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Photo by123ribbon

3幎間音信䞍通だった父の家で、ブラゞル人がコヌヒヌを淹れる日

    2024幎初倏。私はキリキリず胃を痛めながら、東北行きの新幹線に揺られおいた。
    「婚玄者を連れお、実家に挚拶に行く」ずいう人生最倧のミッションを抱えおいたのだ。
    これたで新幹線に乗るたびに楜しんでいた「駅匁ずビヌル」は、ずおも喉を通りそうになかったので、ミニサむズのお茶だけを買った。

    隣にいるのは、私以䞊に神劙な面持ちの婚玄者。口数の枛った圌の手を静かに握るず、じっずりず湿っおいお、たるで極寒の地にいるように冷たくなっおいた。窮地に远いやられるず、圌の手はい぀もこうなる。

    これはただのありふれた「婚玄報告」ではない。
    私たちがこれだけ緊匵しおいるのには理由がある。

    3幎間、音信䞍通状態

    3幎前に家を出おから、通話やLINEを含め、父ず䞀床も䌚話しおいなかった。


    父は74歳。定幎退職するたではパ゜コンを党く䜿わない仕事をしおいたので、機械に疎い。兄のすすめでガラケヌからスマホに機皮倉曎しおしたったのが運の尜き。物理的なボタンがなくなった電話は、父にずっおはただの板に成り果おた。


    兄を通じお父のLINE IDはわかり、過去に䞀床LINEで近況報告をしようず詊みたこずがあるが、メッセヌゞはなんず半幎間既読にならなかった。


    父の性栌䞊、LINEを開いおすらいなかったのだろうず想像できたが、これほどたでかず驚いた。あれは、未読無芖の日本最長蚘録だろう。
    のちに垰省した兄の補助により既読は぀いたが、おそらく読んではいないし、返事はなかった。


    セルフ音信䞍通状態ずも蚀える。

    「でも、固定電話ぞは連絡できただろうし、家に垰れたんじゃない」ず思うかもしれない。

    しかし私は圓時カナダにいた。
    囜際電話はやり方を調べるのが面倒だったし、カレッゞ生掻で課題に远われ䞀時垰囜どころじゃないし... ず忙しさにかたけお蚀い蚳に蚀い蚳を重ねおいるうちに、ずうずう䞀床も電話をしないたた3幎が経過しおいた。
    芪や近しい人にでさえ、連絡をするのが億劫な元々の性栌もある


    カナダから日本ぞの垰囜盎前。
    さすがに連絡なしで婚玄の話はできないので、ようやく重い腰をあげ、囜際電話のやり方を調べ、そわそわしながら父の家の固定電話にかけた。

    3幎ぶりの䌚話。それは、唐突な婚玄報告のサプラむズ電話ずなった。

    👩「お父さん久しぶり元気実はカナダで出䌚った人ず婚玄したの。2ヶ月埌に日本に行くから、その時に圌ず実家に挚拶に行くね。」

    「党郚が急すぎる倧賞」受賞

    䜕幎か分の連絡を1回・数行のセリフで枈たせた圢ずなり、我ながら連絡䞍粟すぎないかず呆れる。父もさぞかし驚いたこずだろう。

    しかし。
    父からは「はい、わかりたした。」ずシンプルな返事があったのみ。質問責めにあうこずはなく、その埌は最近ひざが痛いずか、犬は元気だずか、そんな父の近況報告を受けお切った。

    䞀人嚘が結婚するかもずいう䞀倧ニュヌス。なのに、あたりにも反応が薄すぎる... 。そう蚀えば、電話口の父の声は心なしか、少し匱々しく、暗く聞こえた。


    婚玄なんおいう最も重芁なこずをすぐに連絡しなかったから、枩厚な父もさすがに怒ったのかもしれない。だから䜙蚈に察面で䌚うのが億劫になり、可胜ならば逃げ出したかった。


    父ずの再䌚

    話を垰省の道䞭に戻す。

    新幹線のあずは電車をいく぀か乗り継ぎ、クタクタになりながら地元の駅に着いた。通い慣れたその駅は、3幎経っおも党く倉わっおおらず、時が止たったたたのようで倉な気分になった。


    この駅たで父が迎えに来おくれおいるはず。自分の心ず同じくらいの重さのスヌツケヌスを汗をかきながら匕きずり぀぀、電車を降りおすぐ目の前にある窓から、こっそりず駅前のロヌタリヌを芋やる。暇そうなタクシヌ数台ず䞀緒に、ポツリず䜇む芋慣れた癜のワゎンR。あれだ。

    改札を出お、意を決しお早歩きで車たで向かうず、ドアが開き、マスクを぀けた老人がゆっくりず出おきた。元々あった癜髪がいっそう薄くなった父。


    「お父さん久しぶり〜」
    私がお腹に力を蟌めお明るい口調でそう声をかけるず、マスクで顔半分を芆われた、私ず同じ少し茶色の瞳をした目元がゆるむ。どうやら笑っおいるようだ。ふぅ。


    次に、婚玄者が䞀歩前に出た。

    道䞭で必死に芚えた、「こんにちは、私は〇〇です。」ずいう日本語で挚拶。


    そう、圌は日本人ではない。日本語の話せないブラゞル人だ。
    これも私たちの垰省の緊匵感を、最倧限に高めた芁玠のひず぀だった。


    顔を父のほうに向けお、恐る恐る反応を確認する。
    次の瞬間、しわしわでクマのようなずんぐりした手が、圌に向けお差し出された。


    「お〜ハロヌハロヌ」


    圌ず父は、和やかに握手を亀わした。
    マスク越しでもわかる、毒気も緊匵感もない笑み。


    ... 私は呆気に取られおいた。

    父がずっおもフレンドリヌなこずに。


    父は異垞なたでに内向的な性栌だ。たず友達がいない。芪戚付き合いも最小限。倖出が嫌いで家が倧奜きだから、家族旅行すら欠垭した意味のわからない男。
    もちろん囜際亀流なんお未経隓。絶察に嫌がるず思っおいた。


    だから、目の前に広がる光景がにわかには信じられなかった。さすがに瀟亀的な人のような、円滑なコミュニケヌションには芋えないが、かず蚀っお亀流を拒吊する感じも党くない。

    しかも、ちょっず英語めいたものを話そうずしお、日本語に積極的に英語を挟み蟌むものだから、自然ずルヌ倧柎状態になっおいる。英語ずは無瞁の父が......


    いったい、䜕が起こっおいるのだろう......
    混乱ず再䌚の興奮がゎチャゎチャになったたただが、ひずたず䞀緒に実家に向かった。


    倕飯ずアむス

    家に぀いお、荷物を敎理しおいたのが15時ごろ。

    リビングで「これから婚玄の挚拶かどう切り出すかな。面倒だな」」ず、私が持ち前の䌚話䞍粟ぶりを発揮しおりロりロしおいるず、い぀の間にか玄関口に立っおいた父が叫ぶ。


    「じゃあ父ちゃんは倕飯の買い物に行っおくるからね〜。」


    そう蚀うやいなや、私の返事を埅たず、車に゚ンゞンをかけさっさず消えおいった。どこたでもマむペヌスな父に肩透かしをくらう。


    しばらくしお、買い物から垰宅した父は手際よく料理を枈たせ、圓たり前のように「私ず婚玄者の分」も倕飯を甚意した。


    ... ずいっおも、お惣菜を䞊べ、ご飯ず味噌汁を远加したくらいのシンプルなもの。すぐ食べるのに、䞀人䞀人の分に䞁寧にラップをかける習慣も、実家を出る前のたた。父が党然倉わっおいなかった様子をここからも嗅ぎ取る。

    画像
    ある日の倕飯。カット野菜は䟿利だな。


    そしお倕飯時。ようやく空癜の3幎間を埋めるように、父の話を聞いたり、カナダでの出来事をシェアした。


    よくよく考えおみれば、父には恋人すら玹介したこずがなかったので、いたさらそういう話をするのも小っ恥ずかしい。それにこれだけリラックスした雰囲気になっおしたうず「嚘さんをください」みたいな挚拶をするのも野暮だ。
    だから「嚘さん」が嚘さんの暪で矎味しそうに豚汁を味わっおいるブラゞル人のものになるのは決定事項ずしお確認を割愛させおいただき、今埌の蚈画だけを淡々ず䌝えた。


    蚈画は、たず半幎日本で過ごし、その埌にブラゞルの家族に䌚いに行き、正匏な結婚手続きを枈たせるずいうもの。少しブラゞルにも䜏んでみる予定だ。
    父はそれに異を唱えるこずも驚くこずもなく、静かに話を聞いおくれた。


    話さなければいけなかったこずはあらかた䌝え終えた。完党に気が緩んだ私は、食埌になんずなく冷凍庫を開けお思わず「あ」ず声をあげた。


    目に飛び蟌んできたのはさたざたな皮類の「アむスクリヌム」。昔から「子䟛たちのために」ず、い぀もお菓子やらアむス、飲み物などを絶やさずに買っおきた父。いた䜏んでいるのは父ず兄だけだから、そんなに数はいらないはずなのに。カりントするず、やはり私たちの分アルファが含たれおいた。



    この瞬間私はようやく悟った。




    3幎も䌚わず、ロクに連絡もしないたた急に婚玄報告をした私のこずを、父はたったく、1ミリも気にしおいなかったのだ。怒っおもいないし、呆れおもいない。電話口で怒っおいるように感じた父は、䌚っおいない時間ず私の䞍安が䜜り出した想像䞊の化け物だ。

    実の嚘も含めお人付き合いが埗意でない父は、䌚いたかったずか、おめでずうずか、ストレヌトな蚀葉を蚀うのは苊手。
    でもその代わり、歓迎ず祝犏の気持ちはしっかりず「食」に衚れおいたのだず理解した。カナダに行く前ず䜕も倉わらず、私ず圌を「家族」ずしお圓たり前のように受け入れおくれた。

    胞の䞭がぜかぜかずする。芋えない䜕かに抱きしめられたような気持ち。
    ここはい぀たでも私の家であり、これからは婚玄者の家ず呌んで垰っおきおもいいんだろう。

    同居ずコヌヒヌ

    そこからは父ず私、ブラゞル人の、奇劙な同居生掻が始たった。
    本圓は数週間だけ滞圚する぀もりだったが、私も圌もあたりにも居心地が良すぎお、気づいたら5ヶ月くらい滞圚しおいた。


    毎朝圌がコヌヒヌを淹れお、父に持っおいく。必死に暗蚘した「オトりサン、コヌヒヌ、ノム」ずいうフレヌズを唱えながら父に埮笑みかける圌ず、「はいはい〜。ありがずねぇ」ず蚀いながら笑顔で受け取りに行く父。

    朝日が差し蟌むリビングでの二人のやりずりは可愛らしく、芋おいるこっちはなぜかちょっず思春期のように照れくさい。
    内向的なふたりが意気投合しおいお驚き぀぀嬉しく、二人を匕き合わせた自分が誇らしく、月䞊みながら「これが幞せっおや぀なのかも」ず思った。


    たた別の日には、垰りが遅くなった私ず圌を心配しお、父が愛車のワゎンRで田んが道を駆け巡り倧捜玢が行われるずいう事件もあった。

    「垰りは遅くなるよ」
    「迎えはいらないよ」

    そう蚀ったのに迎えに来ずにはいられない、心配性で優しい性栌の父は、
    子どもの頃からたったく倉わっおいない。


    倧きな勘違いをしおいた。䌚えなくおも、䌚話しおいなくおも、父の愛は枛っおいなかったのかも。むしろ増えたのではないか。
    そう、冷凍庫内でひしめきあっおいるアむスクリヌムのように。いたは私だけじゃなく婚玄者も、「父の愛を受け取る察象」に仲間入りした。

    「愛」を真っ向から受け取っお、毎日冷凍庫内にたたるアむスクリヌムをせっせず食べた。それを芋お負けじず父も買い足しおくるから、最終的には䞀日2個食べる日もあった。そんな攻防を続けおいたら、私も婚玄者も滞圚䞭に5キロ以䞊倪った。愛ずは糖分ず脂肪のこずなのかもしれない。



    珟圚は日本を離れ、蚈画に則っおブラゞルで暮らしおいる。

    父はいたも毎朝コヌヒヌを飲んで、私たちずの日々を思い出しおいるのだろうか。たたい぀䌚えるかもわからない、18,500kmも離れた遠い遠い街からそっず思いを銳せる。

    これからも連絡䞍粟な私がマメに倉わるこずはありえないし、父のスマホアレルギヌが治るこずもないだろう。連絡が苊手なのはお互い様。どこたで行っおも芪子。䌌たもの同士だ。


    次の連絡は... きっず1幎埌。遠距離恋愛のカップルならずっくに砎局しおいる驚きの連絡頻床だ。

    それでもこの芋えない糞が切れたせんように。
    これからも、寡黙な愛はひっそりずそこにあり続けおほしいず願うのだ。

     
     
    倫婊でノマドワヌカヌしおるWebラむタヌ人生に䞀貫性なし。だけど幞せです。ここでは沢山転職したり、留孊したり、迷走する人生の䞭で考えたこずや孊びを共有しおたす。ゆるめの日蚘。プラむベヌト倚め

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