
2025年春、西国三十三所めぐりは華やかで賑やかで自分と向き合う半年だった
はじめに:直感を信じて踏み出した
四国お遍路の旅を終えたばかりの私は、しばらくはどこにも行かず、穏やかに過ごすつもりでした。
高齢の両親の体調を考えると、家を空けることにどうしても踏ん切りがつかなかったのです。
そんな私の背中を押してくれたのは、四国巡礼で出会った大切な友人からの「一緒に行こう!」という一言でした。
心は即座に「YES!」という答えが浮かびましたが、頭で考えると不安がよぎります。
それでも、「なんとかなる。今は、この流れに乗るべきだ」という直感を信じることにしました。
アラフィフになり、直感だけで動くには体力的な不安も感じる年頃ですが、タイミングの波が来ているときに逃すと後悔しそうで、行くことにしました。
母に相談すると
「西国は華やかよ。行って来たら」
という言葉。
許可をもらったような気持ちになって、母へのお土産話を持ち帰ることを楽しみに、週末1泊2日・全6回の西国三十三所巡礼ツアーに身を投じる決意をしました。
若い頃のような勢いだけではない、どこか義務感や「今行かなければ」という強い決意が混ざり合った不思議な感覚。
加齢による疲れや、帰宅後の家事を思って気が重くなることもあります。
けれど、旅の途中でストレスが溶けていくようなスッキリとした癒やしを実感するたび、行けるときに行く! 今が一番若いのだからと自分を奮い立たせました。
こうして始まった、3月から8月までの半年間にわたる全6回の旅。
混雑する関西、そして万博の熱気の中でも、今しかできない体験がそこにはありました。
半年を振り返る
この半年間の道のりを、写真や動画と共に振り返ります。
お寺の写真もたくさん撮ったのですが、このnoteは自分の記録として残しているので、印象に残ったことを中心に書いています。
お役立ちガイドブック的要素はありません。
第1回(3月)発願:那智の滝と旅の始まり
旅の始まりは、期待と少しの緊張が入り混じる「発願」です。
1日目、新幹線で名古屋駅へ向かい、特急「南紀」に揺られて新宮駅へ。
最初に向かったのは、第1番札所の青岸渡寺です。
隣接する那智大社とともに、目の前に広がる那智の滝の迫力に圧倒されました。
滝の水量は少し少なめでした。

2日目は、紀三井寺(金剛宝寺)、粉河寺、そして葛井寺へ。
紀三井寺の長い階段を一段ずつ登ったこと、粉河寺の庭園の美しさや、街の中にある葛井寺の親しみやすさ、庶民性に触れることができました。

四国の時は一人参加してそこから少しずつ気の合う方と会話をして仲良くなったのですが、今回はその仲良くなった方とご一緒できたことはとても心強く、道中も楽しい会話をたくさんしました。
先達さんが、「次回(2回目)の最初の施福寺は馬頭観世音様にお願いしながら登ると良い。ご縁があれば行けるから」とおっしゃっていました。
次回の難所に向けて、先達さんから心構えを教わったことで、心して臨むだけでなく、次までの間、いつも以上に筋トレをさぼらずに頑張ろうとも思いました。
【第1回:3月行程データ】
1日目
🚄 名古屋駅 ➡ 🚆 特急「南紀」 ➡ 新宮駅
【第1番】青岸渡寺(那智大社・那智の滝)
🏨 宿泊:メルキュール和歌山串本リゾート&スパ
2日目
【第2番】紀三井寺(金剛宝寺)
【第3番】粉河寺
【第5番】葛井寺
✈ 伊丹空港 ➡ 羽田空港
第2回(4月)修行:難所施福寺と奈良の歴史
2回目は、「修行」のような旅となりました。
1日目、羽田から伊丹へと飛び、最初に向かったのは第4番札所の施福寺です。
ここは西国三十三所の中でも屈指の難所。
前回の先達さんの言葉を信じて、馬頭観世音様にお願いして一歩ずつ登りました。
約25分の険しい山道を越えてたどり着けたときは達成感でいっぱいでした。
その後、岡寺、そして特別拝観中だった壷阪寺(南法華寺)へ。
とても空気感がよく、静かな時間を過ごせました。
壷阪寺では、御本尊の十一面千手千眼観音菩薩様と対面し、その慈悲深い眼差しに心が洗われるようでした。
ちょうどお雛様の展示をしていて圧巻でしたが、お雛様が苦手な方は避けて通過していました。


2日目は、奈良の歴史の深さに触れる行程です。
奈良公園で鹿にも会いました。
興福寺の南円堂から始まり、花の寺として知られる長谷寺、そして徳道上人が隠棲した法起院へ。
最後は京都の今熊野観音寺を参拝しました。
長谷寺はとても美しく今でも思い出します。





バスの駐車場へ向かう途中に立ち寄った素戔雄(すさのお)神社



【第2回:4月行程データ】
1日目
✈ 羽田空港 ➡ 伊丹空港
【第4番】施福寺(山道徒歩約25分)
【第7番】岡寺
【第6番】南法華寺(壷阪寺)
🏨 宿泊:カンデオホテルズ奈良橿原
2日目
【第9番】南円堂(興福寺)
【第8番】長谷寺
【番外】法起院
【第15番】今熊野観音寺
🚄 京都駅 ➡ 帰着
第3回(5月)薫風:新緑の滋賀と家族の思い出
3回目は、新緑の美しい旅となりました。
1日目、京都駅から最初に向かったのは、滋賀県大津市の岩間山にある正法寺(岩間寺)です。
そこから三室戸寺、上醍醐寺(下醍醐寺)へと巡りました。



醍醐寺ではある場所に行くと、ものすごい地熱のように一部だけ熱い場所がありました。
あれは何だったのでしょう。

2日目は、石山寺からスタート。
広大な境内に広がる庭園の美しさは、まさに「緑のシャワー」を浴びているかのよう。

続いて園城寺(三井寺)、番外の元慶寺、そして京都市内の頂法寺(六角堂)、六波羅蜜寺を参拝しました。
この回は、とにかく新緑の鮮やかさが印象的でした。

石山寺や三井寺などは、数年前に母と妹と行ったことのある思い出深い場所で、何度も訪れたい場所でもあります。
宿泊したホテルの近くにモンベルが!
思わずTシャツを購入。

【第3回:5月行程データ】
1日目
🚄 京都駅着
【第12番】正法寺(岩間寺)
【第10番】三室戸寺
【第11番】上醍醐寺(下醍醐寺を参拝)
🏨 宿泊:アーバンホテル南草津
2日目
【第13番】石山寺
【第14番】園城寺(三井寺)
【番外】元慶寺
【第18番】頂法寺(六角堂)
【第17番】六波羅蜜寺
🚄 京都駅 ➡ 帰着
第4回(6月)喧騒と静寂:早朝の八坂神社と人混みの京都
4回目は、初夏の陽気と共に、観光地の賑わいと聖域の静寂という対照的な二面性を感じる旅となりました。

1日目、京都駅から最初に向かったのは、京都市内にある第19番札所の行願寺(革堂)です。
その後、亀岡の穴太寺、そして「天空の寺」とも称される善峯寺へ。
善峯寺から見下ろす京都市街の絶景は、登ってきた疲れを忘れさせてくれるほど見事なものでした。
京都はものすごい人。
鴨川散歩をして、鰻をいただきました。


2日目は、お友達のお誘いで、早起きしました。
ツアーの集合前に八坂神社へ行くためです。
日中は観光客で溢れ返る場所ですが、朝の澄んだ空気の中では、本来の神聖な気配を肌で感じることができました。

その後、8時前に清水寺へ。
中学の修学旅行の写真と後で見比べましたが混雑の差がすごかったです。

午後は、総持寺、勝尾寺、そして安産の寺として知られる中山寺へ。
勝尾寺の至る所に置かれた「勝ちだるま」、それを背景にインバウンド客が写真撮影をしていることが多くて驚きました。

対照的に総持寺、中山寺の雰囲気は穏やかで個人的にはとても心地よかったです。
【第4回:6月行程データ】
1日目
🚄 京都駅着
【第19番】行願寺(革堂)
【第21番】穴太寺
【第20番】善峯寺
🏨 宿泊:相鉄フレッサイン京都清水五条
2日目
🚶 八坂神社(早朝参拝)
【第16番】清水寺
【第22番】総持寺
【第23番】勝尾寺
【第24番】中山寺
🚄 新大阪駅 ➡ 帰着
第5回(7月)深淵:山の上の聖域とお仲間との絆
5回目は、深い山々に抱かれた聖域を巡る、まさに「深淵」に触れるような旅となりました。
1日目、羽田空港から伊丹空港へ降り立ち、まずは番外札所の花山院(菩提寺)へ。

タクシーに乗り換えて急勾配を登った先に待っていたのは、静寂に包まれた祈りの空間でした。
その後、舞鶴の松尾寺、そして天橋立を望む成相寺を参拝しました。
2日目は、播州清水寺からスタート。
そして、この旅のハイライトの一つでもある圓教寺へ。
ロープウェイで山上に上がると、そこには映画のロケ地にもなるほどの荘厳な建築群が広がっていました。
とても見晴らしがよくて気分も上がります。
最後は一乗寺を巡り、伊丹空港から帰路につきました。
5回目ともなると、ツアー仲間との絆も深まり、お互いの巡礼の動機やこれまでの道のりを語り合う時間も増えてきました。
いつの間にか温かな繋がりが生まれるのもお参り旅の醍醐味です。


【第5回:7月行程データ】
1日目
✈ 羽田空港 ➡ 伊丹空港
🚕 【番外】花山院(菩提寺)
【第29番】松尾寺
【第28番】成相寺
🏨 宿泊:ザ・セレクトンプレミア神戸三田ホテル
2日目
【第25番】播州清水寺
🚠 【第27番】圓教寺(ロープウェイ利用)
【第26番】一乗寺
✈ 伊丹空港 ➡ 羽田空港
第6回(8月)満願:琵琶湖を超え結願の華厳寺へ
最終回となる6回目は、真夏の太陽の下、琵琶湖を渡り、ついに結願の地へと辿り着く「満願」の旅となりました。
1日目、米原駅から長浜港へ向かい、そこから船で竹生島へ。
強風の影響で欠航の恐れがあったため、急遽予定を変更して昼食時間を削り、一刻も早く船に乗り込むことになりました。
その時に売店でサラダパンを買いました。

無事に上陸できた竹生島の宝厳寺は、湖に浮かぶ聖域の名にふさわしい感動的な美しさでした。



続いて、長命寺を参拝し、近江八幡へ。
その夜は、半年間共に旅をした方がディナーに近江牛のお店に行くとお話しされていたので、お願いしてご一緒させていただきました。
同じ道を歩んできた方々と語り合う時間は、何物にも代えがたいひとときとなりました。
伺ったのはティファニーさん。

2日目、観音正寺を参拝し、いよいよ最後、第33番札所の華厳寺へ。
真夏の厳しい暑さの中での参拝でしたが、無事に満願を迎えた瞬間、これまでの道のりが思い出され、胸に熱いものが込み上げました。
半年前、「今は、この流れに乗るべきだ」と直感を信じて飛び出した自分。家を空ける不安もありましたが、両親の体調も安定し、私の土産話を喜んでくれる姿を見て、本当に行ってよかったと心から思えました。
この旅を終えた後、実家じまいや父との別れという大きな人生の節目が訪れましたが、今振り返れば、あのタイミングで巡礼に出られたことは、私にとって何よりの救いとなりました。




【第6回:8月行程データ】
1日目
🚄 米原駅着 ➡ 🚢 長浜港 ➡ 【第30番】宝厳寺(竹生島)
🚢 長浜港 ➡ 🚕 【第31番】長命寺
🏨 宿泊:グリーンホテルYES近江八幡
2日目
🚕 【第32番】観音正寺➡【第33番】華厳寺(満願)
🚄 名古屋駅 ➡ 帰着
結びに:旅を終えて。巡礼が教えてくれたこと
半年間をかけて巡ったこの旅は、関西の豊かな風景や歴史、そして文化を全身で堪能する時間となりました。
秩父では観音経は読まなかったのですが、西国は観音経の後半をツアーでは読むことが決まりになっていました。
ですから、最初は慣れずにとても大変でした。
でも少しずつ慣れてくると、観音様にご縁をいただいている実感がわいてきました。
振り返ると、那智の滝の轟音、早朝の澄んだ空気の中で訪れた八坂神社の静寂さ、そして琵琶湖に浮かぶ竹生島の神々しい美しさは、日々の疲れや心の澱をすべて洗い流してくれるような、まさに「最高の景色」でした。
春から夏へ、季節の植物を見る楽しみもあって、心が癒されていきました。
そして、少しだけ関西とのご縁が強くなった実感がうれしかったです。
旅の最中、母に電話やLINEで報告するととても喜んでくれました。
お土産を送ると、母が施設にいる父に届けてくれたりと、家族で旅の空気を共有できたあたたかな時間は、私にとってかけがえのない贈り物となりました。
父とは直接会って話す機会は限られていましたが、私が旅の前に面会に行くと、嬉しそうにしてくれたことを思い出します。
私が見た景色や感じた想いは、きっと届いていたと信じています。
また、巡礼を通して興味深かったのは、場所によって自分との「相性」があることに気づけたことです。
中には、なぜか自分に「合わない」と感じる場所もありました。
あまり長くいたいと思わなかったり、ざわざわしたり、深呼吸できなかったり。
それもまた、その時の自分自身のエネルギーや心の状態を知るための大切なバロメーターなのだと受け止めています。
お寺ごとに異なる空気感、季節ごとに移ろう花の香りや色。
それらに五感を研ぎ澄ませて向き合う毎月は、自分自身を丁寧に整えていく作業でもありました。
また、今回の旅では各地のグルメも存分に楽しみました。
本来のストイックな巡礼を重んじる方から見れば「不謹慎だ」と思われるかもしれません。
しかし、その土地の文化に触れ、美味しいものをいただき、お土産を手に取ることも、ひとつの地域貢献の形ではないかと私は考えています。
一方で、オーバーツーリズムや万博の影響による京都の凄まじい混雑を目の当たりにし、観光の活性化と地域の方々の生活の守り方について、深く考えさせられる場面もありました。
直感を信じて飛び込んだ西国三十三所巡礼。
この旅で得た癒やしとエネルギーを胸に、私の巡礼の道は次なる舞台、坂東へと続いていきます。