
「いつか」を「今」に変えた日
子どもたちがまだ小さく、自分の時間がほとんど持てなかった頃の話だ。
当時、働いていた職場の理事長先生に、私はふとこんな愚痴をこぼした。
「もう少し時間ができたら、ゆっくり自分で豆を挽いてコーヒーを淹れたいんですよね」
すると、当時83歳だった理事長先生は、静かにこう言ったのだ。
「僕の知っている限り、『いつか時間ができたら』と言っている人は、いつまで経ってもそれをしないんだよな。時間なんてものは、いつだって無いものだから。本当にやりたいなら、今やるべきなんだ。」
、、、カッコエエ。
その一言は、私の暮らしの視点をガラリと変えてくれた。
あれから、もう5年ほどが経つ。
人生のなかで出会い、そして今はもう会わなくなった人たちがいる。
多くの時間を共に過ごすなかで、良いこともあれば、ときには嫌な思いをさせられることもあった。
けれど、一度会わなくなってしまえば、彼らは自分の日々から綺麗にいなくなる。
それなのに、だ。
かつて出会った人たちの影が、今の自分の習慣や考え方に、チョイチョイ顔を出す。
私は、この事実がたまらなく好きだ。

今日も豆を挽き、コーヒーを淹れる。
その温かい湯気の向こうで、私は今も、あの理事長先生を想い出す。
あ、そう書くと理事長先生がなくなっている風になってしまう。危ない危ない。ご健在である。
今でも時々、先生に会うために医院にお邪魔する。
「いつか」ではなく「今」会いたい人だから。
その時間が、未来の自分を作ることを私は知っているから。
2026.07.03