
御神木と、作務衣と、6月の誕生日
境内に足を踏み入れると、何度訪れても肌がぞわっと粟立つ。
伊勢神宮には、そんな抗えない神聖な空気がある。
2年に1回、猛烈にあの場所に帰りたくなるのは、魂のデトックスが必要なサインなのかもしれない。
今までに3回、どれも宿泊して2日にわたってじっくり参拝した。
御神木がとても大きくて、好きな木を見つけては立ち止まってハグする。
包まれているような安心感とともに、ずんずんどこまでも歩く。
あぁ…今年もじわじわと行きたい欲が湧いてきた。
それに、一昨年友人と宿泊した旅館が最高だった。
心遣いが、すみずみまで行き届いていた。
部屋には露天風呂。
夕食は、伊勢の恵みを惜しみなく。
お造りや立ちのぼる湯気までご馳走のようなコース料理。
それを浴衣ではなく、気取らない「作務衣」でリラックスして味わう時間が、何よりの贅沢だった。
ただ…これだけ最高なので、お値段もなかなかであった。
友人とは「一年に一回の旅行だしね!」
「私たち、もうちゃんと働いてるおとなだしね!」と鼓舞しあって予約したのだ。
おいそれとポチッとはできない価格だが、
伊勢神宮に行くならまたあの宿に泊まりたい。
……と、そこへひょこっと背後からでてきたワル子が囁いてきた。
(相方が一度も伊勢神宮行ったことなくて、行きたがってたじゃん)
(あなた、6月に誕生日じゃない)
(リクエストしちゃいなよ、自分の誕生日プレゼントを)
いや、誕生日プレゼントのリクエストに伊勢神宮に行きたい!まではいいとして、宿泊先やプランまでリクエストするのは、、、親しき仲にもなんとかっていうし、ちょっと厚かましくないか?
(でも伊勢神宮とあの旅館に泊まれるチャンスだよ?!今予約しないと、5月はもう予約枠なかったじゃん)
…… 背後のワル子が勝った。
その夜、お風呂上がりにうろうろしていた相方を捕まえて私は言った。
「6月の私の誕生日なんだけど、」
もはや開き直り、厚かましさ全開で私は事の終始を説明した。
金額を見た時わずかにぎょっとした相方の顔を私は見逃さなかった。
「…これだと物のプレゼントはあ、げられ……」
「物はいらない」
「え?物はいいの?旅行で?
なんか俺も行きたいし誕生日にあやかっちゃってるみたいな感じがしちゃ…」
「全然、いい!」
どこまでも思慮深い相方。
というか、これに加えて物までくれようとしていたのか。
思いやり全開だ。
無事?に宿を予約してくれた相方に、深々とお礼を言う。
今年の誕生日は「物」ではなく「時間」をいただくこととなった。
なったからには相方にとっても、記憶に残る思い出になるよう、私も精一杯おもてなしをしよう。
相方がぽつりと呟いた。
「晴れるといいなぁ。
雨だったら木に抱きつけないから。」
思わぬところで、木、抱きつき仲間も見つけた。
抱き心地のいい木を案内しようと思う。