
キラキラの破片
部屋の模様替えでタンスを動かしたら、後ろの方から
ワタホコリとキラキラとしたサンバ衣装の破片が出てきた。
手に取ると頭にかぶるカベッサの飾りの切れ端だった。
浅草サンバカーニバルにバテリア(打楽器隊)として 出場した時に、衣装つくりをこの部屋でやっていたのだった。 年末の冬の盛り、底冷えの中なのに、ポッと真夏の 暑いひとときの感覚が蘇った。
大きな山車も音響機材を積んだ大型トラックも長い隊列を組み、
ダンサーもバテリア(楽団)も整列して出走の合図を待つ。
身震いするほどワクワクする瞬間だ。
ジレトール(指揮者)の甲高いアピート(笛)の音が鳴ったら
300人の隊列が踊り、バテリアが打楽器を叩き出す。
巨大なアレゴリア(山車)がゆっくりと動き出す。
一年を掛けて練習を重ねてきたので緊張感とは無縁で、
歓喜しかない。衣装の内側では汗が流れるがそれも快感でしかない。
スタートしてからゴールするまでの40分間がほんの一瞬のことにしか
感じられない程、夢中になって楽器をかき鳴らし練り歩く。
ゴールした後の達成感と開放感に酔いしれ、その後
仲間と交わす冷えたビールの味は格別だ。
東京の浅草サンバカーニバルは、1981年に始まり今年で
45年にもなる。
三社祭や羽子板市などと並んで、今やすっかり
浅草の夏の風物詩になっている。
南半球にはブラジルの本場リオのカーニバルがあり、北半球では
浅草が最大規模といわれ、50万人の観客を魅了する。
サンバと聞くと誰でもカラフルで華麗な羽根飾りを付けた
ダンサーたちが打楽器隊の打ち出すサンバの軽快なリズムに乗って踊り、
華やかに繰り広げられるパレードの情景を思い浮かべることだろう。
この夏の一日のパレードのために出場チームのメンバー達は、
パレードのテーマを考え、そのテーマに沿って歌を作り、衣装をつくり、
大きな山車を何基も造る。
アトリエでは、四角い発砲スチールを削り出して形を作るが、
白い破片の粒が舞ってまるで雪山のようになる。
作業に疲れて横になっているとまるで冬山の遭難に見える。
会社のOLさんや営業のサラリーマン、公務員、自営業など、
ごく普通の若者たちが嬉々としてこのハレの一日のために
献身的に働き、サンバへの愛に身を焦がす。
ホコリにまみれたキラキラの切れ端が、
一瞬でサンバパレードの興奮に引き戻してくれたのだった。
浅草サンバカーニバル https://www.asakusa-samba.org/
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