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Photo bymaikkkmr

ひとりごと

    ロドリゴ

     ひとりごとのように歌い始めた。

     中学2年のとき、学校を代表してクラスで合唱コンクールに出ることが決まった。
     コンクールは三月、市内の会館で行われることになっていた。かなり本格的で、毎日、朝と放課後に練習をした。
     最初はうまく声も出なくて、イヤイヤやっていた。
     夏休みを越える頃に、それぞれのパートが振り分けられ、パートごとに集まって練習をした。秋にはデモンストレーションとして、学校の文化祭で全校生徒の前で合唱したのが思いもよらず好評だった。それからさらに練習に熱が入った。
     年を越す頃には、それなりに形になり、コンクールが待ち遠しいとも思い始めていた。
     そんなとき、僕は転校することになった。最後の挨拶で「みんなと合唱コンクールに出られなくて残念です」と笑いながら話した。
     転校した先は、前の家から何時間も電車に乗った場所で、山も海もあり、とても自然に恵まれたところだった。
     高校受験も控えて学校生活に不安を感じていたが、転校先のみんなはすごく優しく、すぐに友達になった。受験勉強もあったが、みんなともよく遊んだ。
     夏期講習の帰り、新しいカラオケボックスができたから、みんなで自転車で行くことになった。カラオケボックスで歌ったあと、「じゃあね」と言ってみんなと別れた。
     帰り道、海沿いの大きな通りに差し掛かった。ちょうど日が傾き始め、夕暮れになっていた。
     そのとき、ひとりごとのように合唱コンクールの課題曲を口ずさんでいた。
     声はだんだん大きくなり、自分が歌うはずだったパートを歌った。海沿いの風の音がその歌声をかき消そうとするが、負けないように歌った。ちょうど海沿いの道を越えたところで、歌い切った。
     自転車を止めて、遠くなった海をしばらく見たあと、目をシャツで拭って家に帰った。

     
     
     
    映画と本が好きです。 山田ズーニーさんの「17歳は2度くる」ではないけれど、 いま、3度目の17歳と数年を迎えています。 ズーニーさんのように、まっすぐな文章を書く練習をしています。 静かな出来事を、そのまま書いています。

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