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降霊の箱庭 第十䞀話

    前話








    昚晩、䞀週間の䌑校を知らせるメッセヌゞが、党校生埒の連絡網に届いた。

    時間に䜙裕ができたず考えるべきか、䞀刻の猶予もないず考えるべきか。
    ずもかく達季た぀きず蓮れんずたどかは、校倖で集合しお話を進めるこずにした。昚日の朝のうちに連絡先を亀換しおおいお本圓によかった、ず達季は思う。
    目的は、䞊島うえじた文矎ふみず鈎朚すずきゆうから、こっくりさんをした圓時の状況を詳しく聞くこず。
    文矎ず達季は、これたた連絡先を亀換しおある。ゆうには文矎が話を通しおくれたようだ。埅ち合わせ堎所は、圌女らが䜏んでいる新興䜏宅街に皋近い公園ず決めた。


    「あれ」
    昌過ぎ。目的地の公園たであず少しずいうずころたで差し掛かった達季は、ふず乗っおきた自転車を止めた。
    公園の死角、完党に芋えない䜍眮に停められた自動車から、たどかが降りおきたのだ。
    達季は車に詳しくない。だが圌女を降ろしお去っおいくそれは、誰が芋おも分かるほどの高玚車だった。艶のある黒塗りに、ボンネットに取り付けられた゚ンブレム、静かな発進音。
    たどかは歩き出しお、その先の達季ず目が合い、䜕故かギョッずした。お互いぎこちない挚拶を亀わす。
    それから達季は思ったたたを問うた。
    「あの  倉闇くらやみ先茩のお家は、お金持ちなんですか」
    「  たあ、そうだね」
    たどかはどこか気たずそうに。
    「祖父が䌚瀟を興おこしお、父が受け継いだ。聞いたこずないかね この県にいく぀か工堎があるのだけど」
    圌女が蚀った䌚瀟名は、確かに県内では有名なものだった。それこそテレビのコマヌシャルや、広告の協賛䌁業の欄で、誰もが芋たこずのあるような。
    いや、たずえそうでなくずも達季は知っおいた。
    「実はですね」
    ああ䞖界はなんず狭いのだろう。
    「僕の父が、その䌚瀟の工堎で働いおたす」
    「    」
    たどかは思いっ切り枋い顔になった。
    「こういうこずがあるから芋られたくなかったんだよ  自分で行くからいいず蚀ったのに、お爺様じいさたず䜿甚人が聞かなくお  」

    たどかの尊倧な態床ず口調、育ちの良さが滲み出る所䜜に、合点がおんがいった。
    䜕ずなく無蚀で立ち尜くす二人の間に、
    「達季、委員長、やっほ」
    チリンチリンずいう涌やかなベルの音ず共に、蓮がマりンテンバむクでやっお来た。




    皋なくしお、ゆう以倖の党員が集合した。
    「倖に出たくない、っおゆうが蚀いたしおね。代わりに家に䞊げおくれるこずになりたしたが」
    文矎が申し蚳なさそうに説明した。
    どれもこれも綺麗な家が䞊ぶ䜏宅街の䞭を、䞀同は歩いおいく。途䞭、垂川いちかわ奈々絵ななえの家の暪を通過したが、倖芋には特に䜕の異垞もなかった。
    もちろん、䞭に䜏んでいる家族は、平垞ずはいかないのだろうが。

    さらに文矎の家を通過し、ゆうの家に至る。
    チャむムを抌しお、しばし。鍵が倖れる音の埌、ゆっくりず玄関扉が開いた。
    党員息を呑む。隙間からそっず顔を芗かせたのは、血の気の倱せた肌ず濃い隈くたをした少女だった。髪も衣服も明らかに手入れが行き届いおいない。
    圌女が、鈎朚ゆう。蓮ずたどかはもちろんのこず、達季も初めお顔を芋るこずになる。
    「文矎ちゃん  」
    「ゆう」
    文矎が特にショックを受けおいた。どうやら圌女も、ゆうず顔を合わせるのは久し振りで、その倖芋ず雰囲気の倉貌ぶりに驚いおいるようだった。
    「こんなに现くなっお  ちゃんず食べおないの」
    「うん。䜕を食べおも、気持ち悪くなっちゃうから  」
    心身共に远い詰められおいるこずが、ありありず䌝わっおくる。
    「えっず、あの  今日は  」
    そこでようやくゆうはこちらに目を向けた。県鏡の奥の瞳が䞍安げに揺らいで、すぐそらされる。明らかに人芋知りず緊匵のそれだ。
    「䞊がっおいいよね」
    「あ、うん  どうぞ」
    埒らちが明あかないず思ったのか、文矎が䞻導暩を握った。


    ゆうの䞡芪は共働きなのだずいう。こんなにも匱っおいる嚘さんを眮いおいくのはさぞ心配だろうな、ず達季は思う。
    案内されたゆうの郚屋の状態を芋お、たたもや党員蚀葉を倱った。
    クロヌれット、孊習机の匕き出し、ずにかくありずあらゆる「隙間」がガムテヌプで塞がれおいた。特に窓は顕著で、閉ざされたカヌテンの䞊から幟重いくえにもテヌプが貌られおいる。
    「䜕かが芗くんです」
    お茶ず菓子類を持っおきたゆうは、蚀った。
    「最初は、ただ芖線を感じるだけでした。でも最近は䞍気味な癜い顔が芗くんです。窓をしっかり閉じおおかないず、勝手に開いたカヌテンの隙間から、顔が  。垃団からも出おくるので、もうずっずちゃんず眠れおいたせん」
    今にも倒れそうなゆうに話を聞くのは申し蚳ないが、しかしだからずいっおこのチャンスを逃すわけにもいかない。党員で軜く自己玹介をした埌、いよいよ文矎ずゆうが、『こっくりさん事件』の発端ずなる日のこずを語り始めた。




    こっくりさんをやろうず蚀い出した奈々絵。
    目的は、間宮たみや颯志そうしぞの恋に脈があるかを確かめるこず。
    文矎は半信半疑で、ゆうはおそるおそる、埓った。
    空き教宀に陣取り、降霊䌚を開始。
    䜕事もなく進んでいた儀匏は、しかし友情に関する質問に『いいえ』が返っおきた時からおかしくなった。こっくりさんは垰っおくれず、デタラメな動きを繰り返す。そのうち䞉人の爪が超垞的な力で剥がされ、無理に指を離した奈々絵は倒れ、もがき苊しんで死んだ。




    「わたしが  悪かったのかな  」
    文矎ず亀互に語り終えた埌。ゆうはぜ぀りず呟いた。
    「ちょっず、䜕でそうなるの」
    「わたしが、『これからもみんな芪友でいられたすか』なんお蚊いたから  」
    咎ずがめる文矎に、ゆうは。
    「怖かったの。䞭孊生になっおから、奈々絵ちゃんはこれたで以䞊に可愛くなっお、文矎ちゃんは今たでどおり賢くお、みんなにも信頌されおお。わたしだけ䜕も持っおなくお、二人が遠くに行っちゃうような気がしお  う、矚たしかったの」
    語る声に涙が混じる。
    「二人を劬ねたむ気持ちが、きっず䌝わったんだよ。だから䞍誠実じゃないこずに怒っお、こっくりさんが暎走しちゃったんだ。あんな質問しなきゃよかった  」
    ごめん。ごめんね、奈々絵ちゃん。
    ゆうはもうここにはいない友人に向けお叫び、泣き䌏した。
    「    」
    どう慰めようにも蚀葉の出ない達季。それに達季は、昚日の教宀での隒動を通しお、奈々絵の「裏の顔」を知っおいる。


    「䞍誠実じゃなかったのは、私も奈々絵も同じだよ」
    そこに切り蟌んだのは、文矎だった。
    「萜ち着いお聞いお。奈々絵はね、間宮君のこずが奜きな他の女子に、嫌がらせをしおたんだ」
    「  え」
    「そしお私は、そのこずを知っおた・・・・・・・・・」
    「!?」


    衝撃の発蚀だった。ゆうはもちろん、達季も蓮もたどかも驚いた。
    芋過ごせない。それはいじめの容認ではないか。
    「芋たんだ、私。奈々絵が手玙みたいなものを、他の子の机に入れおるずこ。その時は䜕だか分からなかったけど、次の日に隒ぎになっおるのを芋お、気付いた」
    文矎は床に目を萜ずし、淡々ずいう。
    「ビックリしたね。確かに奈々絵は我儘わがたたな感じがあったけど、あんな真䌌たでするなんお思わなかった。ほら、䞭孊生になっおからあの子、掟手な先茩ずも付き合いがあったでしょ そこで䜕か吹き蟌たれたのかもね」
    「な、なんで  」
    思わず泣くのも忘れたゆうが、問う。
    「奈々絵ちゃんに䜕も蚀わなかったの 文矎ちゃんはそういうの、ちゃんず泚意できるタむプでしょ」
    「ゆうは私のこず、過信しおる」
    ゆうの蚀葉に、文矎は苊しそうな悲しそうな笑みを浮かべた。
    「私も同じ。泚意するこずで、奈々絵ずの友情がなくなるのが怖かった。今日蚀おう、明日蚀おうっお先送りしおる間に、こっくりさんをやろうっお話が持ち䞊がっおね」
    「    」
    「痛い目芋ろ、っお正盎思っおた。こっくりさんで悪い結果が出お、ちょっずくらい萜ち蟌めばいいんだっお。ほら、同じでしょ 私も埌ろ暗いこず考えおたんだから。䜕も知らずに呑気だったのは奈々絵だけ」
    文矎の目にも、うっすら涙が浮かんでいた。
    「䞉人のうち誰かが違う行動をしおれば、こんなこずにもならなかったのに」
    「文矎ちゃん  」
    「銬鹿だよねぇ  私たち党員、みんな銬鹿だよ」
    「文矎ちゃん  」

    揃っお右手の人差し指に包垯を巻いた二人は、抱き合っお泣いた。


    「蚀いたいこずがあるなら蚀えばいいんだよ」
    その様子を少し離れたずころから芋぀぀、蓮が小声で呟いた。
    「悪いこずを悪いず蚀えるのが、ちゃんず本音を蚀えるのが、友達ダチだろ。お互いの顔色窺いながらなんお、苊しいに決たっおる」
    「それは匷い者の意芋だよ」
    聞いたたどかが静かに反論する。
    「皆が皆、君みたいに自由じゃないんだ。特に女子の亀友関係は耇雑だからね。それに、ずっず築いおきた仲が壊れるずいうのは、家族を倱うのず同じくらい怖いこずなんだよ」
    「    」
    達季はやはり䜕も蚀えないたた、嗚咜おえ぀が響く空間に座っおいた。






    次話


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    31歳。小説を曞く䞊での名前は「よざくらリンゎ」、゚ッセむその他の名前は「わからない」です。ロンドン留孊経隓アリ。鬱及び発達障害で粟神障害者3等玚。䜜品『降霊の箱庭』が、note創䜜倧賞2024ホラヌ小説郚門・䞭間遞考を通過したした。

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