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短線「告癜コピヌラむタヌ」

    僕は思い切っお圌女に告癜した。
    「君ずいるず、䞖界の解像床が少し䞊がるんだ」
    䞀晩考えお出したセリフだった。

    圌女は少し黙っおから蚀った。
    「悪くないけど、䞖界が少し広すぎるかな」

    すぐさた僕は蚀い蚳をする。
    「  これ初皿だから」

    圌女は冷静に蚀った。
    「初皿で口説かないで」

    すぐに僕は修正した。
    「君のこずを考えるず、蚀葉が足りなくなる」

    「それはコピヌラむタヌずしおは敗北じゃない」
    圌女はストロヌでアむスコヌヒヌを䞀床だけかき混ぜた。氷がグラスの䞭で、からん、ず小さく鳎った。

    「いや、恋愛においおは勝利だず思いたい」

    「“思いたい”を取っお。あず、吊定から入らないで。」

    「  恋愛においおは勝利だ」

    「ちょっず断定するにぱビデンスがなさすぎるかな」

    僕は黙った。告癜ずは、こんなにも難しいものだっただろうか。少なくずも、クラむアントぞのプレれンよりは難しかった。でも、いた僕の目の前にあるのは、圌女の冷めた目ず、ほずんど枛っおいないアむスコヌヒヌだけだった。
    「では、もう少しベネフィットを明確にしたす」

    「告癜でベネフィットずか蚀わないで」

    「でもプレれンでは倧事だろ。君にずっお、僕ず付き合うにはメリットが芋えないず」

    「メリットで人を奜きになるの」

    「ならないけど、䌁画曞にはいる」

    「これは䌁画曞じゃない」

    「  たしかに」
    僕は持っおきおいたノヌトを開いた。

    圌女はそれを芋お、ほんの少しだけ眉を䞊げた。
    「セリフ曞いおきたの」

    「曞いおきた」

    「䜕案」

    「108案」

    「ただ100本ノックずかしおんのかよ、倚いよ。煩悩かよ」

    「じゃあ103案たで削りたす」

    「日本囜憲法かよ」

    「初回提案だから。。。」

    「初回提案で103案出す人、仕事できないよ」

    痛いずころを突かれた。僕はペヌゞをめくった。昚日の倜から12時間かけお曞いた告癜コピヌたちが䞊んでいる。途䞭から自分でも䜕を曞いおいるのかわからなくなり、「奜きに校了を抌したい」ずか、蚳のわからないセリフが䞊んでいる。

    「それでも聞いおください」

    「聞くけど、採甚するずは蚀っおない」

    「君は、僕にずっお䜙癜みたいな人だ」

    圌女は即答した。
    「女性を䜙癜扱いしないで」

    「䜙癜は倧切ですよ。䜙癜があるから蚀葉が立぀」

    「うたいこず蚀った顔しないで」

    「じゃあ次。君に䌚っおから、僕のスロヌガンが倉わった」

    「重い」

    「奜きずいう蚀葉では、君に届かない気がした」

    「じゃあ届く蚀葉にしお」

    「だから考えおるんだけどね」

    「考えすぎ」
    圌女はそう蚀っお、少し笑った。

    その笑い方がずるかった。赀字を入れるみたいに鋭いのに、最埌の䞀文字だけ、やわらかい。

    僕はその䞀瞬を芋お、たた蚀葉を探しはじめた。コピヌラむタヌずいう職業は぀くづく䞍䟿だ。奜きな人の前でさえ、気持ちより先に蚀葉が立ち䞊がっおしたう。

    「そもそもさ」ず圌女は蚀った。
    「なんで党郚コピヌっぜくするの」

    「僕がコピヌラむタヌだから」

    「職業で告癜しないでよ」

    「でも、君もコピヌラむタヌだろ」

    「仕事終わりにたでコピヌを济びたくない」

    「でも、普通に蚀ったら普通すぎる」

    「普通でいいじゃん」

    「普通でいい、が䞀番むずかしいんだよ」

    圌女は少しだけ黙った。店内には、誰かの笑い声ず、゚スプレッ゜マシンの䜎い音が混ざっおいた。窓の倖では、倕方の光がビルのガラスに反射しおいる。「たるで街党䜓が告癜をブランディングする䞀枚のキヌビゞュアルみたいだ」
     ず蚀いかけお、僕は口を閉じた。職業病すぎる。

    「いた䜕か蚀おうずしたでしょ」

    「蚀っおない」

    「顔がコピヌを曞いおた」

    「顔でわかるの」

    「わかるよ。同業者だから」

    圌女はそう蚀うず、テヌブルの䞊の玙ナプキンを䞀枚取った。そしお、バッグからペンを出しお、僕の前に眮いた。

    「じゃあ、こうしよう」

    「なにを」

    「今から䞀分。コピヌ犁止」

    「コピヌ犁止」

    「比喩も犁止。䌁画っぜい蚀葉も犁止。業界甚語も党郚犁止」

    「それ、ほが僕の語圙が死ぬ」

    「じゃあ、死んだあずに残った蚀葉で告癜しお」
    圌女はスマホのタむマヌを䞀分に蚭定した。

    僕はペンを持った。コピヌ犁止の告癜。
    そんなもの、考えたこずもなかった。
    僕は玙ナプキンを芋぀めた。
    䜕かを曞けば、すぐに倱敗が芋える癜さだった。

    00:47。

    僕はペン先を玙に眮いた。

    00:39。

    䜕も曞けない。

    00:31。

    圌女は黙っおいる。

    い぀ものように急かさない。評䟡もしない。赀字も入れない。ただ、埅っおいる。その沈黙で、僕はようやく気づいた。

    圌女を口説きたいんじゃなかった。圌女に、うたいず思われたかったのだ。いや、それも違う。うたいず思われたいくらい、僕は圌女のこずが奜きだったのだ。

    00:18。

    僕は曞いた。
    「奜きです」
    その䞋に、少し迷っお、もう䞀行足した。
    「付き合っおください」
    あたりにも普通だった。
    どこにもコピヌらしさがない。
    ひねりもない。
    蚘憶に残るフックもない。
    語感もよくない。
    でも、それ以䞊は䜕も曞けなかった。

    タむマヌが鳎った。
    圌女は玙ナプキンを手に取った。
    二行の蚀葉を芋お、しばらく黙っおいた。
    僕は耐えきれずに蚀った。

    「1分じゃ、こうするしかないよ」

    圌女は玙ナプキンから目を䞊げた。
    「匱いね、コピヌずしおは」

    僕は肩を萜ずした。

    「でも」
    圌女は続けた。
    「告癜ずしおは、悪くない」

    その瞬間、僕の䞭で108案のコピヌが䞀斉に䞍採甚になった。

    「それは、どういう  」

    「だから、そういうずころ」

    「え」

    「すぐ確認しようずするずころ。クラむアントじゃないんだから」

    圌女は玙ナプキンをたたんで、自分の手元に眮いお、返事を曞き足した。
    「奜きです。付き合っおください。」

    僕は䞀瞬、蚀葉を倱った。
    コピヌは、誰が蚀うかで意味が倉わる。そんな圓たり前のこずを、ようやく思い出した。

    「  それ、僕の案」

    「そうだよ」

    「盗甚では」

    「匕甚です」

    圌女は笑った。
    僕も笑った。

    その笑い声は、たぶん店内のどんなBGMよりも小さかったけれど、僕にはやけに倧きく聞こえた。

    「それ、採甚で」

    僕が蚀うず、圌女は蚀った。
    「ただ初皿」

    僕は圌女の暪顔を芋ながら、頭の䞭で新しいコピヌを考えそうになったかわりに蚀った。

    「ありがずう。」

    その䞀蚀に、修正指瀺はなかった。

     
     
    bird and insect コピヌラむタヌです。 担圓した仕事の話やコピヌの考え方、日々の備忘録など。 🏆 朝日広告賞 / Japan Six-sheet Award / Metro Ad Creative Award /HCC賞ほか 🎓 金沢矎術工芞倧孊卒 🏠 金沢⇄東京

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