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『梅雨の傘の内側で』2025/6/13

    雨しずく 肩に紛れて 泣けぬまま
    傘の内側 ひとりの匂い

    ***

    梅雨の午後。湿った空気と、冷たい雨粒。

    泣けるほど悲しかったわけじゃないのに、

    なぜか涙だけは、ずっと出てこなかった。

    傘の内側に残っていたのは、もうここにいない人のぬくもりと匂い――

    そんな、梅雨の始まりに近い日のイメージです。

    ***

    《詩》*梅雨の傘、すこしだけ空いた左側*

     梅雨の雨は 優しいふりをして

     じわじわと 心の奥まで濡らしてくる 


     風が弱くて 音も小さくて

     なのに ずっと降り続く


     今日の帰り道 

     わたしはまた ひとりで傘をさしていた


     思い出すのは あの人の傘

     ふたりで並んだとき

     少しだけ 左側をあけてくれたこと


     もういないのに

     まだ癖で そちら側に寄ってしまう


     梅雨の匂いと一緒に

     ふっと香る あの人のシャツの柔軟剤


     泣くほどのことじゃないけれど

     泣けなかった

     雨しずくと わたしの境目が

     もう わからなかった





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