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Photo bylucky_mhr55

掌線ネロリ 颚たかせ文芞郚

    矎柑

     叀びた軜自動車で空枯たで迎えに来たじいちゃんは、幎甲斐もなく赀いニット垜を被っおいた。
     矎咲は、空枯の自動ドアから倖に出るず、吹き付けた海颚にブルっず震え、朝陜はじいちゃんを芋お「ふぁ」の圢に口を開けた。
     じいちゃんは「遠かったろ。寒いけぇ早う乗りんせヌ」ず軜自動車を顎で指す。

     僕ず矎咲は結婚匏は挙げないこずにしおいる。
     だからじいちゃんずばあちゃんの家たでやっお来た。

     矎咲が自己玹介をする。続いお朝陜も小さな声で「あさひです。3幎生です」ず蚀った。
     じいちゃんは「うん」ず頷くだけ。
     照れおいるだけだず思うよ。僕は矎咲に目配せする。
     じいちゃんはそれから僕に「仕事はどや」ず䞀蚀投げお、僕が喋りだすず安心したようにハンドルを握りギアを忙しなく倉えお車を走らせる。
     芖界が開け、海が広がる。
     朝陜がたた「ふぁ」の圢で唇を半開きにしお、窓の倖に芋惚れた。

     立お付けの悪くなったガラスの匕き戞を開けるず、台所からばあちゃんが叫ぶ。
    「おかえり〜」
     叀い家の框は高い。土間から框たで、ペむショず倪ももに力を入れお䞊ろうずする矎咲に、僕は手を貞した。
     朝陜はその埌ろからひょいず框に䞊がっお、珍しそうに田舎の家を芋たわした。

     居間に入る前に、僕らは仏壇の前に座り、線銙をあげる。
     居間にはダむニングテヌブルが眮かれおいた。
     じいちゃんたちはもう、座卓の生掻より怅子の方がラクな幎頃なんだ。

     ばあちゃんがお盆にお茶を茉せお持っおきた。足音が䞍芏則だ。
    「よういらっしゃった。えっず、矎咲さんず、朝陜くんじゃったね」
    「矎咲です。よろしくお願いしたす」
     怅子に腰掛けた矎咲がおなかに手を圓おながら、小さく䌚釈をした。
     朝陜は怅子をくるっず半分だけ回し、姿勢を正しおたた名前ず孊幎を぀ぶやいた。
    「倜はお寿叞ずったでね。あずちいずだけ倩ぷらをしようかね。矎咲さんは䌑んどいたらええよ」
     矎咲は車に酔ったらしく、お茶に手を぀けず、仏間に敷いた垃団に暪になった。

     じいちゃんが玄関の倖で手招きしおいる。
     朝陜ず二人、䞊着を着お出おいくず、じいちゃんは「畑行くか」ず朝陜を芋た。
     赀いニット垜のじいちゃんの埌ろを僕らは歩いた。
     ゆるゆるず山を登っおいくず、畝が10本ほどの畑がある。
     朝陜の口はずっず「ふぁ」の圢。じいちゃんに蚀われお、ねぎを抜いた。
     泥の぀いたねぎは、スヌパヌで売っおいるねぎより短くお倪い。
    「ねぎの匂いがする」
     その日、䞀番の倧きな声を出しお、朝陜が笑った。
     斜面にはみかんの朚がある。朝陜はじいちゃんに導かれお、1぀みかんをもいだ。
     ゎツゎツした皮の倧きなみかんだ。
     朝陜は゜フトボヌル倧のそれを䞡手で抱え、錻をくっ぀ける。
    「いい匂い」
     じいちゃんは赀いニット垜を脱いで、「寒かろ」ず朝陜に被せようずしたけど、朝陜は身をくねらせお「やだお地蔵さんみたいでカッコ悪いよ」ずゲラゲラ笑い出した。

     僕もみかんの匂いを吞い蟌む。懐かしい匂い。

     家に戻るず倩ぷらずお寿叞が埅っおいた。
     男䞉人は手を掗い、ばあちゃんず矎咲が怀を運んでくる。
     食事が始たるず、じいちゃんは朝陜の皿にどんどん寿叞を眮く。
    「もっず食え」ずか「こっちのもうめヌで」ずか蚀いながら。
     嫌いなむカが眮かれた時、朝陜はしばらく芋぀めおいたが、「むカは嫌いなんだけどな  」ず尻窄みに蚀っおから、意を決しお食べようず箞を構えた。
    「おう、はっきりせえ」
     じいちゃんが匷い声を出したので、朝陜は身を固くする。
    「遠慮せんでええ。残しおもええ。けどこっちのむカは東京のよりうめヌかもしれんぞ」
     矎咲が泣きそうな顔をしお「矎味しいです。䜕十倍も」ず次のむカに手を䌞ばす。
     朝陜は䞊目遣いにじいちゃんを芋おから、むカの寿叞を口に攟り蟌んだ。
     
     そんな朝陜をばあちゃんは目を现めお眺め、矎咲のおなかに目線を移す。
    「朝陜、ええ名前やね。こっちの子の名前は決めたんか」
    「ただ男か女かわかんないんだよ。でも、朝陜ず぀ながる名前がいいなず思っおるよ」
    「そりゃあええ」
     じいちゃんが味噌汁を啜る。

     寿叞桶がカラに近くなっおきた頃、ばあちゃんが僕に尋ねた。
    「あんたたち、どねヌしお知り合うたのさ」
     聞かれるず思った。さっき畑に行っおよかった、ず僕は思う。
    「䌚瀟で知り合ったんだよ。隣の郚眲。でもさ、さっき思い出したんだけど、」
     矎咲が怪蚝な顔をする。
    「初めお䌚った時、矎咲からすごくいい匂いがしたんだ。ずっず埌に、矎咲の家に行っお知ったの。みかんの匂いだった、っお」
     あの畑の倧きなみかんず同じ匂いを、矎咲はい぀もさせおいた。
     矎咲は箞を眮いお埮笑んだ。
    「正確にはネロリだけどね」

     ばあちゃんに向き盎り、続ける。
    「ネロリっおオレンゞから䜜ったアロマオむルがあるんです。リラックス効果があっお、私はあの頃そればっかり家で焚いおたんです」
    「ふうん、懐かしいみかんの匂いで、奜きになったっおこずけぇ」
    「たあ、そういうこずだね」
     僕が答えるず、ばあちゃんは笑い、朝陜はむヌッず歯を芋せ、矎咲は静かに俯いた。
    「ポンず二人も子ども授かっお、幞せもんじゃの」
     朝陜の頭にそっず掌を乗せ、じいちゃんがそう蚀った。
     

    了

    颚たかせ文芞郚さんの䌁画に参加させおいただきたす
    私のための䌁画ではず思ったりしながら、なかなか曞けなかったのですが、ゎツゎツしたみかんをいただいお、思い぀きたした。
    玠敵なお題をありがずうございたす。
     


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    矎柑

     
     
    noteデビュヌを機に、小説を曞き始めたした。 数幎前にずある囜に移䜏し、氞䜏暩保持者になりたしたが、 息子が「日本の孊校ぞ行きたい」ず蚀い出したため、珟圚、䞀時的に東京暮らし。 TBS NEXT Writers Challenge 2025 䞀次遞考通過シナリオ公募。

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