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Photo byyokoichi

その重なりが、季節になる


    家の近くにある図書館へ行くと、いつも不思議と心が落ち着く。


    誰もがそれぞれ違う目的で来ているはずなのに、共有されたひとつの静けさが流れている。


    勉強をしている人。
    新聞をゆっくり読んでいる人。
    絵本をめくる親子。
    何かを探すように本棚の間を歩く人たち。


    私は窓際の席で、一冊の本を開く。


    先月もここで本を読んでいた。
    その時、本を閉じて顔を上げると、窓の外で風が木々を揺らしていた。


    葉がふるふると震えるたび、光が細かくほどけて地面へ落ちてくる。


    その光を見ながら、ふと思った。


    人は、言葉を交わすことでつながるのだと思っていたけれど、本当はそれだけではないのかもしれない。



    同じ空間で、それぞれが自分の時間を大切に過ごしている。


    誰かの邪魔をせず、
    誰かに無理に合わせることもなく、
    ただそこにいる。


    それだけで、その場全体がどこか穏やかになっている。


    そういうことが、この世界には案外たくさんあるのではないだろうか。



    春になると鳥が鳴き始める。


    その声を聞いて木々は芽吹き、花は開く、
    というわけではないけれど、不思議と景色全体が「春」というひとつの季節になっていく。


    誰か一人が頑張って春を作っているわけではない。


    それぞれが、それぞれの役目を静かに生きている。


    その重なりが、季節になる。


    人も同じなのかもしれない。


    誰かに認められるために何かを足すよりも、自分の心が落ち着く場所で、自分らしく息をしていること。


    ここで生きているそれぞれが、静かに景色をつくっている。


    その景色は、思っている以上に遠くまで届いているのではないだろうか。



    図書館を出るころには、西日が街をやわらかく照らしていた。


    帰り道、すれ違う人たちの表情を見ていると、それぞれに今日という一日があり、それぞれの物語を歩いているのだと思う。


    交わることのない人生もたくさんある。
    それでも、同じ夕暮れの光を浴びながら歩いている。
    それだけで、少しだけ世界は近く感じられた。



    誰かと同じになる必要はない。
    同じ方向を向く必要もない。
    ただ、自分という場所で静かに生きていること。


    そんな一人ひとりの時間が、この世界のやさしい景色を少しずつ織り上げているのだと思った。






    ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

    今日も、よき日でありますように!




     
     
    白か黒かの世界を抜けて 夢見ることを忘れぬように Everything is a metaphor ✳︎ . 毎週〈日曜日〉更新 .

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