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50年の窓 第20章

    第20章 つかの間の出会い

    2037年10月
    ケントは、サムの意図もあってどのWGにも属していなかった。また、ΩプロジェクトHQのサムの周りには興味深い情報も多く強い興味を持つことから、ケントとしても、サムとスペースXの訪問依頼、サムのスタッフとして彼を支援する機会が多くなり始めていた。

    カレンは、Dウイルスで変更されたDNAを新たに設計したGウイルスでDNAで亜種の全身の細胞のDNAを書き換えるという、手段をWG01のミッションとして開発中であった。学術的に認められた公知の成果においても、亜種の子がまだ生まれて間もないうちであれば、過去に、筋ジストロフィー障害の誕生間もない赤子で全身の全細胞の遺伝子を入れ替えることにの成功例がない訳ではない。まだ、Dウイルスそのものの設計手法が答えであるのかもしれない。

    カレンはロシアのDワクチンを製造した科学者のドキュメント、2020年代の筋ジストロフィー障害対応の論文など過去の例を学ぶ中で手法を追いかけ、追い込む毎日に明け暮れて、ロシアへの渡航以来の疲労が過労となり、何もかもが「ウザく」感じる昨今であった。

    「カレン!、久しぶりだね。WG01の方は上手く行きそう?」
    聞いてほしくない話題を前面からぶつけられ、カレンは、思わず、
    「何がよ?」と、とぼけた意味不明の返事が無意識に出てしまった。

    ケントは、その1言で、カレンの心情を察した。
    「美味しいピザと、コーヒーの店を見つけたけど、ちょっと休まない?よかったら?」
    と細心の心遣いで、優しく聞いてみた。
    カレンは、ケントの優しさ、カレンの今の苦しみを言外に全て瞬時に理解してくれたケントを見た。

    無言の返事に合わせて、ケントの顔が滲んで、大きな涙が1筋頬を伝わるのを隠すことができなかった。
    ケントは、藁に包まれたキャンティのボトルからグラスに注いだ、その深い赤がカレンの心を和ませてくれた。
    「1時間だけ、ベクターウイルスの話は忘れない?」

    カレンはこの時の、焼きたての温かく、そしてたっぷり柔らかいチーズの乗ったマルガリータの食感を多分忘れることはないと感じた。そしてケントの優しさを。

    <次記事等へのリンク>
    第21章 第2回Ω研究会全体会議
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    saito

     
     
    1972年慶應義塾大学大学院修士課程修了。商用インターネット等通信事業開発。交換機開発で前島密賞等受賞。 金沢工業大学大学院客員教授、慶應義塾大学SFC研究所上級研究員、湘南ビーチFM局CEO、FM軽井沢局長などを歴任。 2020年より好奇心や意識をテーマにした執筆活動を推進中。

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