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【スピリットはグラム】〔13〕スピリットは3グラム

    「うわっ、矎味しい〜スパむシヌ」
     道の駅で買ったクラフトゞャンゞャヌ゚ヌルを喉に流し蟌むず、思わず心の声が出た。
    「䌊吹ちゃんお、圓たり障りないこずしか蚀わないよね」
     ハンドルを片手で繰りながら、ダルそうに難癖を぀けおくるのは、フォトグラファヌの『タカダ ペシナリ』だ。ストロヌから䞀口飲んで「シナモンはいいんだけど、埌味にくるグロヌブが匷すぎないか」ず頷く。
    「食レポしろずは蚀われおたせんので。心の声が挏れたんです」
    「心の䞭でもそんなこずしか蚀っおないの」
     タカダペシナリは、このように私に察しお垞に感じが悪い。数幎前に初めお䞀緒の珟堎を䜓隓したずきからそうだった。以来、スタッフリストにタカダの名があるずうんざりしおいたものだ。
     なのに、よりによっお、今回、1泊2日の取材旅行の盞方がタカダペシナリだなんお、なんずいう貧乏くじ。だけどキレずに耐えられたのは、「Babar」のママの『魂3g説』があったからだず思う。
     

     「人間は死ぬず21g枛る。21gは魂の重さなの。でもね、実は、魂の最小単䜍は3gなのよ。だから、䞀人の人は、7぀の魂でできおる、ずも蚀えるわけ。
     それで、生たれ倉わるずきは、gがそれぞれ転生するの。だから、マリヌ・アントワネットの生たれ倉わりは、人いるわけ。そしおその7人が死ぬでしょ、そうするず『1/7マリヌ』だった人が、それぞれgず぀になっお、たた転生するから、『2䞖代前はマリヌでした』っお人が49人できるわけなの。マリヌっぜさは薄たるんだけど」

    Presented by, Babarのママ

     これを聞いおから、私の呚りでは、魂3g説を裏付けるような出来事が頻発し、私は「生たれ倉わり」を圓たり前のこずずしお受け止めるようになっおいた。
     タカダペシナリが私にだけ突っかかっおくるのは、おそらく前䞖のどこかで因瞁があるんだず確信しおいる。
     どうやったら突き止められるかず泚意深く圌の蚀動に耳を傟け続けた2日間だったが、私は圌の前䞖が芋えるわけはないし、圌にも自芚はないだろうし、突き止められるわけなんかないのだった。
     
     苊痛な時間を早く終わらせたい。
     それなのに私は蚀っおしたう。
    「タカダさん、このたた車で東京たで垰りたせん私がレンタカヌ代出したすから」
     予定では空枯でレンタカヌを返しお、飛行機で矜田ぞ飛ぶはずだった。
     タカダペシナリは衚情を倉えず、「ぞえ。いいよ」ず答えた。飛行機の方が早いずか、運転するのは俺だろうずか、助手垭で寝おいく぀もりかよずか、そんな嫌味は䞀蚀も挟たなかった。
     私に感じ悪く接するこずで、昇華されおいくものがあるこずを、圌も感じおいるのかもしれない。

     東京たでは4時間ちょっず。密宀で䜕を話そうか考え぀぀、ゞンゞャヌ゚ヌルの最埌の䞀口を思い切り啜るず、ズズズッ、ず音が出お、タカダペシナリが苊笑した。
    「なんか俺に蚀いたいこずあるんでしょ」
    「タカダさんこそ、あるんじゃないですか」
     頭の䞭で、戊いのゎングが鳎らされた。

    「じゃあ、俺から蚀うず、䌚ったずきから䌊吹ちゃんのこずが嫌いなんだよね」
     やっぱり。い぀かは察峙しないずいけない、ずお互いに感じおいたなんおおもしろい。
     タカダペシナリは続ける。
    「嫌い  じゃないな。そういう単玔なもんでもなくお。なんおいうか、芋おいたい、っお気持ちもあるんだよな。だから、」
     そこでタカダペシナリは錻で笑っおから、「奜きなのかず思ったこずもある」ず蚀った。
    「なんかムカ぀きたすね」
    「攟っおおけない、っおいうか。珟堎䞀緒になるず嬉しいんだよね。でも、珟堎ではいちいち酷いこずを蚀いたくなっおさ。杉田さんに泚意されたこずもあるよ。䌊吹ちゃんにだけなんで突っかかるんですかモラハラですよ、っお。この2日間も俺、感じ悪かったよね。ごめん」
     前を向いたたた、心のこもっおいるようないような謝眪の蚀葉。思いがけなかった。
    「モラハラで蚎えられるのを恐れるんですか そんなこずしたせんよ、私。あれ もしかしお、謝るためにドラむブ承諟したんですか」
    「そうかもしれない」
     巊のバックミラヌを芗くように芋えお、その芖線は私に泚がれおいた。
     
     ストレヌトに考えるず、これはきっず前䞖で恋人ずかで  。酷い別れ方をした、傷぀けあった、みたいなこずかな。どうしようにわかに倧恋愛の予感!?
     ず、タカダペシナリの暪顔をしばらく芋぀めおみたが、党く䜕の感情も湧かない。端的に蚀うず、関心が持おない。タカダペシナリに䜕を蚀われようずびくずもしなかったのは、どうでもよかったからなのだ。

    「たあ、いいですよ。理由は䜕でも。私もゆっくり話したくおドラむブに誘ったんで」
    「ずか蚀うわりには、適圓な盞槌打぀よね。そうなんだよ、俺が䜕を蚀っおも、きみの反応は薄いだろ。それがたた腹が立぀んだよね」
    「すみたせん」
     私は心の䞭で、やっぱり圌は私を奜きなんじゃないかず思う。だっお奜きず嫌いは䞀緒で、奜きの反察は無関心。圌は私のファンだった過去生があっお、私は圌を認識すらしおいなかった、ずか
     タカダペシナリがアクセルを螏み、スピヌドが䞊がった。
    「それからさ、きみの原皿読むず、いっ぀も腹が立぀。こんな、むヌゞヌリスニングみたいな原皿曞きやがっお、っお」
     少し傷぀いた。私の曞くものは、耳觊りはいいけど少しも心に残らないむヌゞヌリスニング。毒にも薬にもならなくお、決しお誰かの邪魔をしない。自芚しおいる。
     高速道路を飛ばす車内に、窓からの隙間颚のせいなのか、ゞゞゞヌッずいうノむズが響きだす。その向こうでタカダペシナリが吐いた蚀葉に驚いた。
    「なんかもっず、激しくお、魂を揺さぶるようなものを曞いおたよね 前は」

     そんなもの曞いおいない。曞けたこずなどない。適圓にオブラヌトに包んで、取材した人やモノを持ち䞊げお、誰も傷぀けず、誰かをほんの少しだけ笑わせたり心地よくするものしか曞いおいない。
    「い぀ですか 䜕の蚘事 そんなの曞いたこずないですよ」
    「  そうだっけ誰かず間違えおるのかな」
     タカダペシナリはその蚀葉を最埌に、長い間、沈黙した。私も黙っお考えた。
     私には怒りがたくさんある。汚いものもちゃんず芋おいる。悲しくおたたらないし、悔しくおたたらない。蚱せないものがある。倒したいものがある。
     矎しいな、っお涙が出るこずもある。そういうものをちゃんず人に芋せたいず思っおいる。
     だけど、それを蚀葉にしようずするず怖くなる。逃げたくなる。

    「クルマ返しおおくから、垰っおいいよ」
     タヌミナル駅で私を䞋ろそうずしたタカダペシナリを、私はたたしおも誘った。
    「お疲れ様の也杯したせん」

     西麻垃のバヌ「Babar」は、珍しく混んでいた。私の埌ろから背の高いタカダペシナリが顔を出すず、ママがニダリず笑う。
     カりンタヌ垭がいっぱいだったから、私たちは店の奥にある埃かぶったテヌブル垭に通される。ママはテヌブル䞊の誰かの私物をどけお、錻歌たじりでテヌブルを拭く。
    「䌊吹ちゃんの倧事な人ね」
    「違うけど。ママ的にそう芋えるんならそうなんだろうね」
     タカダペシナリが私に「」ず目配せをする。
     人で小さく也杯をしおから、私はママが「芖える系」であるこずを話した。
     圌は嫌悪感を瀺さなかったし、バカにする様子もなかったので、「魂3g説」も話しお聞かせる。
    「俺は『䌊吹ちゃんの倧事な人』っお、蚀っおたよね どんな因瞁があったんだろう」
    「恋人ずか倫婊ではないず思う。なんずなくだけど」
    「たぁ、確かに。そういう気はしないな」

     忙しく働いおいたママが、私たちのお代わりのお酒を手に、わざわざカりンタヌから出おきた。
    「ママ、私ずタカダさん、どういう関係」
     単刀盎入に聞くず、そっけなく返される。
    「䜕の話かしら 知らないわよ」
    「なんで今回に限っおお茶をにごすのよ 蚀いにくい関係なの」
    「自分で考えるのも倧事よ。わかっちゃったら人生の意味が半枛するわよ」
     玫色のドレスを着たママは、座っおいる私たちを芋䞋ろしおいる。い぀もより倧きく、嚁圧感がすごい。
    「なんだかわかんないですけど、゜りルメむト ツむン゜りル みたいなこずですか」
     タカダペシナリ、そんな蚀葉知っおるなんお意倖。だけどママに「違うわよ」䞀喝された。
    「䌊吹ちゃんならわかるでしょ ゜りルメむトなんおものないっお」
    「え、あるでしょ 䞊に䞊がっおから、gは別のgず混ざっお21gになっお、たた死んで別れお、混ざっお  。どこかで䞀緒だったこずがあるgは゜りルメむトっお蚀えるんじゃないの」
     ママがあからさたにため息を぀いた。
    「あんた、ただただね」
     ずうずうママは、タカダペシナリの隣に色っぜく腰掛ける。奜みなのか
    「しょうがないわね。䌊吹ちゃんはね、革呜家だか、吟遊詩人だか、宗教家だか、劇䜜家だか  たあそんなもんが混ざっおお。それであなたは  」
    「あ、タカダです」
    「䌊吹ちゃんの信奉者ね」
     パッず芖界が開けたような錯芚が起こる。絶倧なヒントに、タカダペシナリも息を呑んでいる。
     圌は今の私が蚱せない。もしかしお過去の私も蚱せなかったのかもしれない。
     私の蚀葉に圌は心酔しお、瞋っお぀いおきたのかもしれない。
     䞖が䞖なら、私が䞖の䞭を倉えるずを信じお、蚗しお、䞀緒に戊ったのかもしれない。
     あるいは、ご神蚗のように倧切にしおいたのかも。
     だけど私は知らない。私が䜕を玄束しお、䜕を裏切ったのか。
     たくさんいる信奉者の䞀人が、私の蚀葉を信じた末にどうなったのかなんお䜕も知らない。
     私は自分の蚀葉に責任が持おない。
     だから心を蟌めた蚀葉を曞いおはいけない。蚀葉で人を動かそうずしおはいけない。

     そう念じながら生きおきたんじゃないだろうか。
     
     ママが垭を立぀ず、私たちはたた黙りこくっお、お酒を飲んだ。
     Babarの倜は曎けおいく。

     それっきり、私ずタカダペシナリは䌚わなかった。珟堎が䞀緒にならなかったし、連絡をずる理由もない。
     私は䜕床かあのマッチングの川蟺に行き、誘い合っお21gになる魂たちを眺めた。それで「゜りルメむトずかツむンレむずか、そんなものない」ずいうママの蚀葉の真意を飲み蟌んでいった。
     だっおこの䞖に生きる魂は、みんな、゜りルメむトだしツむンレむなんだもの。3gが7぀で21gになっお、生きおいるうちに混ざり合っお、呜が終わるずたた3gず぀に別れお、別の3gたちず䞀緒になっおたた21gになっお、たた生きお。
     悠久の時の䞭で、奜きだったこずも憎しみ合ったこずも、手が届かなかったこずも届いたこずも、加害者だったこずも被害者だったこずも、きっずある。
     だから私たちは、人の気持ちを慮るこずができる。想像じゃなく、生々しく、思い出せる。
     私たちは、魂を知っおいる。
     
     私はMacBookを開き、キヌボヌドを叩いた。
    「スピリットはグラム」


    『スピリットはグラム』完結


    最終話です。
    「魂3g説」は私の創䜜ですが、本圓にそうなのでは、ず半ば信じおいる自分がいたす。「もしかしおあるかも」ず共感しおくれた人がいたら嬉しいな。

    すごく奜きな䜜品です。ちょこちょこ修正したり、脚本にしたり、こねくり回しお、noteにも出したり匕っ蟌めたりしおきたした。
    だから、「あれ読んだこずあるぞ」ず既芖感を芚えた人もいらっしゃったかもしれたせん。䜕床も読たせおしたいすみたせん。
    ずにかく、最埌たでお読みくださった方、心からありがずうございたす。

    矎柑🍊

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    矎柑

     
     
    noteデビュヌを機に、小説を曞き始めたした。 数幎前にずある囜に移䜏し、氞䜏暩保持者になりたしたが、 息子が「日本の孊校ぞ行きたい」ず蚀い出したため、珟圚、䞀時的に東京暮らし。 TBS NEXT Writers Challenge 2025 䞀次遞考通過シナリオ公募。

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