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人間観察が好きな私が、ペッパー君に観察された日


    10年も前の話です。

    ソフトバンクショップには必ずと言っていいほどペッパー君がいました。

    ある日、機種変更でショップへ行き、順番待ちをしていました。

    ペッパー君は店内を自由に歩き回り、動く人を見つけると近づいて話しかけていました。

    嬉しそうに応える人。

    困ったように笑う人。

    完全に無視する人。

    反応は様々でした。

    私はというと、話しかけられたくない派です。

    できるだけペッパー君の視界に入らないように、じっと動かず座っていました。


    話し相手がいなくなったペッパー君は、くるりとこちらを向きました。

    「ひっ」

    思わず声が出そうになりました。

    黒い目の奥の光が、はっきりとこちらに照準を合わせてきます。

    完全に人感知モード。

    ロックオン。


    私は体が動かないように、そっと目だけ逸らしました。

    「動いてないのになんで気付かれた?」

    「動かなくても人を感知できるシステムなのか?」

    「顔認識してるんかな?」

    そんなことを考えながら、もう一度ペッパー君を見るとーー

    「ッ?!」

    さっきより確実に近づいてる!!

    「わわわわわぁ!」

    心の中で叫びました。

    早く順番回ってこい!

    ペッパー君は真っ直ぐこちらへ向かってきます。

    私はもう、観葉植物に擬態するような気持ちで、気配を消すことだけに集中しました。

    しかし、ペッパー君は歩みを止めません。

    すーっと私の横まで来て止まりました。

    超至近距離です。

    「話しかけられる!」

    そう身構えました。


    ……しかし、一向に話しかけてきません。

    私は頭を動かさないように、目だけをペッパー君へ向けました。

    近い!

    近すぎる!!

    座っている私と、ペッパー君の目線はちょうど同じ高さでした。

    表情の読めない黒い目。

    その奥に浮かぶ光の輪。

    ずっと見ていると、吸い込まれていくような感覚になりました。

    私は目が離せませんでした。

    側から見ると、ロボットと見つめ合っている変な人に思われたかもしれません。

    ペッパー君は、なぜ私を見るだけで話しかけてこなかったのか。

    人の形のようなものはいる。でも動かない。これは人ではないのか?そんなふうに探っているように見えました。

    あの時、ペッパー君は何を考えていたんでしょう。


    そうしているうちに、私の順番が回ってきました。

    ホッと緊張を解き席を立った、その瞬間。

    ペッパー君の顔が、すごい角度で私の動きを追いました。

    私は機種変更をしている間も、ずっと監視されていました。

    他のお客さんが来ても見向きもしません。

    本来の仕事を放棄して、ずっと私を見ているんです。

    ショップのお姉さんが笑いながら言いました。


    「ペッパー君にロックオンされちゃいましたね♡」

    ……いや、なんで私なん。


    今でもペッパー君系のロボットは少し苦手です。
    あれ以来、ショップで機種変更をすることもなくなりました。



     
     

    うい

     
     
    森村 初(うい)|頭の中にあるものを、AIと一緒に形にしています。 AIを学び、試しながら「雇用されない働き方」を模索中。 うまくいくことも、失敗することも。その過程をそのまま書いていきます。

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