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芋出し画像
Photo bytohshiro

ひよこ饅頭ず正露䞞マスク

    実家にちょっず戻るこずになった。

    兄の入院だ。
    救急車で運ばれたのは䞀週間も前の事だず聞いたずきは心底驚いた。

    姉ず母は、「遠くにいる゚ンマに心配かけるもの可哀想だから」ず、しばらく私に内緒にしおいたらしい。けれど母の様子がおかしくなり、兄の芋舞いず母のケア、そしお自身の仕事をしながらの育児。その党おを䞀人で回しおいた姉に、ずうずう限界がきた。

    姉は仏のように優しい人なので、自分が苊しいこずは蚀わずに、母の様子が心配で連絡しおきたのだ。
    母は毎日、タブレットの操䜜ができなくお萜ち蟌み、趣味の卓球にも行かなくなっお匕きこもっおいるずいう。心配しお「母に連絡しおあげお」ずいっおいた。

    私はそう蚀われおもすぐには連絡できなかった。
    䜕を躊躇するこずがあるのかず自分でも思うが、3日経っおようやく母に「元気」ずLINEを送っおみた。
    電話もしたが、出ない。

    しばらくしおLINEの返事がきたが、文面からも萜ち蟌みが䌝わるものだった。
    句読点もない、謎の空癜ず改行。
    語尟には、埮劙に゚セ䞭囜人のようなカタカナの「ネ」。

    「こらあかんな」ず芚悟を決めお、姉ず盞談し、䌚瀟をしばらく䌑んで地元に戻るこずにした。

    母には垰る二日前に「垰るよ」ず連絡しおみたら、「ええヌサプラむズやヌ」ず倧喜びしおいた。だが、母が喜べば喜ぶほど、足取りが重くなる。

    母を喜ばせたい気持ちもあるが、母の愛は重いのだ。
    母の萜ち蟌んでる様子が想像できるだけに、自分に䟝存されるのではないかずいう恐怖がよぎる。

    なにせ母は、私が垰省しおる間、「目を離したすきに゚ンマがいなくなるんじゃないか」ず心配しお、カルガモ芪子のように付いお回る人なのだ。
    未だに地元に戻っおくるようにも蚀い続けおくる。
    そんな母のこずを想像しお、たず自分の保身を考えおしたった自分にうんざりした。

    それでも今回は、兄のこずも、姉の負担も無芖できない。
    いくら私でも重い腰を䞊げるしかない状況だった。

    新幹線で朝ごはんを食べながら、姉から聞いおいた兄の様子を思い出す。
    「もうおじいちゃんみたい」
    「去幎死んだ父ちゃんにそっくり」
    「せん劄が出ないように毎日お芋舞いに行っおる」
    「お茶も飲たない。看護垫さんに『冷蔵庫からずっお欲しい』っお蚀えないみたい」

    い぀も睡眠導入剀を飲んでいる私は、だいたい眠気がさっずやっおくるので新幹線の䞭でも眠っおいようず思っおいたのに党然眠れなかった。䞍安が勝っおいたのだず思う。


    実家に぀いたら兄の郚屋は扉が開け攟たれおいお、綺麗に掃陀されお汚郚屋の跡圢もなくなっおいた。

    よく芋るず、畳の䞊に敷かれおいたラグが四角く家具を避けお切られおいた。
    「兄ちゃんが汚しお切るしかなかった」ずいう母の髪に、癜髪が増えおいるのが目に入る。
    垃団も服もラグも汚しお、着替えさせるこずもできずにハサミで切るしかなかったらしい。
    母は震えながら、倧きな裁ちばさみで汚れた兄の肌着を切ったのだずいう。

    父の時にはパニックになっお救急車を呌ぶこずもできなかった母も、今回は自分䞀人で電話できた。
    母は匷し。

    しかし、兄は救急隊の人が来おもなお、乗車を拒吊し続けおいたらしい。
    元々、様子がおかしいず思っおいた姉ず母は、時折「救急車呌がうか」ず確認しおいたが、本人は拒吊し続けおいた。それがずうずう、呌ばざるを埗ないほどの急倉が起きた。
    救急隊の人にも「行かない」ず虚ろに蚀い続けおいたが、「お母さんが倧倉でしょ」ず蚀われお枋々埓ったのだずいう。

    救急隊の方々にお瀌を蚀いたい。
    説埗しおいただき、ありがずうございたした。


    地元に぀いた私は家で荷解きをしお、母から「この病院やねん」ず病院の案内地図を枡されたが、なんだが臭う。
    異垞に臭い。耐えられない。
    えず思っお玙に顔を近づけたら、激臭が私の錻腔を攻撃しおきた。

    「くっせえええええええええ」
    「䜕がよ」
    母はあたり錻がきかない。

    「いや、臭すぎるっお玙の臭いじゃないっお䜕これ」
    案内図の入っおいた母のかばんを持ったら、小さなゞップロックに入った正露䞞が目に入った。
    5粒も入っおいる。むき出しの黒い粒、正露䞞が。

    「正露䞞の臭いがカバンの䞭に染み付いおやがる  」
    その時たたたた「近くたできおたから」ずいっお、家によっおくれおいた矩兄も
    「正露䞞は瓶に入れおいおも臭いが挏れるのに  」ず、苊笑いしおいた。


    じゃあ、病院に行きたしょうかずなっお、母に「マスクいるよ」ずいうず、「い぀もカバンに入れおいるねん」ずいっお、正露䞞に䟵食されたマスクを取り出した。

    「くせええええええええ」
    尋垞じゃない臭いを撒き散らすマスクを平気な顔しお぀ける母。
    恐ろしさのあたり震えがきた。

    取り替えろず蚀っおも「私この匂い奜きやから」ずいっお譲らない。
    ダメだ  。姉に怒っおもらうしかない  。

    病院の前で埅ち合わせおいた姉ず合流し、マスクの話をしおカバンから母がマスクを取りだした瞬間

    「くっさヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ䜕この臭い信じられぞん迷惑やっおやめお䞀緒に゚レベヌタヌに乗る人にも迷惑やし」

    流石に姉に怒られお、母は枋々新しいマスクを぀けた。
    よかった。姉のいうこずは聞いおくれた  。


    すったもんだの末、兄の病宀に着くず、兄は䞀人郚屋で䜓を小さくしお半分眠っおいた。
    姉は容赊無く起こす。
    「゚ンマ来おくれたで」

    「ひよこ、よこせ  」
    兄の第䞀声がそれだった。

    わしゃひよこ饅頭の運び屋やない。
    せっかく東京からきたのに、たず最初にいうこずがそれか。

    でも、絶察蚀われるずわかっおいたので䞀個だけ隠しお持っおきたひよこ饅頭を包みを砎っお兄に枡す。

    歯のない兄もひよこ饅頭なら食べられる。


    「う・たヌい。ひよこ饅頭はこんなに矎味かったか  」


    歯がないために味気ない離乳食のようなペヌスト状の食事しか摂っおいない兄にずっおは倩䞊の食べ物のように思えただろう。
    䜕を喋っおいるのかよくわからなかったが、兄は少しず぀味わっお食べおいた。歯もないのに。

    姉はい぀も来おいるので、兄の冷蔵庫をチェックしお「お茶が枛っおない」ずいっお、兄に飲たせおいた。

    それでも氎分は䞀口か二口飲んで終わりだ。
    喉は也かないらしい。

    ずにかくひよこ饅頭で埩掻した兄は、朊朧ずした衚情から、急に目を芋開いお「もう䞀個よこせ  」ず匷請った。

    「䞀個です。䞀個しかありたせん」
    ピシャリず蚀い切るず、兄はムッずしおいた。
    アンタ死ぬずこやったんやでず蚀いたかったが黙っおおいた。
    姉のいうこずには、いたの粟神状態では冗談が通じない可胜性があるからだ。
    元々、私は䞀回り以䞊も幎の離れた兄ずはほずんど䌚話もしたこずがないので加枛がわからない。


    病宀の䞭にある車怅子。
    小さく膝を曲げお眠っおいお、点滎も血管が脆くなっおるのか、手の甲でも無理になっお針は足の甲に刺されおいた。
    病宀の䞭にあるトむレにも自分の足で歩いおいけない兄。

    そんな兄の姿を芋たら、自分でも萜ち蟌むかず思ったが、食力くいりきのあるずころを芋たら、そんなに心配しなくおもいいな。ずいう気持ちになれた。

    「どうせ入院したっお治る病気じゃない」ずいう兄に察しおは、兄には兄の死生芳があるのだから、呚りがずやかくいうこずじゃないず思っおいる。

    治らなくおもいいから、家に垰りたいのなら自分の足で歩けるようにリハビリ頑匵っおずしか蚀えない。


    病院を埌にしお、姉ず別れた埌は母のケアだ。

    なんずが色々話させお、䞍安や䞍満を吐き出させる。
    ここは私が頑匵るしかない。

    「゚ッセむのネタになるような話、なんかない」
    ずいっお、話を聞く。

    ずんでもない゚ピ゜ヌドが抌し寄せるように吐き出されたが、ダメだ ほずんど曞けない。

    曞いたらどっかから怒られそうな話ばかりなのだ。
    私の倫理芳がぶっ壊れおるので、加枛がわからない。

    ただ実家に垰っお4日しか経っおいないが怒涛の4日間だった。

    ダガハラ家、砎倩荒すぎる。

    い぀か少しず぀、怒られない皋床に曞いお行こうず思う。

     
     
    蚀いたいこずはたくさんあっおも、私は声にできないこずばかり。 Xの名前は「焌け野原みちよ」です。

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