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50年の窓 第8章

    第8章 CIA(中央情報局)
    一方、
    ケントは、前回のワシントンでの会議でのCIAのメンバーの態度から既に背景に何か大きな力の存在を感じており、昨日朝のカレンからの電話以前に先日のCIAのメンバーの1人に会ってみるつもりでいた。
    また復興の混乱期にあるロシアであることもあり、カレンの万一の事態に対処する方法を検討し、万一のケースに備えてカレンの安全のためにCIAの協力を求めることに尽力する決心もしていた。

    自分の最適なポジションはカレンを止めるのではなく、彼女の行為が最善の結果を導くように努力する事だと解をえて、CIAの協力を求めることだと結論した頃に、朝の光を見た。
    また低軌道衛星のスターリンクを使ったネットワークアクセスなど複数の通信手段、護身用の銃などを出発までに用意することにした。

    5月22日
    ケントは、早朝アポをとり、直ちにワシントンに戻り、先日のCIAの2名のメンバーに会った。
    「先日の会議であなた方の行為、視線、その他の表情における情報には全く不自然なものがありました。CIAの皆さんが何を隠しているか説明していただけますか?」
    「我々も会議の後、議論して、あくまでも非公式ということであなた方にお会いすべきだと昨日結論し、上官の指示を待っていました。」リーダー格と思われるサミュエル・エンディコットが口火を切った。
    「我々は、2032年末以来ロシアの終戦というか戦後処理に携わってきました。そしてその活動の中で、何をどう定義したのか全く理解できない不明な秘密組織の存在に気づき、その取り扱いに悩んでいました。我々の得た情報が部分的であったため、充分な理解ができませんでしたが、先日のあなた方のプレゼンでほとんどの不明なリンクがつながり全体像が見えてきました。感謝しています。」
    「今の段階で我々の問題に対する危機感は多分お2人と同じレベルと考えていただいて結構です。」
    「先日の会議後、CIA長官に整理した事の成り行きを報告し現在指示を待っています。
    多分、ご協力できることになると思うし、逆にご協力をいただくことになるかもしれません。」

    ケントは沈黙し、カレンのロシア行きを停止されるリスクを悩んだ結果、
    「実は、カレンは近日中にロシアに情報収集に行きます。
    我々は本件はその予想される結果の大きさから、我々なりに緊急と考えており、NSAにもCIAにも頼めないと判断した結果、危険を覚悟で行動を決めました。目的は今回の感染源であるベクターウイルスを作った本人を見つけて協力を仰ぐ事です。ご理解いただければ幸いです。
    彼女とのリンクは私のできる範囲で確保してありますが、彼女の身の安全を保証してほしい。お願いできますか。」
    「彼女の場所をトレースできますか?上官の指示はまだ出ていませんが、我々から見ると新たな展開であり、直ちに対応を開始します。」

    ケントは、停止命令になりそうには思えず安堵。
    「いくつかのデバイスを持たせますのでご利用いただければありがたいです。また元国連の仕事をしていてロシアに詳しいメアリーという女性に同行してもらいます。」
    「現地のスタッフに、カレンにコンタクトして調査の協力と警護することを直ちに命じます。メアリーについて確認しますので後ほどでよいですが正確な情報をいただけますか。」
    「カレンは、問題の遺伝子を書き換える伝染性ベクターウイルスを作った本人に会うことを目標にしています。実現すればそのベクターウイルスの対策が可能になるかもしれません。しかし、その方が誰で現在どのような状況にあるかなど全く不明です。論文を頼りに探すことになります。心配は彼がCIAのスタッフを見ると隠れてしまう可能性もあり、最初から一緒に活動するのは千載一遇のチャンスを逃すきっかけになるかもしれません。ターゲットが確認できてからの共同行動が望ましいと思いますが、どうでしょうか」
    「確かに危険な場所なので、監視追跡は直ちに開始し、彼女が目的を達成できた時に彼女とターゲットの身柄を保護します。その前に我々が顔を出すのは、情報提供者の心情を考えると、おっしゃる通りのリスクは考慮すべきだと考えます。
    また現地では、彼女の協力は得られないかもしれませんが、入手した情報を直ちに頂けるとありがたいです。長官は既に大統領に報告をしているはずですので、次の指針を描ける情報はできるだけ早く入手したい。」
    「カレンと相談して、その方向で協力します。」

    早い方が良いと、ボストンに帰るシャトル出発前にケントはカレンに電話で、CIAとの話を報告、またカレンからメアリーとのロシア・ツアーの進捗概要を報告した。それは、メアリーがカレンのアパートから帰宅した直後であった。

    「カレン、そのメアリーってすごいね、テッド教授は全く信じられない知人をお持ちだ。」
    「私も、びっくり。未知の世界へ1人で突入と思っていたので、本当に心の負担がほとんど消えたの。気持ちの良い方で、話が1言1ことはっきりしていて、なんか兵隊さんみたいだった。ケントが用意してくれる通信デバイスとか、護身用の拳銃とかについて、あまり時間はないと思うので早めにお願いします。メアリーから国連との調整で日程が決まったらすぐにメールします。またCIAのエージェントの「情報が得られるまで顔を出さない」というCIAの合意はとてもありがたいわ。ケントがCIAとそこまで詰めていただけたなら、万が一の時にこちらからCIAに連絡する方法も確認しておいてもらえる?」
    「そうだね、君の話をしてよいかどうかも迷ったので、そこまで気が回らなかった。明日、れんらくする。」

    <次記事等へのリンク>
    第9章 出発、ワルシャワのUN(国連)支部
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    saito

     
     
    1972年慶應義塾大学大学院修士課程修了。商用インターネット等通信事業開発。交換機開発で前島密賞等受賞。 金沢工業大学大学院客員教授、慶應義塾大学SFC研究所上級研究員、湘南ビーチFM局CEO、FM軽井沢局長などを歴任。 2020年より好奇心や意識をテーマにした執筆活動を推進中。

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