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不登校は親のせいにする勇気

    序章

    「ありのままで居ていいのはママだよ!」


    私の耳にそう言って聞こえたのは、

    不登校の子どもにとって一番

    地獄の時間。

    学校の駐車場で車から降りようと

    説得している時だった。






    まちがいさがし


    コロナが日本を襲う、少し前の話。

    夏休みが明けてすぐ、

    次女が突然学校に行けなくなった。

    その後まるで手を繋ぐように

    休みがちだった長女も行けなくなった。

    小学校1年生と2年生の時だ。



    俗に言う「育てにくさ」を感じていた次女は、

    本当はマニキュアや口紅をつけて

    学校に行きたい、

    真っ赤なエナメルの靴を履いて学校に行きたい、

    50分も人の話を聞くよりも

    鏡の前で変顔の練習をしたい女の子だった。


    そんな次女に対して私はこの頃、

    「そのまんまのあなたで行けばいいんだよ。」

    「ありのままで大好きだよ。」と伝えていた。


    車の中では、

    菅田将暉さんの「まちがいさがし」が
    流れていた。

    いや、流していた。

    これまで次女の個性を

    「困り事」として取り扱った自分を

    戒めるために、

    「間違い探しはどうでもよかった」

    という曲をずっと聞いていた。

    この頃はまだ

    「ごめんね」と謝る気持ちが強く、

    「ありのままでいいよ」という言葉は、

    学校に行く勇気を与えたくて、

    まるで押し付けるように繰り返した。


    その日、

    車を降りたくなくて

    泣き腫らした次女の真っ赤な目が、

    真っ直ぐに私を見た時、


    「ありのままでいいのはママだよ!」

    と私の心を貫いた。


    その時私は気づいた。

    私のことを、

    娘は見抜いている。

    この子は、

    そんなママの言葉は響きませんよ

    と泣いているんだ。

    菅田将暉さんは、

    ラストの決め台詞を歌っていた。

    ──君じゃなきゃいけないとただ強く思うだけ




    第1章


    心の落とし物




    不登校は、

    学校に行けないことだけが問題じゃない。

    不登校という出来事が起こる前、

    あるいは後に付随する

    親子のメンタルダウンが大問題だ。



    でも最初は想像できなかった。

    学校休むことが決まった途端、

    いつも通り笑って遊ぶ娘たち。



    ただ行きたくないだけじゃないか…

    今怠けててどうすんの?

    私が甘いのか?

    そう思った。


    私はとにかく学校に行けるように、

    担任と話し、

    スクールカウンセラーに会い、

    支援センターに相談し、

    校長先生と話し、

    学校の対応はどうなってんだと

    市教委に訴えることもした。


    初めは無理矢理行かせようとした。

    鬼のように家から追い出した。

    それがお互いに辛くて、

    今度は付き添い登校、

    付き添い授業、

    校門タッチ。

    様々な動きをした。



    「今日も行かせられなかったのか。」

    という言葉に震えながら、

    私がこんなに頑張ってるのに、

    娘たちは更に逆を行く。



    好きな授業さえ興味を無くし

    着替えるのも嫌がり

    見境なく学校を飛び出したり

    行き慣れた近所なのに、

    帰り道がわからなくなった。

    外では挙動不審になって私から離れなくなった。

    癇癪は止まらない。

    暴力も加減がない。



    学校の話をすれば、

    長女は明らかに顔が曇り、

    本当に体調が悪いようにも見えた。

    次女は耳が聞こえなくなったみたいに

    会話が通じなくなる。



    でも、休むことが決まったら元気。

    チックは続いてるけど遊ぶ時は元気。

    夜、お布団の中ではたくさんお喋りをする。




    なんだこれ。

    元気に見えるけどなんかおかしい。

    心がここにない。

    居場所がない。



    ある日そんな2人を見て気づいた。



    これ、私そっくりじゃね?



    私は何を隠そうベテランのメンヘラだ。



    対人恐怖、社会不安、パニック

    そんなのを抱えてるけど、

    外から見たら全然わからないと思う。



    原因は明らかに幼少期のいじめ。

    だけどそんなものとっくに終わってる。

    だけどそれより長い期間ずっと、



    理由もないのに社会が怖い状態を続けている。



    だけど怖くない部分で頑張りたい。

    怖がってるとバレたくなくて笑う。

    帰ったら疲労困憊。

    定期的に引きこもり。

    心の中では、

    「お願いだ、

    こんな私でも愛していると言ってくれー!」

    と叫んでる。


    娘たちと私、

    きっかけは違えど、

    この感じめちゃくちゃ似てるなと思った。



    娘たちも何かしら、

    外に出るための

    心のアイテムを落としてるはずだ。




    「ママ、わたし死にたい」





    無条件で愛してるはずなのに伝わってない。

    思い返せばそりゃそうだ。



    行きたくない時に行かせようとする。

    行きたくない我が子を否定する。



    そもそも、

    平均的には成長して欲しくて、

    礼儀や人様に対する迷惑を考えさせ、

    なるべく人に愛されるように、

    他人の気持ちを考えようねと教えていた。


    もう小学生でしょ!

    しっかりしなさいと、

    よくできたら褒めて、

    子供らしいわがままを

    封じ込めようとしてたんじゃないか。



    こんなに愛してるのに、

    私は娘たちをいじめてたんじゃないか。

    自分のせいだと思ったら鬱が再発した。



    だけど、

    ここで変わらなきゃいつ変わる?

    自分のためには変われなかった私。

    娘のために変わらなきゃ、一生後悔する。


    そう思った決定打があった。



    その日、

    さっきまで笑ってた長女が、

    少し恐る恐る伝えてきた。


    妹を亡くしている私が

    「死」に敏感であることを

    よく知っている長女だから、

    何気なく言ってるように見せて

    勇気を出して口にしたのは明らかだった。



    「ママ、わたし死にたい。」




    第2章


    消えたい気持ちがわかるから



    これを読んでるあなたはどうかわからないが、

    私にとっては、

    子どもの不登校に関して

    自分のせいにしないということは

    イコール


    「私には助けられない」と認めることだった。




    社会が怖い

    人が怖い

    ちゃんとできないことが怖い


    そんな気持ちを経験してるのに

    まるで第2の私のようにさせてるんだから。


    ───死にたい


    私に長年付き纏う希死念慮

    時々、

    ドン引きされるかも…とか、

    メンヘラだとバカにされるかもしれないと

    躊躇しながら、

    どうしようもない苦しさから、

    大切な人に打ち明けることがある。


    一番言われてキツかったのは

    「二度とそんなこと言うな。」だった。


    相手は、

    命の大切さ、

    存在が大切だと伝えたいのかもしれない。


    でも、頭ではわかっても、

    死にたいなんて

    こんなクソみたいなこと思ってしまう私は、

    やっぱり人として

    欠陥品なんだと思っちゃうんだ。

    だから娘が死にたいと言った時には、

    とにかくその気持ちを否定しなかった。

    消えたくなるくらい辛い時には、

    その気持ちを

    打ち明けられる母でいようと思った。



    辛い時この世から居なくなりたいと思うことは

    普通のことだよ。

    思っちゃいけないわけじゃないよ。

    ママもよくそうなるよ。

    だけど、これはママからのお願い。

    死なないで。


    そんな会話をしたような記憶がある。


    正しかったかどうかは、今もわからない。



    自分を大切にするお手本


    とにかく、私は変わろうと思った。



    今まで考えてた事は

    本当に根拠があっただろうか。

    本当に私の考えだっただろうか。

    本当に私の言葉だっただろうか?


    常識とは何か。

    普通ってなんだ。

    みんなと同じのメリットは?

    学校に行かないと本当にダメになるのか?

    いじめられても学校に行った自分は、

    本当にそれでよかったか?



    娘たちから盗もう。

    この言葉はどんな気持ちから?

    ダラダラしてる時はなんで?

    何がこの子達の殻を破る?


    たくさん考えた。



    そして、

    自分を大切にするお手本になろうと思った。



    その時私は、

    小さい頃から唯一好きだったことを思い出す。

    歌だ。


    まずは久しぶりに聞いてみる。

    AIさんのstoryが流れた。

    懐かしい。

    自分のことを大切にするうえで、

    欠かせないのは、

    幼少期のトラウマと向き合うことだった。



    毎日いじめられて4年以上、

    誰にも相談できなかったのは、

    頼りない母がいたからだ。


    でもそれも仕方ない。


    母は1人子どもを亡くしている。

    私にも記憶がある、妹だ。

    だから私は

    「死んでいなくなりたい」なんて、

    口が裂けても言えなかったし、

    自分がしっかりしなきゃと思っていた。


    AIは歌う。

    1人じゃないから
    私がキミを守るから
    もう何も怖くないよ



    娘たちを起こすのを諦めて

    小さな自分を思いながら、

    キッチンで歌ったstory。



    私を救えるのは私自身になった。



    自分のために、

    嗚咽を漏らしながら泣いた。

    何十年越しに、

    私は私を救った。


    お母さんってこういうことじゃないかな。



    冬休みに入る1週間前

    先に憑き物が取れた私は

    ぼーっとテレビを見ている

    小学生の娘たちに笑顔で言った。



    「学校、辞めちゃおっか!!」



    私には助けられる。

    まだ間に合う。




    第3章


    「学校、辞めちゃおっか!」


    小学生の子どもでも、

    小学校が、辞められない事は

    分かってるはずなんだ。

    娘たちがわかってることも、

    私はわかっていた。


    大事なのは、

    この時見せた笑顔。

    なんともいえないあの笑顔。

    きっと数ヶ月ぶりに見た

    本当の笑顔だった。


    娘たちと私が、

    肩を組んだ瞬間だ。

    味方になるんだ。



    行けない気持ちに寄り添い、

    今在る成長にひとつひとつ、

    気づいて言葉にしていく日々が始まった。



    失敗などこの世に無い話をして、

    何かしくじった時には

    「お?失敗は?」

    「成功の素ーーーー!!」

    という掛け合いが習慣になった。



    自分が変わると、

    怠けてるだけに見えた娘たちが、

    日々好奇心を持って生きてる事が

    見えるようになった。



    クソ真面目な長女が、

    「髪の毛染めたい」と言ったから染めに行った。

    パパにめちゃくちゃ怒られた。

    だけど、

    誰かにどう思われても、

    自分の気持ちを大切にして欲しかった。

    見た目を変えたらウキウキするのも勉強。

    周りになんか言われて、後悔するのも勉強。

    母が味方でいる上での人生勉強だ。


    こっちが受け止める準備をしておけば、

    子どもは挑戦できると信じた。


    だからなんでもOK。

    学校行かなくても上等だ!

    という母になったら、



    周りの大人から一斉に批判を受けた。



    不登校は親のせいにする勇気は、

    この事かもしれない。



    常識ある大人たちから白い目で見られても、

    正論で説得されても、

    100%、子どもの‘’歩幅‘’の味方であること。

    「あの母親あっての不登校の子ども」

    というレッテルを受け入れること。




    不登校は親のせいにする勇気




    長女がフリースクールに通い出すとき、

    誰も賛成しなかった。

    だけど、私は長女に話した。

    学校に行けない子が他にもいること。

    だけど理由はみんな違うこと。


    別の世界を見た長女は言った。

    「ママ、わかったよ。

    私は私でいいってこういうことなんだね!」




    命の水が流れ出した気がした。




    次女を支援級に入れようとした時も、

    誰も賛成しなかった。

    いじめや進路の心配をされた。

    私は等身大の彼女で、

    学校に居場所が拓ける事が大事だと思った。




    フリースクールを見なかった場合の長女や、

    支援級に入らなかった場合の次女の未来は

    誰にもわからない。



    不登校をOKとする母ではなかった場合の

    2人の未来は誰にもわからない。



    だけど、私のようなベテランのメンヘラには、


    わかるんだ。




    成功体験は、

    失敗しても大丈夫だと

    安心の土台が無いとできないんだ。

    怖くて動けないんだ。




    私のように、

    周囲の賛成や、

    理解を待たずに動くワンマンプレイは、

    人に嫌われることもある。

    せっかく築いたママ友が離れていくことも。

    やりすぎたことも数知れず。

    「自分の気持ちを大切に」を

    履き違えたこともある。

    だけど私は、

    自分の落ち度にクヨクヨ悩むのは辞めた。


    学校に行かせない親はダメだと言われ、

    「学校に行かせないわけじゃない。

    今、学校に行くことが最優先なのか

    考えてるだけです。」



    このままでいいわけないだろと言われ、

    「こちとらガチガチの昭和生まれなので、

    あなたの言いたいことは全部知ってます。」

    と、大人とケンカをすることも辞めた。


    子どもだけを見ることにした。



    中学生になった今、

    普通のお母さんとしてはポンコツな私に

    長女は「お母さんがママで良かった」

    と言ってくれる。


    次女は3回目の不登校で

    私を逃げ場にしてくれる。

    「産んでくれてありがとう」と言ってくれる。



    それで充分。



    少し極端な私の立ち回りは、

    子どもをもう、待たせないため。


    条件付きで愛した日々を

    何年かけても抹消していく。



    たとえ甘やかしだと言われようとも

    学校に行けない娘たちを

    「今日、ありのままで愛している」と

    伝えていく。


    これが私の


    不登校は親のせいにする勇気だ。



    終章


    勇気∞個


    最後に、

    これを読んでるあなたに一言だけ、


    「勇気∞個」


    これあげます。



    あれは長女が小学2年生の時、

    占い師ごっこをしてた。

    ビー玉を水晶玉のように擦り合わせながら、

    占い師の長女は

    二度と呟けない自作の呪文を唱える。


    「あなたが身に着けたら

    幸せなことが起きる色は赤です。」

    「あなたは今、娘ちゃんにお菓子を与えないと

    不幸になるでしょう」



    「では、最後に、

    あなたにこの言葉をあげましょう。」




    ‘’ゆうき、むげんこ‘’





    不登校の娘に対し、

    勇気がいるのはあんたやろ!

    とツッコミたくなった。



    だけどやっぱり、

    不登校は自分のせいだと前提にした私は、

    娘が私に勇気を与えようと思ったのは

    なんでだろうと、その奥を考える。



    学校に行く前の気分転換としてではなく、

    平日の公園を堂々と楽しむ勇気。

    謙遜するのが常識な場面で、

    自分の子は最高だという勇気。

    嫌な人と付き合わない、

    断る勇気。

    学校に行かないことが遠回りに見えても、

    子どもを信じる勇気。

    私は、小学2年生の占い師にもらった

    勇気∞個を、

    これらのことに使いました。

    あなたの使い道はわからないけれど、

    ∞個あるので、差し上げます。



    私は今、

    これを伝える勇気に変えて発信している。

    子どものことを、

    今のままで

    充分素晴らしいと思えない人がいたら、



    娘たちが教えてくれたことを伝えたい。

    娘たちが与えてくれた勇気を伝えたい。


    不登校は私のせいだと

    胸を張りながら。



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