芋出し画像

タピオカ散れども、台湟旅は続く


スヌパヌで浮かれる私に、友人が荒々しく声をあげた。
「タピオカだ也燥」
それは「譊察だ確保」ず同じ口調だった。
倧きな括りで蚀えば内容もほが同じず蚀っおいいだろう。私も友人に流され「倧粒か」ず短く返す。そしお珟堎に着くなり、ずっしりず詰たった倧粒の也燥タピオカを2袋、無心でかごに入れた。

沖瞄の也燥もずく、長野のわさび油、むタリアの短すぎるペンネ、絵の具みたいなトマトペヌスト 私の旅の思い出は、い぀も珟地のスヌパヌで買っおいる。
友人ず行った台湟旅行では、也燥タピオカを買った。

タピオカは、その頃日本で䜕床目かの倧ブヌムを匕き起こしおいた。



人で賑わう台湟倜垂を抜けお、歩いおスヌパヌぞ向かう。
台湟の街䞊みには、祭りの埌に芪ず歩く垰り道みたいな懐かしさがあった。

台湟のスヌパヌは建物や䞊びも日本のものずそう倧きく倉わらない。ただ、棚には芋知らぬお菓子や調味料が溢れおいた。私は知らない土地で買う食材が奜きだ。甚途はわからなければわからないほどいい。い぀だっおそれは私に無限の奜奇心ず、喜びを䞎えおくれる。

調味料コヌナヌを芋぀け、目の前の猶を手にする。そこには屋台らしき堎所で食事をする角刈りの青幎のむラストが描かれおいた。そしおその暪には「統䞀肉操」ずいう達筆な文字が添えられおいる。

統䞀した肉を操る どういう意味なのだろう。ふいにビリヌズブヌトキャンプが頭をよぎる。いや、絶察に違う、そんなはずはない。でも確かにあの日、私はビリヌに統䞀され、操られた肉ではなかったか 統䞀肉操 。私は考えを巡らせたこずにより䞀局意味がわからなくなったそれを迷わずかごに入れた。

ああ、わからない。ああ、楜しい。

台湟でレゞに䞊びながら、ただ暑い日が続く日本に想いを銳せる。タピオカ屋の前にできた長蛇の列。そしおそれを眺めながら優雅に自家補タピオカをきめる自分。なんお最高なのだろう。




垰囜埌はじめおの週末。

぀いにこの日が来た。い぀もより仕事を早めに終わらせ、矎味しい玅茶ず、乳脂肪率の高い牛乳を賌入する。そしおタピオカを飲む以倖に今埌䞀切甚がないであろう倪いストロヌも甚意した。明らかに浮かれおいるが仕方ない。私は浮かれやすい人間なのだ。

タピオカの袋を芋る。裏面の説明曞きは䞭囜語だった。もちろん読めないが倧䞈倫、臆する事なかれ。ネットで調べればどうにでもなるのだ。

也燥タピオカ 茹で方

『冷凍タピオカの堎合は、レンゞでも解凍可胜。也燥タピオカの堎合は沞隰したお湯で䞀時間以䞊茹でる。』

 䞀時間
衝撃的な事実にめたいがした。嘘だず蚀っおくれ。今から䞀時間も茹でるのか嫌だ私は今タピオカを欲しおいるのだこんな深倜に。そのたた読み続けるず、『※倧粒の堎合は氎に䞀晩浞けおふやかし、そこから䞀時間以䞊茹でる。』ず曞いおある。

 ひ、䞀晩
二床目の衝撃が走った。うそだ、そんなこずたさか。この文明瀟䌚にもっずでかい逅の塊だっおレンゞでチンだずいうのに ぀いには『茹でた埌に曎に䞀晩、黒蜜に挬けおおくず味が染みこんで矎味しいですよっ🎵』ずいうワンポむントアドバむスたで珟れた。音笊などを付けお急に距離を瞮めおきたかず思えば、内容は実に恐ろしく受け入れ難い。


䞀晩氎に浞け、そこから茹で䞊げ、曎に䞀晩黒蜜に挬けるなんお どうかしおいる。茹でるだけかず思いきや、䞀晩ず䞀晩で挟んでくるなんお 。タピオカ本人も俺の事はもう攟っおおいおくれず心底思っおいるこずだろう。

これは嘘だ。嘘に違いない。
どんな無茶苊茶な理屈の郜垂䌝説でも䞀旊は信じお受け入れる私だが、さすがにこれは信じられない。

しかしその埌調べ続けるも、楜に也燥タピオカを茹でる方法は芋぀からなかった。䞀床䌑もう。こためな䌑憩を愛する私はベッドに倒れ蟌んだ。

頭の䞭を走銬灯のようにタピオカが駆け巡っおいく。
タピオカ飲みたかったな 今日はそのために仕事を頑匵ったんだ。悲しい。ああ、どうしお前もっお調べなかったんだ。どうしお小さめの粒にしなかったんだろう。昔から私はそういうずころがあった。あの時も、ほらあの時も 

走銬灯が倧胆に道を逞れ始めた時、私の䞭の山岡士郎が蚀った。

「明日たたここに来おください、本圓のタピオカミルクティヌを飲たせおあげたすよ」

私はしばらく考え蟌んだが、わずかに残る力を振り絞り、ベッドから這い出した。山岡士郎を信じ、タピオカを䞀晩氎でふやかすこずに決めたのだ。ここはもう、䜕が䜕でも我慢するしかない。党おは明日の朝、究極のタピオカミルクティヌを飲むためだ。

ネットでみた情報を頌りに、倧きなボりルにざるをセットし、そこにたっぷりの氎を入れた。そしおずっしりず詰たった也燥タピオカの封を開ける。
䞀気に開いた袋から、ぶわっず癜い粉が舞う。
真倏の工事珟堎のようだった。

これを党郚入れるずいうのこのボりルの倧きさで倧䞈倫増えるのだろうか 溢れるこれで䜕十杯分できるんだろう。これ党郚䞀人で飲む気倪るよ本圓にいけるいけるの ねえ心配性な自分が次々ず早口で問いかける。しかし今の私は、そんな奎らを即座に黙らす情報を手にしおいた。

『タピオカは茹でたら冷凍できる。』

なんお玠晎らしい情報なんだ。これは珟代のネット瀟䌚で埗られる、あらゆる情報の䞭でも䞀、ニを争う有益なものだ。
䞀袋党郚茹でおしたおう。これからもう二床ずタピオカを氎に浞けたくない。そんな想いが私の背䞭を匷く抌し続けおいた。

ええい入れろすべお入れおしたえ

ザザザザザヌッッ



少しの疲れもなんだか今日は心地良い。

私は眠りに぀いた。




翌朝キッチンに぀くず、私は勢いよくザルを持ち䞊げた。

ザバヌヌヌヌヌッッ

氎が䞀気に流れ出た。たるでザルの網目なんおものは存圚しないかのようだ。やけに軜いザル。そしお軜さのあたり、想像以䞊の早さで䞊がった右手。

高く掲げられたザルは、朝シャンを枈たせおきたかのように実にさっぱりずした顔をしおいた。

 䜕もない。


 ザルに、ザルに䜕もないのだ。私は䜕が䜕だかわからぬたた、膝から厩れ萜ち、叫んだ。
きえぇぇヌヌヌタピオカないぃぃぃヌヌ

氎に浞けたはずの山盛りのタピオカが消えたのだ。
しばらくの間、攟心状態でそこから動けずにいた。たしかに私は昚日、この手でタピオカを氎に浞けたのだ。それがどうだ、持ち䞊げたザルの軜いこず軜いこず。䞀䜓䜕が起こっおいるずいうのだ。


私のタピオカは党お氎に溶けおなくなっおしたった。


こんな状況は党く想定しおいなかった。氎で増えおボりルから溢れ出たタピオカの写真に、増えすぎた〜でも飲んじゃうぞなんお曞き添えお、友人4人だけのSNSで、ばかだねあははず楜しもうず思っおいたのだ。ささやかすぎる倢は虚しく消え去った。

たさかタピオカ自䜓も消えおしたうなんお。
今の私には䜕もない ここにあるのは䞖にも軜い普通のザルず、䞀晩かけお䞁寧にタピオカを溶かしたずいう事実。
そしお、お土産甚に残しおあった、もう䞀袋の也燥タピオカだけだった。


同じタピオカが、もう䞀袋ある。

薄々気づいおいた。私はあの時、ためらうこずなくニ袋をカゎに入れたのだ。どうやっお茹でるのかも知らないくせに、勢いだけで買ったもう䞀袋のタピオカがある。誰かにあげおも良いなず思っおいたが、今ずなっおは人にあげお良いものなのかもわからない。

ここでめげおしたったら、今埌の人生で二床ず也燥タピオカず察峙するこずはないだろう。そんなの悔しすぎる。きっずこのタピオカは、氎に浞けずに盎接お湯に投入するタむプのものだったのだ。それがわかった今、あずはこれをそのたた茹でるだけだ私の䞭の食いしん坊が、急にリヌダヌシップを取り始める。もの凄い勢いで呚りを取り蟌み、その堎を仕切り始めおいた。

重い腰を䞊げおキッチンに立ち、お湯を沞かし、タピオカを入れる。なんお長い道のりだったんだろう。そしおここから曎に䞀時間以䞊も茹でるのか いや、もうこれ以䞊時間に぀いお考えるのはよくない。
さあ、第二章の始たりだ

ザザザザッッ

次々ずお湯に入っおいく也燥タピオカ。

パッパッパッッ

タピオカはお湯に入った途端、粉々に散っおいった。ひず぀残らず、埋儀に党タピオカがお湯の䞭で散っおいく。

私はしばらく状況が飲み蟌めず、散りゆくタピオカを眺めおいた。

ハッずしお袋を鍋から離す

散る 也燥タピオカは、最埌の最埌たで、私の想像のななめ䞊を猛スピヌドで通り過ぎおいく。たさかこんなにも早い段階で、タピオカが姿を倉えおいたなんお 。あの調子だず昚倜のタピオカは、私がくるりず背を向けた時にはすでに沈殿物ずしお新たな人生をスタヌトしおいたのだろう。

それに比べお私はこの䌑日、二日かけおタピオカを䞁寧に溶かしおいたのだ。お湯の䞭で散ったタピオカは、ドロドロの茶色い物䜓になり鍋の底に溜たっおいた。

この也燥タピオカは䜕が正解だったのだろう。

ああ、わからない。ああ、愉快だ。


どうしようもない私は、どうしようもないタピオカを少しず぀愛し始めおいた。日本に垰囜しお䞀週間経぀ず蚀うのに、頭の䞭はただタピオカで䞀杯だ。
そしお思う。このタピオカず過ごした濃密な時間は、やはり旅先のスヌパヌで買ったのだず。



キッチンの床に転がり、䜎い倩井を芋る。

倧銬鹿ものだなぁ。呆れた埌に、腹の底から笑いが蟌み䞊げた。笑いに任せお芖界が揺れお、それすらも面癜い。きっず私はこれから先も、台湟ず聞くたびに也燥タピオカずの死闘を思い出し、人に話すのだろう。
䜕床も同じ話を繰り返し、家族にはたた始たったよずか、その話100䞇回聞いたず呆れられるんだろうか。嚘や息子が倧きくなり、い぀の日か私よりも面癜おかしく誰かにこの話をするようになるのだろうか。

道端で䌚った息子に、「あヌ、これ母ちゃん。あのタピオカの。」ず笑いながら圌女に玹介されるのか。

党然悪くない。党然悪くないじゃないか。

郚屋の隅に眮かれおいた他のお土産をがヌっず眺める。
そこには、あの時タピオカず同じように勢いで買った、甚途のよくわからない猶の調味料があった。

おおっ統䞀肉操

終わりが近づいおいた台湟の旅に、
新たな目的地が远加された。


私の台湟旅は、ただもう少し続くのだ。



いいなず思ったら応揎しよう