妹へ 第1章*誕生
自慢の妹だった。
涙袋に泣きぼくろ。ロングヘアーと笑顔が似合う愛嬌のある顔立ち。
人懐っこくて付き合い上手、歌の上手い人気者。
三人兄妹の末っ子貴美子。
彼女について少しずつ、話してみたい。
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昭和三十五年初夏。
鹿児島市常盤町。
父三十六歳、母二十八歳。四歳の自分と、三歳の妹。そして高校生だった叔母の五人で暮らしていた。
その時、僕は一番奥の三畳間にいた。妹・優子と肩を並べ、叔母順子と向き合い、何気ない会話を交わしていた。
「お母さんはいつ退院できるの?」
叔母に問うと、意外な言葉が返ってきた。
「もうすぐ赤ちゃんが生まれるんだよ」
妹と僕は、顔を見合わせた。
入院しているのは、病気だからだと思い込んでいたから…。
以後、兄妹の会話は、ほぼ一つに絞られた。
生まれてくる赤ちゃんは男だろうか、それとも女だろうか…。
その言葉が、何度となく繰り返された。
長男は女の赤ちゃんを望み、長女は弟を欲しがった。
そして、待ち望んでいた赤ちゃんが我が家にやってきた。
その笑顔に、家族全員メロメロになった。
みんな寄ってたかってあやした。
高度経済成長期前夜。
その家に引っ越してきたときには、まだテレビも洗濯機も冷蔵庫もガスコンロもなかった。
貴美子が生まれたのと前後して、それらの家電類が次々と揃っていった。そういった次第に明るい未来へ向かう期待感の中で誕生した夏生まれの女の子。
幼かった僕の目に、新しい時代の申し子のように見えていた。
