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Photo bynoriyukikawanaka

夫と私のグァテマラコーヒー

    mika🌼


    今日のコーヒーは、グァテマラアンティグア。
    グラインダーに豆を入れると、パラパラと乾いた音を立てながら転がっていく。
    スイッチを押し、豆が砕けていくのをじっと見つめていると、それはまるで自分の心のようで目が離せない。


    ──私はいつになったら暗いトンネルを抜け出せるのだろうか。


    「あの、すみません・・」


    ハッと我に返り振り向くと、お客さんが立っていた。


    「あっ、すみません。おはようございます。いつものでいいですか?」


    私はドリップコーヒーMサイズを用意する。
    毎朝8時半頃お店に来るその人は、いつもカバンを斜めがけにかけている。


    「今日のコーヒーは、グァテマラアンティグアです。行ってらっしゃい!」


    斜めがけの人はコーヒーを受け取ると、手元のカップを軽く持ち上げ、ぺこりと頭を下げてお店を出ていった。


    ここのコーヒーショップで働き始めて2年目になる。
    新人の頃いちばん大変だったのは、レジ操作でもなくドリンクのレシピでもなく、お客さんの「いつものドリンク」を覚えることだった。
    お客さんのほとんどが常連さんで、相手が新人であろうが何であろうが容赦なく「いつもので」と注文してくる。
    中には何も言わずにしゃべり出す人もいて、働くスタッフはそのおしゃべりの間にドリンクを用意しなくてはならない。

    斜めがけの人
    朝はドリップコーヒーMサイズ
    昼はおかわりコーヒーか、たまにカフェラテMサイズ

    私はお客さんの似顔絵とドリンクを必死にメモして頭に叩き込んだ。


    2年が経ち、お客さんとのおしゃべりもすっかり楽しめるようになった。
    ドリンクバーでカフェラテMサイズを作っていると、目の前にあの人が来た。


    「あ、こんにちは!今日は午後、カフェラテなんですね」

    「ちょっと、気合い入れようと思って」


    私はカップに書かれた『L』のドリンクIDに、マジックで目と口を書き込み、『ラテちゃん』にして手渡した。


    「お、可愛いですね。ありがとうございます。午後も頑張ります」


    彼はいつものように手元のカップを軽く持ち上げ、ぺこりと頭を下げた。


    ──よし、誘ってみよう。
    私はある決意をする。
    もう一度笑いたかった、ただそれだけだ。


    その日は朝から緊張していた。
    久しぶりに私の中の乙女センサーが騒がしい。


    ──来た。


    「おはようございます。いつものでいいですか?」

    「はい」


    ドリップをカップに注ぐ手が震える。
    高まる鼓動。
    ドリップを差し出し、さぁ、今だ!


    「あ、あの。・・今度一緒にお花見に行きませんか」

    「えっ」

    「私たちスタッフ何人かと、○さんで」

    「おお、いいですね!行きましょう。僕も同僚に声かけてみます」


    そう言って、斜めがけの彼は笑顔で承諾してくれた。
    心臓が飛び出るかと思った。
    声、震えていなかっただろうか。自然に誘えただろうか。
    私は胸のドキドキが止まらず、しばらくその余韻の中でふわふわしていた。


    午後に来た時には、自分のメールアドレスを書いたメモを渡した。
    我ながら驚くほど積極的だった。

    ***


    お花見に一緒に行ったのは今からもう10年以上も前のことだ。
    初めてのデートの待ち合わせでいきなりハイタッチをした私たちは、一緒に人生を歩み始めた。
    気がつけば長い長いトンネルは遥か後ろの方に──。


    斜めがけだったその人は、仕事の合間にコーヒーを淹れてくれる。
    2人分のコーヒー豆を24g計り、グラインダーに入れ豆を挽く。
    「すごい音ぉぉ」と息子が言う。
    「コーヒー豆が踊っている音だよ」と教えてあげる。


    コーヒーサーバーにドリッパーとフィルターをセットし粉を入れ、少しだけお湯を注ぎ蒸らす。
    それから左手をポケットに入れ固定させ、ゆっくり小さな円を描くように注いでいく。
    私は、夫がドリップする時のその静けさが好きだ。


    コーヒーのいい香りが部屋中に漂う。


    「今日のコーヒーは?」

    「グァテマラだよ、はいどうぞ」

    「ありがとう、いただきます」


    マグカップの縁に鼻を近づけ、コーヒーの香りを吸い込む。
    グァテマラの爽やかな香りがする。
    ひと口コーヒーを含み、口の中に広げると甘くてまろやかな優しい味がした。


    そのコーヒーの優しい余韻に浸りながら、まだ『斜めがけの人』だった夫に、コーヒーを手渡していた頃を思い出す。


    人生ってわからないものだな──気がつけば、夫の淹れるコーヒーが、私の一番好きな味になっていた。
    私はまたコーヒーの香りを吸い込み、ひと口すすった。


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    #なんのはなしです珈


    ***

    いろんなコーヒーの物語が読めます↓



    今度、なんのはなしですかとコラボするTABBY‘s  COFFEE  ROASTERさん↓




    『グァテマラオリエンテ』を飲んでみました!


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    香りをかいでびっくり、飲んでまたまたびっくり!!!
    こんなフルーティーなグァテマラは初めて!
    いつもコーヒーは何か甘いお供を欲してしまう私だけど、こちらのグァテマラは、コーヒー単体でもあっという間に美味しく飲めちゃう。


    おまけについていた「ルワンダ」も飲むのが楽しみだな。
    おまけって嬉しい♡


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    もちろんスイーツにも合う♡



    あー、至福。

     
     
     
    繊細少年の兄とマイペースな弟、2人の兄弟をこよなく愛する母、mika🌼です。特に繊細お兄ちゃん(現在不登校)の子育て奮闘記を中心に、日々の出来事を綴っていきたいと思います。どんな大変な物語もnoteに綴り「なんのはなしですか」と笑いに変えて見せましょう。一緒に笑ってください🍄

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