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Flovaはクレジット・ドレイン!?

ラッパーはどこを見ているのだろう。AIの未来、ユーザーメリット、それともお金?

一ヶ月ぶりにFlovaでミュージックビデオ制作している。前回、「Smash the Pink」を作るためにFlovaを導入し、時間こそかかるものの、AIディレクターのメリットを享受できた。楽曲にそってコンテを自動生成し、各シーンのキーフレームと動画を粛々と作成してくれる。また、圧倒的なFlovaの強みもある。

それはチャット形式による動画生成だ。

静止画はChatGPTもGeminiもチャット形式で生成できる。チャット形式だと、「ここを直して」「あそこをもう少し」という具合に、指示を積み上げながら完成にもっていける。ただ、動画生成に関しては、SoraもVeoもKlingも、チャット形式のインターフェイスを備えていない。いわゆるプロンプト一発勝負だ。しかしFlovaなら、LLM経由で動画生成エンジンに指示を出し、柔軟な動画生成が可能だ。これはFlovaを使う大きな動機となっていた。そんな具合に惚れ込んでいたFlovaだが、一ヶ月ぶりに開いたらひどい有様だった。

リテイク過剰でぜんぜん前に進めない。

Flovaはまずキーフレーム(静止画)を作り、その後キーフレームから動画を生成する。これは昨今の一般的な動画生成のアプローチだ。僕が自力で動画生成する際も、GPTImage1.5(ChatGPT)かNano Banana 2(Gemini)で静止画を作り、それをVeoやKlingに読ませ、いわゆるImage to Videoで動画生成している。一見すると二度手間っぽいが、現在では主流のアプローチだ。

問題は、静止画にせよ動画にせよ、Flovaで作業するとやたらとリテイクを強いられるのだ。1度でOKカットが出てくることはほぼなく、1度目の生成物を叩き台に、そこから修正を加えていく。ところが「白いブーツを膝上丈にして」と指示を出しても、ブーツ丈は変わらずに別の箇所が変化してしまう。

驚くほど指示が通らない。

静止画で5~6回、動画で5~6回、1シーンで10回以上のリテイクが頻発する。一ヶ月前にFlovaを使ったときは、静止画と動画を合わせても3~5回ぐらいのリテイクで済んでいた。当然その間、どんどんクレジットが目減りしていき、追加でクレジットを購入する。根っからのAI課金戦士なのでお金のことは目をつむるが、そのリテイク内容がひどい。以下は今回のリテイクの一例だ。FlovaがNano Banana Proに指示を出し、生成する様子である。

画面下のサムネイルがリテイクした生成物だ。指示内容は「バイクが水溜まりを走り抜けるシーンをローアングルで。バイクに乗る少女は赤いミニスカートをはき、足元は膝上丈の白いロングブーツ」というもの。これをFlovaがNano Banana Proに指示を出す。
これが1枚目の画像。ミニスカート設定なので、このアングルだとスカートが映り込み過ぎ。白いブーツが普通のロング丈。これを膝上丈に直したい。
「スカートが映らないように。ブーツを膝上丈に」という指示で生成されたのがこれ。女性がバイクから降りてしまった。おそらく膝上丈のブーツにしたことを強調しているのだろうが、シーンとして意味をなさない。
「女性はバイクにまたがっている」と修正指示を出した結果がこれ。2026年3月現在、まるでAI黎明期のようなトンデモ画像と再会できるとは。これ、Nano Banana Proなんだぜ。逆に貴重かも。
「ちゃんとフツーにまたがって」とお願いしたら、たしかにまたがった。でも、そもそもバイクが水溜まりを走り抜ける設定なので、両足着いてしまったらダメじゃん。
ようやく足をバイクのステップに乗せてくれた。白いブーツは膝“下”丈だけど、もうこれ以上さわりたくない。

実際には9枚の画像を生成したが、そこから5枚だけ並べてみた。いまどきの画像生成エンジンとは思えぬ乱れっぷりだ。一ヶ月前にFlovaで作業したときにこれほどのリテイクはなかった。僕はFlovaをBasicというクラスでサブスク契約しているが、GPTImage1.5、Nano Banana 2、Veo3.1、Kling3.0といった最新の生成エンジンが使える。どれも優秀なAIたちだ。

こんな低レベルなリテイク連打になるはずがない。

僕は別途ChatGPT Pro、Google One、Kling Proにサブスクしていて、新しい生成エンジンを日頃から使っている。体感的にカジュアルな用途なら一発目の生成でいけるし、作品用途でも2~3回目でおおむね目的を達することが増えた。従来のような無限ガチャではなく、むしろ早い時点で完成度の高いものが生成され、それ以降の試行はディテールのバリエーションを見せるような展開が多い。

それなのに、Flovaの過剰なリテイク、これはどうしたことか?

Flovaで使うNano BananaやGPTImageが廉価版ということはあるまい。自ずと疑惑の目はFlovaのLLM(大規模言語モデル)に向かう。LLMはこちらの指示をちゃんと理解しているのか。プロンプトへの反映が甘いのではないか。実のところ、FlovaはLLMの素性を明らかにしていないが、言語インターフェイスとして不満を感じたことはない。使い手の意図をよく汲み取って作業を進めてくれる。生成時の英文プロンプトもざっと眺めたかぎりでは問題なさそうだ。こうなると、アレが脳裏をよぎる。

そう、ラッパーの闇だ。

ラッパー(Wrapper)とは、AI(生成エンジン)に独自インターフェイスを与えたAIツールのことだ。AIにインターフェイスという包み紙(Wrapper)を与えることからラッパーと呼ばれている。様々なAIのAPIを契約し、ひとつのインターフェイス上でユーザーに利用させる。旬のAIを単一インターフェイスで使えるのが強みだ。その多くはクレジット方式での課金を採用し、生成すればするほどお金がかかる仕組みになっている。まさにFlovaのことだ。

AIのモデルメーカーは精度向上こそが最大の目的だ。しかし、ラッパー事業者にとっては精度とクレジット消費の最適化が必ずしも同じ方向を向くとはかぎらない。極論すると、精度向上よりクレジット消費を優先したくなる誘惑はあるだろう。

仮に指示内容と似ても似つかぬ生成を繰り返せば、ユーザーはそのラッパーから離れてしまう。でも、「もうちょい」「惜しいなあ」という結果が続けば、人はいやがうえにも無限ガチャ状態に陥る。完璧な生成物を目指し、延々とリテイクを繰り返すことだろう。

Flovaのリテイク地獄は、このラッパー特有の問題を想起させる。

ユーザーの指示がプロンプト変換の過程で少しずつ取りこぼされていたら、どうなるだろう。もうひと息、惜しい、そんな生成物が連発され、何度もガチャを回すことになりはしないか。完成度の高い結果を提示するより、いまひとつを頻発したほうが金になる……。陰謀論めいた話だが、そこまで考えてしまうユーザーがいても不思議ではない。

一ヶ月前のFlovaと今のFlova、あまりにリテイクの回数に開きがあり、穿った見方もしたくなる。業界の一部界隈ではクレジット・ドレインという言葉があり、これは「クレジットを吸われ続ける感覚」を揶揄している。短期間の急激なクレジット消費に、業者の故意を疑う人が少なからずいるということだ。

ここにAI特有の無責任さが横たわる。

世の中の商取引は、商品にせよサービスにせよ、完成および完遂されたものに対価を払う。品物は完成品が対象であり(未完成を完成パッケージとする商品もしかり)、サービスも依頼内容の完遂に対して対価が支払われる。失敗すれば無報酬、もしくは最低限の手間賃しか得られない。ところがAIは、「所詮AIのやることですから間違いや失敗はご容赦を」がまかり通っている。クレジット方式のAIツールは、この失敗分すらユーザーに負担させているのが現状だ。

ここはきっと怒ってもいい。

Flovaに話を戻そう。Flovaの利点はチャットで動画生成できる点にあると前述した。見方を変えると、チャットで動画生成できる別の選択肢があれば、Flovaを使い続ける理由がなくなる。たとえば、ChatGPTのSora統合とか。ChatGPT上で動画生成エンジンのSoraに指示出しできるなら、言語リテラシーの高いチャットで緻密に動画生成できるはずだ。映像のディレクションもChatGPTで真似事はできる。Flovaの立場は一気に危うくなるだろう。

現在のラッパーはその多くが従量制(クレジット方式)の課金だが、定額制に踏み切るラッパーが現れたら状況は揺れる。一気にユーザーは定額制サービスに流れ、クレジット方式を見切るに違いない。

AI重課金戦士の僕からすると、お金よりも精度、である。リテイクを増やしてクレジットをじわじわ削るようなビジネスには付き合っていられない。お金がかかってもいいから、最新AIをフルパワーで使いたい。

もし、クレジット・ドレインが本当にあるなら、ラッパー業者はモデルメーカーのAI精度を毀損している。AIモデル本来の性能を発揮させず、わざといまいちな生成を繰り返すのだから。ただ、そうとわかったうえで、モデルメーカーはラッパーのやり方を黙認しているのかもしれない。APIの使用量が増えれば、それはそれで儲かるのだから。最大手のモデルメーカーが広告に手を出す時代、そういう大人の判断もあり得る。

いつからだろう、テック企業が理想や性善説に背を向けたのは。

SNSの登場か、サブスクのせいか……。テック企業が民間である以上、収益性の誘惑からは逃れられない。だからといって精度をおろそかにしていいとは思えないし、失敗まで課金対象という現状は受け入れがたい。ただ、問題はそうした不満そのものではない。多くの人にとって抵抗感のあるものを、見えない形で巧みに収益性と結びつける、そうしたハックが静かに僕らを取り囲む。

バケツの水をぶちまけられたら怒るが、ミストならよろこんでしまう……。

クレジット・ドレインが象徴する問題は根が深く、もはやFlovaのリテイク地獄にとどまらない。社会に浸透したテック企業が提供するサービスやツールに対し、僕らはうっすらと根拠なき疑念を抱く。使っていなくても支払いを要求されるサブスク、使った分が実は使わされた分かもしれないクレジット……。AIツールは便利だけど、知らず知らずのうちに損をしているような感覚。事実を知ることは難しいだろう。でも問題は、事実そのものではない。ユーザーにそう感じさせてしまう状況が問題なのだ。AIにまつわるお金の話は、そろそろ整備が求められる時期かもしれない。

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