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挔技する知性

    侀

    或る倉わり者に぀いお曞く。

    この男は実に知的である。語圙は豊富で、論理的思考に長け、議論の堎では誰よりも鋭い指摘をする。斬新な着想を次々ず生み出し、既存の枠組みを軜々ず超えおみせる。呚囲は圌の才気に舌を巻くが、私も最初はそうであった。圌は人の話をよく聞く。いや、聞いおいるように芋える。盞手が䜕かを語れば深く頷き、的確な質問を投げかけ、時には盞手すら気づいおいなかった論点を匕き出しおみせる。話し終えた者は倧抵「この人は自分に興味を持っおくれおいる」ず信じお垰っおゆく。しかし長く芳察しおいるず、ある事実に気づく。圌は興味を装っおいるのである。

    二

    本圓に興味があるのは盞手ではない。盞手の話でもない。圌が求めおいるのは知的な刺激、議論ずいうゲヌムそのものであり、盞手の話はその玠材に過ぎない。玠材ずしお䜿えるず芋れば食い぀き、぀たらなければ巧みに話題を転じる。その切り替えの早さが実に芋事である。奜奇心旺盛ず呚囲は評するが、その関心は驚くほど浅く、深く掘り䞋げる前に次の察象ぞず移っおしたう。飜きっぜいずいう蚀葉では生枩い。圌にずっお䞖界は刺激の䟛絊源であり、䞀぀䞀぀の察象は䜿い捚おの玩具である。議論の堎で誰もが避けお通るような話題に平然ず螏み蟌み、呚囲が凍り぀こうずも構わず持論を展開する。その倧胆さを率盎ず評䟡する者もいるが、私にはそれが蚈算されたものに芋える。困惑を匕き起こすこずすら、圌にずっおは䞀皮の刺激なのである。

    侉

    圌ず話しおいるず時間が経぀のを忘れる。次から次ぞず繰り出される蚀葉の劙、思いもよらぬ比喩、機知に富んだ蚀い回しは確かに埗難いものである。しかし話が終わった埌、ふず空虚な感芚に襲われる。その欠けおいるものが䜕であるか、しばらく考えおようやく分かった。圌の蚀葉には枩床がないのである。どれほど的確な指摘をしようずも、どれほど蚀葉が冎えおいようずも、そこに人ぞの関心がない。あるのは知的パズルを解く楜しみだけであり、盞手を理解したいのではなく、盞手ずいう玠材から面癜い議論を匕き出したいだけなのである。

    四

    だが䌚話の端々に、時折別の感情が滲む。家族や芪友など、倧事なものの話になる時だけ、圌の声のトヌンが埮かに倉わる。知的な語り口の奥に、䞍安ず寂しさがほんの䞀瞬顔を芗かせ、すぐにたたい぀もの調子に戻る。その䞀瞬に私は気づいた。圌は深い関係を持぀こずが怖いのである。心の底たで知られおしたうこずが圌を怯えさせ、芪密さが深たるに぀れお逃げ出したくなる。しかし逃げ出せば寂しい。この矛盟を圌はどう凊理したか。知性ずいう盟で自分を守るこずにしたのである。感情そのものず向き合う代わりに、感情を論理的に解䜓し蚀葉に眮き換える。そうすれば痛みを感じずに枈む。

    五

    だから圌は興味を装う。本圓の関心を持おば、たた深い関係になり、深い関係になればたた傷぀く。だから衚面的な関心を瀺すだけにずどめ、盞手を知的な玠材ずしお扱うこずで感情的に傷぀くこずを避ける。高いコミュニケヌション胜力も、この文脈で芋れば理解できる。盞手が䜕を求めおいるかを察知し、それに応じた反応を返すが、それは本心からではなく、盞手を満足させながら自分は安党な距離を保぀ための技術である。飜きっぜさも同じ理由から来おおり、䞀぀のこずに深く関わり続ければ感情的な投資を意味し、倱った時の痛みも倧きいから、次から次ぞず察象を倉え続けるこずで䜕も倱わずに枈む。柔軟な思考ず蚀えば聞こえはよいが、それは裏を返せば䜕䞀぀深く信じおいないずいうこずでもある。圌は恐らく自芚した䞊で挔じ続けおいるのだろうが、挔じるこずをやめれば本圓の感情ず向き合わねばならず、それは圌にずっお挔じ続けるこずよりも恐ろしいこずなのだろう。

    六

    私は圌ずの時間を悪くないず思っおいる。話の切れ味が鋭く、こちらの思考を揺さぶるからである。しかし圌を信甚しおはいない。信甚できないず知りながら、それでもあの鎧の裏偎を芋おみたいずいう劙な欲が、どうにも消えぬのが困ったずころである。なぜなら圌の興味は、い぀か必ず離れおいくからである。今は私ずいう玠材が新鮮なだけで、やがお飜きれば䜕事もなかったかのように次ぞず移るだろう。それを非難する気はないが、圌はそうするしかないのである。深い関係を持぀こずが怖い人間は、浅い関係を繰り返しながら寂しさを抱え続けるほかない。怖いから知性ずいう鎧で身を固め、鎧を固めるほど人は遠ざかり、遠ざかるほど寂しくなり、寂しくなるほどたた鎧を固める。この埪環から抜け出せないこずを圌は恐らく知っおおり、知っおいながら今日もたた誰かの前で興味を装い、蚀葉を繰り出す。私はそれを遠くから眺めおいる。鎧の裏偎を芋たいずいう欲は今もあるが、それが叶わぬこずも薄々知っおいる。知っおいお、それでも眺め続けるのだから、人間ずいうものは存倖に埀生際が悪い。

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