
泥だらけの太陽:21 静かな夜に
シオリに泣きながら電話をした。
ソフトボール以外で泣いている私は初めてだったらしく、シオリは少し驚いた様子だった。
でも、
「うん。」
「うん。」
と、何も遮らず静かに話を聞いてくれた。
全部話し終えると、
シオリは大きくため息をついた。
「……もうさ、二人とも不器用すぎ。」
「ケーちゃんも真面目すぎだろ。」
「うん……。」
「でも、それがケーちゃんって感じ。」
少しだけ声のトーンが優しくなる。
「ミキカのこと、大切なのは間違いないと思うよ。でも、今はキャプテンとして野球のことしか考えられないんだよ。」
私は何も言えなかった。
「もうさ、あいつ0か100しかないの?」
思わず吹き出す。
「ほんとそれ。」
「しかも『誰とも付き合わないから安心して』って何!?」
シオリは一人で怒り始めた。
「ずるくない!?そんなこと言われたら、ミキカはどうしたらいいの?「待ってて」ってこと?
いや、それならちゃんと言えよ!って感じ!」
私は泣きながら笑ってしまった。
「もう……シオリ……。」
「ごめんごめん。」
そう言いながらも、シオリは少しだけ真面目な声になった。
「ケイタのことはさ、今は正直難しいと思う。」
「……うん。」
「だから今は、流れに身を任せてもいいんじゃない?」
その言葉を、私は黙って聞いていた。
「ショウのことも、ちゃんと考えてみてもいいと思う。」
「……。」
「ケイタがいるからって、自分の気持ちに蓋しなくていいよ。」
少し間があいて、
「もちろん、すぐには無理だと思うけどね。」
その一言が、胸にすっと入ってきた。
私はただ、
「ありがとう。」
そう言うことしかできなかった。
電話を切ったあとも、しばらく携帯を握りしめたままだった。
シオリの言葉が、何度も頭の中をぐるぐる回る。
「流れに身を任せてもいいんじゃない?」
「ショウのことも考えてみてもいいと思う。」
分かってる。
シオリは私のことを思って言ってくれた。
でも、心は簡単にはついていかなかった。
ベッドに横になり、天井を見つめる。
ケイタと初めて会った球場。
電話した日。
夜の公園でキャッチボールした日。
バレンタインにチョコを渡した日。
思い出すたびに、胸が締めつけられた。
考えても仕方がない。
冬は、強くなるための時間。
春に笑うための時間。
ケイタが野球にすべてを懸けるように、私もソフトボールにすべてを懸けよう。
仲間と頑張っていく。そう決めた夜だった。