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第䞉十六節 歊田勝頌ず織田信長の差ずは 【倧眪人の嚘・前線無料歎史小説 第参章 歊田軍䟵攻、策略の章】

歊田信玄が倧量の血を吐いお倒れたこずで、軍議は䞭断ずなった。

「薬垫くすし医垫のこずを呌べ
父䞊を奥ぞお連れするのだ」

四郎しろう勝頌か぀よりの指瀺で、若い偎近たちに抱き抱えられながら信玄は退垭する。
残った䞀族や家臣が今埌に぀いおの協議を始めた。

「父䞊が重い病に䟵おかされおいるこずは、既に諞囜ぞず広く知れ枡っおいる。
ここで動きを止めれば  
我らは䞉方ヶ原みかたがはらで埗た勝利の勢いを倱い、敵たちに勢い付く時間を䞎えおしたうかもしれん」

「仰おおせの通りず存じたす。
勝頌様。
我らは決しお動きを止めおはなりたせん。
そこで。
堀江城ほりえじょう珟圚の静岡県浜束垂西区を攻めるのは劂䜕いかが
ここからすぐ近くにある城です」
山県昌景やたがたたさかげである。

「堀江城
確か、湖珟圚の浜名湖のこずの東偎に  」

「はい。
この城は、湖の『東』に぀ながる船着き堎がありたす。
䞀方。
湖の向こう偎にある宇接山城う぀やたじょう珟圚の静岡県湖西垂には、湖の『西』に぀ながる船着き堎があるずか」

「芁するに。
『海』に぀ながる枯ず比べれば倧きく劣るものの  
この機䌚に堀江城を萜ずし、『湖』を䜿った補絊線も朰しおおけば良いず」

「埡意ぎょい。
党おは、浜束城ぞの鉄砲の匟䞞ず火薬の補絊を断぀ために」

「誠たこずに有り難い提案  
感謝する。
さお、皆の者。
それがしは昌景殿の提案通り、堀江城を攻めたいず思うが。
䜕か異論のある者は」

難攻䞍萜の地圢に恵たれおいない堀江城は、信玄の䜓調が回埩するたでの時間朰しに攻めるには『䞁床ちょうど良い』城であった。
どこからも異論は出ず、堀江城攻めが決定した。

 ◇

4日埌。

想定倖の出来事が起こっおいた。
難攻䞍萜の地圢に恵たれおもいない小さな城が、3䞇人近い歊田の倧軍の攻撃に耐え抜いおいたのだ

信玄の䜓調が回埩するたでの時間朰しであり、犠牲を顧かえりみないような激しい攻撃をしおいなかったのはある。
そうだずしおも堀江城の固さは尋垞ではない。

「城䞻の倧沢基胀おおさわもずたねは優れた歊人ず聞いおいたが  
䞀個人の歊勇でこうなるものなのか」

「勝頌様。
どうやら堀江城には、匷力な揎軍が千人以䞊も䞀緒に籠こもっおいるようですな」
山県昌景やたがたたさかげである。

「匷力な揎軍
䞀䜓、どこから」

「井䌊谷いいのやの軍勢かず」
「井䌊谷
確か、井䌊盎虎いいなおずらずいう女子おなごが圓䞻であったような  」

井䌊盎虎。
珟圚の浜束垂北区匕䜐いなさ町䞀垯を治めおいた井䌊いい家の圓䞻・井䌊盎盛いいなおもりの嚘である。
父に男子がいなかったため、次郎法垫じろうほうし盎虎なおずらず名乗っお井䌊谷城いいのやじょうの女城䞻ずなった。

䞀時は小野政次おのたさ぀ぐずいう家臣に城を乗っ取られおしたうが  
埳川家康の支揎によっお城䞻の地䜍に返り咲いおいる。

「昌景よ。
井䌊盎虎いいなおずらは、家康に察しお深い恩矩があるはず。
その恩矩に報いようず呜を捚おる芚悟で戊っおいるのでは」

「たさに『死兵しぞい』ですな」
「あの堀江城に、そんな厄介極やっかいきわたりない兵が籠こもっおいたずは  」

死兵ずは、自ら捚お駒ずなっお戊堎に留たっお戊う兵士のこずを蚀う。
生還する぀もりもなく死にもの狂いで戊っおいるため、攻める方は厄介極たりない。
『本気』で攻めれば制圧できるだろうが、それたでに倥おびただしい屍しかばねを晒さらすこずになるだろう。

「勝頌様が仰おっしゃった通り  
鉄砲の匟䞞ず火薬の補絊線が、家康の『生呜線』なのでしょう」

「それを守ろうず必死なのだな」
「どうなさいたす
我が赀備えが、先陣を務めたすぞ」

勝頌は迷っおいた。
堀江城を萜ずしお敵の補絊線を断ちたいのは山々であったが  
信玄が䞍圚のためか、ほずんどの䞀族や家臣たちは及び腰で圹に立たない。

頌りになるのは倧局を芋るこずができる優れた歊人だけだ。
䞀緒にいる歊田四倩王の3人、山県昌景やたがたたさかげ、内藀昌豊ないずうたさずよ、銬堎信春ばばのぶはるである。

ただし。
3人の軍勢は非垞に貎重な存圚でもある。
こんな消耗戊よりも、戊いの勝敗を巊右する重芁な堎面でこそ䜿いたい。

迷う勝頌に助け舟が来た。
「勝頌様。
お話䞭に倱瀌したすが  
信玄様が、回埩されたようです」

「おお、それは良かった
すぐ参ろう。
昌景殿、しばし埅たれよ」

勝頌は盎ちに父の元ぞず向かった。

 ◇

「父䞊。
勝頌が参りたした」

「息子よ。
盞枈あいすたぬこずをした」

「それがしこそ、堀江城を萜ずせず申し蚳ありたせん」
「井䌊谷いいのやの死兵が立お籠こもっおおるそうな。
あれは厄介だぞ」

「ご存知でしたか」
「赀備えを消耗したくない  
そなたの気持ちはよく分かる」

「父䞊は、どうすべきずお考えですか」
「わしが、そなたほど若ければ  
盎ちに堀江城を総攻撃する」

「貎重な赀備えを消耗させおでも、総攻撃すべきず」
「いや。
歊田四倩王の軍勢ではなく、『他』の軍勢でな」

「他の軍勢
穎山信君あなやたのぶただや歊田信豊たけだのぶずよなどの䞀族の軍勢でですか」

「うむ」
「あれは、及び腰で戊意がありたせん。
加えお䞉方ヶ原みかたがはら合戊で最も消耗した歊田軍䞭倮を務めおいたした。
これ以䞊、消耗を匷いるのもたずいのでは」

「だからどうした
実力のない歊将が率いる軍勢など、どれだけ消耗しようが構わんではないか」

「  」
「息子よ。
そなたの実力は、わしを凌しのいでいる。
匟の信繁のぶしげず同じかそれ以䞊だろう。
ただし  
そなたの持぀噚甚さが、『仇あだ』ずなるかもしれん」

「仇」
「噚甚な者の欠点は  
噚甚であるがゆえ、䞍噚甚な者ほど培底的になれないこずじゃ」

「  」
「くノ䞀くのいち女忍者のこずの望月もちづき千代女ちよじょを存じおおろう」

「望月千代女  
父䞊に属しおいる歩あるき巫女みこの頭かしらですな」

「わしが死ねば、そなたに属す歩き巫女の頭ずなる女子おなごじゃ。
千代女ちよじょは䜕床も申しおいた。
わしの埌継者は、倪郎たろう矩信よしのぶしかいないず」

「  」
「『わしには四郎しろう勝頌か぀よりずいう、わしよりもずっず噚甚な息子がいる』
こう返したが  」

「千代女ちよじょは䜕ず」
「『桁倖れに玔粋で、䞍噚甚な織田信長を盞手にしたずきに  
四郎勝頌様の持぀噚甚さが、仇あだずなるかもしれたせん』
ず」

「  」
「わしが倒れる前の軍議の話だが。
わしが、そなたほど若ければ  
迷うこずなくこう決断しただろう。
『浜束城を総攻撃しお埳川家康を蚎぀』
ずな」

「浜束城を総攻撃ですず」
「信君のぶただは愚かな無胜者だが、䞀぀だけ正解を語っおいた。
『いくら䜏民ずはいえ、歊噚を手に取った以䞊  
殺されお圓然では』
ず」

「歊噚を手に取ったのだから  
殺されおも仕方ないず仰おっしゃるのですか」

「息子よ。
歊噚を手に取った䜏民には、こう問うべきなのじゃ。
『芚悟はできおいるのか』
ずな」

「  」
「わしが、そなたほど若ければ  
信君のぶただよりも培底的に浜束城を総攻撃する。
草の根を分けおでも歊噚を手に取った䜏民を探し出し、皆殺しにするだろう」

「  」
「息子よ。
よく聞いおほしい。
あの織田信長ならば、これず同じか、これ以䞊のこずを『やる』ぞ」

 ◇

数幎埌。
歊田信玄の蚀ったこずは珟実ずなる。

䌊勢囜いせのくに・長島ながした珟圚の䞉重県桑名垂。
䞀向䞀揆いっこういっきの旗を掲げた数䞇人の䜏民がいく぀かの砊ずりでに立お籠こもり、これを織田信長の軍勢が厳重に包囲しおいた。

食糧の尜きた䜏民は、぀いに  
降䌏を申し出る。

「䞀切の歊噚を捚おお砊を出れば、呜だけは助けおやろう」
信長は降䌏を受け入れる条件ずしお䜏民の歊装解陀を呜じ、数䞇人の䜏民が砊を出た。

ずころが
砊を出る䜏民を芋た織田軍の将兵から、こんな声が䞊がる。
「奎らは『ただ』歊噚を持っおいるぞ」

信長の怒りが、制埡できないほどに爆発した。
「くそ坊䞻どもに蚀葉巧みに操あや぀られたずはいえ  
戊いくさを知らない玠人しろうずどもが、䜕の芚悟もなく、行き圓りばったりの思い付きで歊噚を手に取るこずで、どれだけ䞖の乱れを招いおいるかを  
未だに理解できないのか」

そしお。
䞀぀の呜什を発する。
「あれを、老若男女問わず党員撃ち殺せ」

民間人を撃぀こずを躊躇ためらう兵士たちぞ向け、信長は叫んだ。
「あれは人ではない
ただの鉄砲の的たずじゃ
さっさず撃ち始めんかっ」

この日。
数䞇人の䜏民が殺戮さ぀りくされた。

 ◇

玔粋で、噚甚であった歊田勝頌は  
歊噚を手に取った䜏民を殺せなかった。

䞀方。
桁倖れに玔粋で、しかも䞍噚甚であった織田信長は  
歊噚を手に取った䜏民を悉こずごずく殺し尜くした。

䞡者が戊った結果は明らかである。
『噚甚』な歊田勝頌は敗北し、歊田家そのものを滅がしおしたった。
『䞍噚甚』な織田信長は勝利し、倩䞋人おんかびずたる地䜍を確実なものにした。

歎史にIFはないが  
䞍噚甚な倪郎矩信が歊田家圓䞻ずなり、噚甚な四郎勝頌が参謀さんがうずしお兄を支えおいれば、歎史は倧きく倉わっおいたかもしれない。

【次節予告 第䞉十䞃節 歊田勝頌は愚かな人物なのか】
䞉方ヶ原合戊の盎埌。
蚀葉巧みに操られた浜束の䜏民が城内に朜んでいるずはいえ  
歊田軍が党力で攻撃すれば、浜束城は間違いなく萜ちたはずなのです。

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