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もう戻れないからこそ愛おしい。「サウダーデ」という言葉

    翻訳できない、その言語でしか表せない言葉って、ありますよね。

    日本語だと、「侘び寂び」とか。
    古いものや廃れていくものにも趣きを見出す、
    そんな微妙なニュアンスを表す言葉。

    そういったものに美を見出すのは日本文化
    ならではかと思ったら、あるポルトガル語の
    美しい言葉に出会いました。


    「サウダーデ」。

    最近お気に入りのNetflix、
    「腹ぺこフィルのグルメ旅」という旅番組の
    リスボン編で出会った言葉。


    英語で言うと「ノスタルジー」、
    日本語で言うと、「郷愁」や「懐かしさ」。

    でも、この言葉が表現するものは、それだけではないようです。


    過ぎ去ってしまった子供時代の、
    親や家庭に守られていた温かい記憶、
    昔の恋愛、離れてしまった友人…


    そういった、もう戻れない過去を懐かしみ、
    慈しむ気持ちと、戻れないからこそ抱く愛しさを表しているそうです。



    ポルトガルは、大航海時代から海運で栄えた国。

    船乗りも多く、昔は航海に出れば二度と帰ってこられないこともありました。

    だからこそ、人や故郷を懐かしみながら生きる、覚悟のようなものが、この国の文化の中に
    根付いているのかもしれません。


    サウダーデという言葉は、単なる懐かしさ
    ではなく、失ったものへの愛しさも含んでいる。

    そう聞いたとき、
    私の頭にいくつかの顔が浮かび、

    過去は戻らないけれど、喪失や変化を
    「乗り越える」のではなく、それを懐かしむ
    気持ちも丸ごと受け入れて、それでも前に進もうという考え方が、すとんと腑に落ちて、自分の
    過去が救われたような気持ちにもなりました。



    しっかりしていて優しかった祖父が大好きで、
    毎週のように会いに行っていた子供時代。

    そんな祖父が認知症になってしまい、その事実を受け止められなかったときのこと。

    恩返しすべき時だったのに、どう接していいのかわからず、施設への足が遠のいているうちに、亡くなってしまったこと。




    高校時代、受験勉強で悩んでいた私を支えてくれて、いろいろな話をし合える仲だった友人。

    大学に入って環境が変わり、支え合える関係だったはずが、就職や将来への焦りから、
    いつの間にか相手の幸せを素直に喜べなくなって、疎遠になってしまったこと。

    ハッピーエンドでない思い出は、
    どうしても苦い記憶になりがちだけれど、
    自分や相手の考え方や環境が変われば、
    思い出の捉え方も変わったり、
    違う形でつながり直せることだってあるかもしれない。

    たとえそうならなくても、その思い出の輝きが
    消えるわけではない。

    むしろ人間関係も人の心も、人の命も、
    常に変わっていくものだと分かっているから、
    輝いていた思い出をいつまでも大切にできるのかもしれない。

    生きていたらきっと、たくさんの出会いや別れがあって、輝かしい過去や思い出したくない記憶もあって。

    過去に囚われていたら進めないけれど、
    過去の思い出が自分を助けてくれることもあり、忘れたい疎ましい記憶が邪魔して、前に進むことを阻むこともあり。

    それでも、懐かしくて愛おしいけれど
    戻れない過去、もう手に入らないものたちの
    記憶を抱きしめるようにしながら、
    今持っているものや、今周りにいる人たちと共に歩んでいくこと。

    それが「サウダーデ」なのかもしれないと思いました。

     
     

    Mayu

     
     
    近くも遠くも、一人旅。 旅の景色や出会い、感じたことを綴ります。 海外旅行も、近所の散歩も、 私にとっては「今この瞬間を味わう旅」。 その日だけの景色、一期一会、季節の動き。 拾い集めた景色や言葉で、誰かの心を少しゆるめられたら嬉しいです。 海と温泉、鈍行列車の旅が好き。

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