
推しだと思ってたら同級生だった件。 #小説
私には推しがいる。
毎日動画を見る。
写真を保存する。
友達に魅力を語る。
完璧な推しだ。
名前は――
神崎レン。
イケメン。
高身長。
歌うまい。
笑顔が天使。
欠点が見つからない。
ある日。
私は友達の美優と推しトークをしていた。
「レンくんほんとやばいよね。」
「分かる。」
「結婚したい。」
「無理。」
「なんで!?」
「会ったことないじゃん。」
そんな話をしていると、
後ろの席の男子が振り返った。
「なあ。」
大島だった。
「その神崎レンって誰?」
私は立ち上がった。
「は!?知らないの!?」
「知らん。」
「人生損してる!!」
「そんなに?」
「そんなに!!」
私はスマホを取り出した。
「見てこれ!!」
写真を見せる。
大島が固まった。
「え。」
「でしょ!かっこいいでしょ!」
「いや…。」
「なに?」
「これ俺じゃね?」
「は?」
私はもう一度写真を見る。
大島を見る。
写真を見る。
大島を見る。
写真を見る。
「え。」
似てる。
めちゃくちゃ似てる。
いや。
同じだ。
「えええええええ!?」
教室中が振り返る。
「なんでいるの!?」
「クラスメイトだから。」
「そうじゃなくて!!」
「いやそうだろ。」
混乱する私。
実は。
神崎レンはSNSで偽名を使っている人気歌い手だった。
だから誰も本名を知らない。
私はずっと遠い存在だと思っていた。
まさか。
隣のクラスの大島だったなんて。
「黙ってたの!?」
「聞かれなかったし。」
「聞くわけないじゃん!!」
「それもそう。」
大島は笑った。
その笑顔。
動画で毎日見てたやつ。
本物だ。
本物がいる。
私は机に突っ伏した。
「無理。」
「何が。」
「恥ずかしい。」
「なんで。」
「だって私コメントで『結婚してください』って送った。」
「見た。」
「ぎゃあああああああ!!」
終わった。
人生終わった。
すると大島がスマホを出した。
「ちなみに。」
画面には私のコメント。
『レンくんの笑顔で寿命延びた』
『世界遺産』
『結婚したい』
『今日も尊い』
「やめろおおおおおお!!」
私は全力でスマホを奪いにいった。
逃げる大島。
追いかける私。
教室大爆笑。
その日から。
私の推しは。
画面の向こうじゃなくなった。
そして。
「おはよう。」
「お、おはよう…。」
推しと毎日同じ教室にいる生活が始まった。
ちなみに。
数か月後。
「結婚してください。」
私が冗談で言ったら。
大島は笑いながらこう言った。
「予約しとく?」
その瞬間。
私は人生で一番真っ赤になった。