預託在庫・貸出・買取在庫・定数管理とは? 医療機器ディーラーの在庫用語をまとめて解説
医療機器業界に入ると、最初に分かりにくい言葉がいくつもあります。
その中でも特にややこしいのが、
預託
貸出
買取
定数
です。
全部、
「病院に商品が置いてある」
という点では似ています。
でも意味は全く違います。
この違いが分かると、医療機器ディーラーの在庫の仕組みがかなり理解しやすくなります。
今回はこの4つを一気にまとめます。
なお、呼び方や運用はメーカー・ディーラー・医療機関によって異なる場合があります。
まず「病院にある=病院の在庫」ではない
普通に考えると、
病院の棚に商品がある。
なら、
病院が買った商品。
と思います。
でも医療機器では、必ずしもそうではありません。
病院の棚に、
病院が買った商品。
ディーラーやメーカーから預かっている商品。
症例のために一時的に借りている商品。
が混在していることがあります。
ここが医療機器在庫のややこしいところです。
① 預託在庫とは
預託在庫とは、簡単に言えば、
まだ病院が購入していない商品を、あらかじめ病院内に置いておく仕組み
です。
例えば緊急治療で使う医療機器。
急患が来てから、
「メーカーに注文します」
では間に合わないことがあります。
そこで事前に病院内に商品を置いておきます。
必要になったら使用する。
使用されたら売上になる。
使用された分を補充する。
という流れです。
なぜそんな仕組みが必要なのか
理由は、
いつ必要になるか分からないから
です。
例えば複数サイズがある商品。
患者さんによって使用するサイズが違います。
でも事前に完全には決められない。
すると、
Aサイズ
Bサイズ
Cサイズ
Dサイズ
をあらかじめ病院に置いておく。
実際に使用されたのはBサイズ。
Bサイズだけ売上。
その後Bサイズを補充。
という形になります。
預託在庫の問題点
便利ですが、管理は大変です。
病院内にあるけれど病院の在庫ではない。
商品が使用されているのに売上処理されていない。
在庫数が合わない。
期限が近づく。
商品がどこにあるか分からない。
など、さまざまな問題が起きます。
特に医療機器には使用期限・滅菌期限のある商品もあります。
そのため、
置いておけばいい
では済みません。
定期的な確認が必要です。
② 貸出とは
預託と似ているのが「貸出」です。
ただし考え方は違います。
貸出は、
特定の手術や治療などで使用する可能性がある商品を、一時的に病院へ貸し出す
イメージです。
例えば、
来週この手術があります。
そのために必要な商品を一式貸してください。
という形です。
メーカーやディーラーから商品が病院へ届きます。
その症例で使用された商品だけ売上。
使わなかった商品は返却。
という運用があります。
預託と貸出の違い
一番簡単な違いは、
預託=常時置いておく
貸出=その都度、一時的に持っていく
です。
もちろん実際の運用は会社や商品によって異なります。
でも最初はこのイメージで大体分かります。
預託は、
「いつ必要になってもいいように常に置いてある」
貸出は、
「この症例で必要かもしれないから今回だけ持ってくる」
という違いです。
③ 買取在庫とは
買取在庫は一番分かりやすいです。
病院がすでに購入した商品
です。
ディーラーから病院へ販売し、
病院の所有物になっています。
例えば、
この商品を10個ください。
と病院が注文する。
ディーラーが納品する。
病院が購入する。
その後は病院の在庫です。
使われてもディーラー側で新たな売上が発生するわけではありません。
必要になれば病院から再発注されます。
預託との違い
見た目では分かりにくいことがあります。
同じ棚に、
預託品。
買取品。
が並んでいることもあります。
でも所有関係は違います。
買取=病院のもの
預託=まだ病院が購入していないもの
ここは重要です。
④ 定数管理とは
定数管理とは、
決められた数量を常に維持するように在庫を補充する仕組み
です。
例えば、
ある商品を病院に10個置く。
これを定数10個とします。
3個使った。
残り7個。
すると3個補充して、
再び10個に戻します。
これが基本的な定数管理です。
定数管理は預託でも買取でも使われる
ここが少し分かりにくいところです。
「定数」は所有権の話ではありません。
何個置いておくか
という管理方法の話です。
そのため、
預託在庫を定数管理する。
病院の買取在庫を定数管理する。
どちらもあり得ます。
例えば、
「この商品は預託で5個を定数として置く」
という形です。
4つをまとめると
かなり簡単に整理すると、
預託
病院内に常時置いてあるが、まだ病院が購入していない商品。
貸出
特定の手術や治療などのため、一時的に病院へ持ち込む商品。
買取
病院がすでに購入した商品。
定数管理
決められた数量を維持するための在庫管理方法。
です。
実際の病院内はもっと複雑
現実には、
この棚は預託。
これは買取。
これはメーカー貸出。
これは今回の症例だけ。
これは定数10個。
これは定数なし。
というように、複数の管理方法が混在することがあります。
さらに、
ロット番号。
シリアル番号。
使用期限。
滅菌期限。
使用実績。
返品。
補充。
まで管理する必要があります。
このあたりから、
医療機器の在庫管理って思ったより大変
ということが見えてきます。
預託は便利だけど、在庫が増える
病院側からすると、
必要なものがすぐ使える。
というメリットがあります。
一方でディーラーやメーカー側からすると、
売れていない商品を病院に置いている
ということでもあります。
病院が増える。
必要なサイズが増える。
商品ラインナップが増える。
すると預託在庫はどんどん増えていきます。
そして最終的に問題になるのが、
滅菌期限切れと廃棄
です。
必要なときに備えて置いておく。
でも使われない。
期限が近づく。
移動できない。
返品できない。
そして廃棄になる。
医療機器業界では、この「安全のための在庫」と「廃棄ロス」のバランスが大きな課題の一つです。
この話はまた別の記事で、
「滅菌期限切れと医療機器廃棄の実情」
として詳しく書いてみたいと思います。
