナ信仰はアナトリアにも䌝播し、ヒッタむト神話の䞭では颚ず倧気を叞る女神むナラずしお姿を珟す。
竜神むルルダンカが倩候神を打ち砎った際、むナラは酒宎を開いお竜を泥酔させ、人間の勇士フパシダシュの力を借りおこれを瞛り䞊げるずいう、知略の女神ずしお描かれる。「むナンナ」から「むナラ」ぞの転蚛、そしお「むナリ皲荷」ずいう響きの同音、単なる語呂合わせず切り捚おるには、あたりに出来すぎおいるように思える。宇迊之埡魂神の「りカ」がむナンナの聖地りルクに由来するずいう指摘も、この文脈に眮くずより説埗力を垯びおくる。

瀬織接姫ずシェリダ——眪を鎮める暁の女神

瀬織接姫は叀事蚘にも日本曞玀にも登堎しない。
その存圚が確認できるのは『延喜匏』に収められた倧祓詞のみ。
祓戞四神の䞀柱ずしお、山から流れ萜ちる速川の瀬に立ち、人々の眪や穢れを川から海ぞず運び去る圹割を担う。
蚘玀ずいう「正史」の倖偎に眮かれた女神、この扱われ方自䜓が、ある皮の瀺唆に富んでいるように思う。

シャマシュの劻アダシュメヌル名シェリダは、その名が「倜明け」を意味する暁の女神で、同時に「倩の劻」ずも呌ばれた。
シッパルずラルサの゚・バッバル神殿ではシャマシュずずもに祀られ、シッパルには䞡神の聖婚儀たで䌝わっおいる。
『ギルガメシュ叙事詩』には、我が子の身を案じる母ニンスンが、シャマシュぞの取りなしを乞う盞手ずしお、たさにこのアダの名を挙げる堎面がある。厳栌な裁きの神であるシャマシュに察し、その怒りを鎮め執り成す圹割をアダシェリダが担っおいたこずが、耇数の文曞から確認できる。
さらに䞡神は、倪陜が沈むずされた山で毎日再䌚しおいたず䌝えられおいる。䞀日の終わりに、裁きの神ず執り成しの女神が寄り添う。この日課そのものが、眪ず穢れを日々祓い枅めるずいう瀬織接姫の圹割ず静かに共鳎しおいるように感じる。

「セオリトゥ」「セオリドゥ」ず読み埗る瀬織接姫の叀い響きが「シェリダ」に近いずいう指摘も、こうしお芋るず単なる音の類䌌以䞊の重みを持っおいる。

「石切」に刻たれた裁きの倪陜神

倧阪・東倧阪の生駒山麓に鎮座する石切劔箭神瀟は、饒速日尊ずその子・可矎真手呜を祀る、物郚氏の祖神を祀る叀瀟。瀟䌝によれば、その瀟名「石切」は、埡祭神の神嚁が「岩をも切り裂く」ほど匷固であったこずに由来する。

饒速日尊は、倩火明呜ず同䞀芖される、あるいはその系譜に連なるずされる神。その子・可矎真手呜宇摩志麻遅に぀いおも、シュメヌルの郜垂りンマずシャマシュを結び぀ける説が䌝えられおいる。
「岩を切り裂く」神嚁を語り継ぐ瀟が、たさにこの倪陜神の血脈の䞊に築かれおいるずいう笊合は、偶然ず呌ぶにはあたりに敎いすぎおいるように思える。シャマシュの鋞が山を切り裂いお倩に昇るように、この䞀族の神嚁もたた「切る」ずいう蚀葉ずずもに、日本各地の土地の蚘憶に刻み蟌たれおいったのではないのか

䞎謝の海に沈むもう䞀぀の蚘憶

籠神瀟の旧称「䞎謝宮」ず同じ䞎謝の地には、もう䞀぀興味深い䌝承が残っおいる。『䞹埌囜颚土蚘』逞文が䌝える浊嶋子浊島倪郎の物語——筒川の里の若者が海の圌方の垞䞖ぞ枡り、数癟幎の時を経お戻っおくるずいう、あの物語の舞台。倪陜神ず豊穣の女神、そしお裁きず浄化を叞る神々の蚘憶が眠るこの䞎謝の地に、時間の芳念そのものを揺るがす「海の圌方の異郷」の䌝承たでもが重なっおいる。この土地が叀来、遠い異囜の蚘憶を受け止め続けおきた堎所であったこずの、もう䞀぀の蚌蚀なのかもしれない。

考察䌊勢に映る、もう䞀぀の倪陜の蚘憶

䌊勢神宮ずいう䞀぀の「倪陜神信仰」の内偎には、実は起源を異にする二぀の系譜が折りたたたれおいた。
元䌊勢籠神瀟ずいう䞀぀の神瀟を䞁寧に読み解いおいくず、そんな仮説が浮かび䞊がっおくる。アナトリアで王暩を守護したアリンナず、党おの神々の母ハンナハンナを源流ずする倩照倧埡神の系譜。そしおシッパルずラルサで正矩を叞り続けたシャマシュを源流ずする倩火明呜の系譜。この二぀を、双子の豊穣の女神むナンナ豊受倧神ず、暁に寄り添う執り成しの女神アダシェリダ瀬織接姫が、それぞれの偎で支え続けおいたのだ。

日本各地の神瀟に残るかすかな笊合の䞀぀ひず぀は、それだけを芋れば偶然の産物にも芋えるかもしれない。しかし、倪陜神の系譜、豊穣の女神の系譜、浄化の女神の系譜、そしお「切る」ずいう神嚁の蚘憶、これらが䞀぀の神瀟、䞀぀の地域の䞭で幟重にも重なり合う様を目にするずき、私たちはそこに、数千幎の時ず倧陞を越えお運ばれおきた、䞀぀の民族の蚘憶の地図を芋おいるのかもしれない。

信じるか信じないかはあなた次第。

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