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Photo byminli_morimori

「泡のように消えていく夢を」

    ロドリゴ

    シャボン玉がフワリと飛んでいる。

    電気技師の彼が言った。
    「ああ、腰が死にそうだ。今の新築物件はひどいな。壁の中がスパゲッティみたいに配線が絡まってやがる」
    返す言葉で、散髪屋は返した。
    「贅沢言うな。俺なんて一日中、他人の頭の不格好な形と向き合ってるんだ。最近の若者は写真を見せてきて『これと同じにしろ』と言うが、あんな顔、俺のハサミじゃ作れやしないよ」
    二人は同じ団地で育ち、40年以上こうして飲んでいる。
    「結局、あいつらが欲しいのは『正解』だけなんだよな。スマートホームだ何だとうるさいが、スマホで照明がつくのがそんなに偉いのかね」
    「便利になりすぎて、みんな退化してるのさ。自分でスイッチも押せない、髪もセットできない。……で、そのスマートな照明とやらは、停電したらどうなるんだ?」
    「ただの『高い壁飾り』だよ。そうなれば俺の出番だ。結局、俺の膝がボロボロになるまで這いつくばらないと、連中は暗闇でスマホを眺めることしかできない」
    「いい気味だ。……なあ、もう一杯いくか? 髪を切るよりビールを注ぐ方が、よっぽど世の中のためになる気がしてきたよ」
    「ああ。二杯目は、ショートした頭を冷やすために必要だ」

    「あ、そろそろだな」

    「おお、そうだな」

    熱気が上がり、シャボン玉がサッカースタジアムのスタンドを飛び交った。

    スタジアムに集まった観客全員で

    “I'm forever blowing bubbles,
    Pretty bubbles in the air...”を大合唱した。

     
     
     
    映画と本が好きです。 山田ズーニーさんの「17歳は2度くる」ではないけれど、 いま、3度目の17歳と数年を迎えています。 ズーニーさんのように、まっすぐな文章を書く練習をしています。 静かな出来事を、そのまま書いています。

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