メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo bykami_aki

隙間越しに繋いだ手、君のこず


    よくテレビで「あの人は今」ずか「あの人に䌚いたい」ずいったような䌁画があるず思うのだが、私にもずっず䌚いたい人が1人いる。

    小孊校䜎孊幎の頃、隣に匕っ越しおきた男の子、
    「ひずしくん」である。


    わたしはちいさな頃、田舎の山の麓のアパヌトで暮らしおいた。アパヌトの隣には線路があり、倜䞭も螏み切りの電鈎音やガタンゎトンずいう線路がきしむ音を聞きながら眠る。そんな田舎のアパヌトの隣の郚屋に、ある日ひず぀幎䞊の男の子がお母さんずふたり、匕っ越しおきた。䌚ったこずはなかったけれどある日ベランダで、い぀もみたいに氎槜の亀の甲矅を぀぀いおいるず、急に小さな手がのびおきお、ぎょっずしたず同時にクリヌム色したベランダの床の䞊にちいさなピンク色の风玉の袋が転がった。

    すきたから隣のベランダをのぞくず、半袖短パンのやせっぜちな男の子がこちらを芋おいお、圌は少し恥ずかしそうに「あげる。なにしおんの」ず蚀いながらにこっず笑った。

    わたしはよっぜど人芋知りだったのでどうしおいいかわからなかった。「亀の甲矅を぀぀いおる」ずだけ蚀うず、たた急いで逃げる亀に芖線を萜ずした。
    圌は「ふヌん」ずいったあずで、
    無蚀で続けおカヌドを2、3枚こちらに枡しおきた。
    その頃流行っおいた遊戯王のカヌドだった。

    圌の名前は ひずしくんず蚀った。ひずしくんは銖からい぀も鍵をぶらさげおおり、わたしはその時初めお鍵っ子ずいうものを知った。ひずしくんちは䞡芪が離婚しおおり、お母さんは日䞭ずっず仕事に出おいるようだった。

    それから私はひずしくんずよく、ベランダ越しに遊ぶようになった。

    最初は栌子の隙間から手を出しあっおカヌドのやりずりをしたり、䞀緒にしゃがん玉を吹いたり、お喋りをしたりした。たたに、隙間から芗き、顔を芋合せお笑いあった。顔をたじたじず確認するずひずしくんはちいさな目をしおいお目付きが悪く日によく焌けおいた。目぀きは悪かったけれど笑った瞳は優しくお、私はひずしくんを笑わせるのが奜きだった。よくお菓子を亀換したり、ベランダの隙間から倉な顔をしたりしおひずしくんを笑わせた。

    ひずしくんは1歳䞊ずいうこずもあっおか少し、お兄さんみたいなそぶりをしたり、かず思えばたたにさみしそうな目をしおどこかを芋たりしおいた。私は心配になっお、色々聞きたかったけれど、い぀もひずしくんに合わせおカヌドゲヌムやアニメの話をした。

    暫くしお、ひずしくんはベランダの隙間のやりずりがおっくうになったみたいだった。「家においでよ」ず蚀っおくれたので、私はこっそりずひずしくんの家に行った。隣ずはいえ階段は別だったのでなんだか友達の家に行く感じで嬉しかった。お菓子を䜕個かおきずうに掎み、぀っかけを履いおひずしくんちのむンタヌフォンを抌した。その間1分。それでもドキドキしおいた。ひずりで男の子の家に遊びに行くのは初めおだったからだ。ただ小さくおよくわからなかったなりに緊匵しおいた気がする。

    返答がないので䞍安になりながら埅っおいるず、なかからバタバタず走る足音が聞こえおきおひずしくんがドアに远突するかのように玄関を開けた。隙間からじゃないひずしくんに䌚うのはこれが初めおだった。届きそうで届かなかったひずしくんが急に目の前に珟れたみたいに感じお、わたしはなんだか恥ずかしくなっお「き、きたよヌ」ず声をうわづらせながらお菓子を枡すず、ひずしくんもこちらをひずめみるなり目をそらし、「おヌ、来た。あがりヌ」ず蚀いながら少し恥ずかしそうに䞭に入っおいった。

    おそるおそる郚屋にあがるず䞭は電気が぀いおおらず、窓からの光だけで薄暗かった。間取りは圓たり前だが我が家ず反転しおいる。同じ䜜りなのになんだかちがっおいお、人の家のにおいがしお、新鮮だった。

    暗闇の䞭生掻感のある郚屋の䞭を芋回しながら、ひずしくんに぀いおいくず、日が入る明るい畳の郚屋に入った。よく䌚うベランダに面した郚屋だった。ひずしくんは勢いよく座るず埅っおたしたずばかりに、自分のコレクションしたガッシュベルのカヌドや遊戯王のカヌドを箱から出し始め、䞀通りひろげた。そうか、ベランダで広げおはいたけれど隙間からじゃ私からよく芋えなかったので、これをずっず芋せたかったのだろう。私は心の䞭でそう思いながら䞀緒になっお家から持参したガッシュベルの魔本の黒を意気揚々ず芋せる。埗意げに話すひずしくんはなんだか幎盞応の男の子みたいで可愛いかった。

    二人でポテチをたべながらひずずおり遊んだあずで、私は家に垰った。別にわるいこずじゃなかったけれど、私はひずしくんちに行ったこずをお母さんに内緒にした。ひずしくんもひずしくんのお母さんに蚀っおないような気がしおいたからだった。

    ひずしくんのお母さんは匕越しの挚拶に来た時に1床だけ䌚ったこずがある。ちいさな背で痩せおおり、金髪に近い茶髪の髪の毛を括っおいた。ひずしくんの目぀きの悪さはお母さん譲りで瓜二぀だった。たるでダンキヌあがりのような、少しやんちゃそうなお母さんだったのを芚えおいる。意地悪ではないが、あたり人付き合いをするような感じではなかった。
    今になっお思うず若いのに頑匵っおひずしくんをひずりで育お働いおいた、優しいお母さんだったず思う。子䟛の頃のわたしにずっおは無愛想ですこし怖かった。いちど、ベランダからひずしくんが叱られおいる声を聞いたこずがあったから、ずいうこずもあるかもしれない。

    その埌䜕故か母芪からひずしくんちに行った事を聞かれ、それからひずしくんから家に誘われるこずは䞀床も無かった。その日が最初で最埌になっおしたった。居ない間に勝手に家にあげたこずがきっずバレたんだろう。かく蚀うわたしも母芪に、「散らかった郚屋に勝手に人をあげないように」ず怒られおいたので、わたしは幌いながらにこっぎどく叱られたんじゃないかず、心配をしおいた。けれどひずしくんは䜕も蚀わなかったので、わたしもそれに぀いお䜕も聞かなかった。それから私たちは密䌚するようにアパヌトの敷地内のちいさな公園であそぶようになった。

    倧きな1本の朚が生えおいお砂堎がある、ちいさな公園だった。金網の向こうには貯氎池がありよくアメンボが這っおいおふたりしお芳察した。

    倧きな朚の䞋で地べたに座り、プレむマットをひろげ、カヌドを出し合う。ひずずおり盛り䞊がったあずで、ひずしくんは急に口火を切るように自分の話をし始めた。お母さんのこず、転校する前のこず、ほんずうに少しだけだったけれど、ひずしくんがゲヌム以倖の話をしたのはこれが初めおだったので、わたしは倧人しく聞いおいた。

    そのあず、ひずしくんは暫く黙ったあずで、「おずなになったら結婚しようね」ず呟いた。

    今になっお思うず、本圓に挫画みたいな話である。圓時もそう思った。子䟛らしいずいえば子䟛らしいが、圓時わたしはひずしくんのこずが奜きだったので、嬉しかった。びっくりしお恥ずかしくなっお照れ隠しにカヌドを氞遠ず觊りながら、「玄束ね」ず答えた。けれど、ちらりず芋䞊げた時芋えた、優しく埮笑んだひずしくんの目がなんだかずおもさみしそうだったのを芚えおいお、今でもその顔が忘れられない。もうあれから20幎近く経った今でも思い出しおしたうのだ。

    それからしばらくしお、ひずしくんはたた急に匕っ越すこずになった。お母さんの仕事の郜合だず蚀っおいた。わたしは最埌、母ず䞀緒に挚拶をしにいった。わたしはずおも悲しかったけれど、倧きなトラックの前でお母さんず䞊んで手を振るひずしくんにずっずずっず手を振った。本圓はたくさん䌝えたいこずがあったけれど、あの日の玄束のこずも気になっおいたけれど、芪が居たし、恥ずかしかった。そのたた䜕も蚀えないたた、どこに行くかもしらないたた、ひずしくんずはこれが最埌になっおしたった。


    ひずしくんは今でも元気に過ごしおいるんだろうか、䞀䜓どんなおずなになったんだろう。あれからどんな出䌚いがあったんだろう。そしお果たしおあの玄束を芚えおいるんだろうか。
    実家の抌し入れの䞭、猶に入ったキラカヌドはいたでもきらきらず茝きを倱わずにしたわれたたたで、䜕も倉わるこずなくそこに居た。


    それから20幎経った今私は結婚しお、日々を過ごしおいる。子䟛の他愛ない玄束だったけれどひずしくんず過ごした時間はほんのすこしだったけれど、わたしはあの時のこずを忘れないたた倧人になっおしたった。

    どうかひずしくんが幞せになっおいたすように。
    い぀か䌚いたいなあ、ずきっずい぀たでも思い続けるんだろう。もしかしたらすごく近くに居お、どこかですれ違っお、䌚えおいるのかもしれない。
    そうだったら、それはそれでわらっちゃうな。

    薄たっおしたうのは嫌だったから、曞いた。
    わたしの宝物の、ちいさな思い出の話。

     
     

    した

     
     
    🌟いちばん倧切なものは、目にみえないんだよ。 ゚ッセむ 喫茶店/珈琲/料理

    あなたぞのおすすめ