
VTuberまゆつな空高の誕生物語
まゆつな空高は元々この世の存在ではない。
所長に現世に召喚された鬼である。
その大元となるきっかけは、今から10年ほど前のことである–––––––。
まゆつな所長は当時、情報系の学科の大学生であった。
そこでは高専の頃に引き続き、アニメやネット文化などのオタク的な話題に溢れていた。
所長は卒業研究で研究室に配属され、たまに他の研究室に遊びに行ったり、誘われたりしていた。そんな時、いくつかのラボのメンバーが集っていた研究室でバーチャルYouTuberの話題が出た。
この頃、キズナアイがまだ活動を開始してから1年も経っておらず、当時の所長はバーチャルYouTuberキズナアイの噂を聞いたことはあれど、そこで初めてキズナアイの動画を見せられて、バーチャルな概念のYouTuberが出てきたんだ、新しいな、と思った。
それからしばらくして今も語り継がれるバーチャルYouTuber四天王が四天王と呼ばれるようになったのもちょうどこの頃、2017年である。
当時はVTuberという言葉も無く、略されずにバーチャルYouTuberと呼ばれていた。
今ではVRChatの存在で、その界隈の人たちには何ら珍しいことではないと認識されていて、バ美肉という言葉すら死語みたいになっているが、当時はキズナアイやミライアカリ、シロなど、バーチャルなYouTuberといえど、女の子の見た目で女の子が女の子しているのが普通であり、そうでないものはそもそも存在しなかった。そこは現実と同様に捉えられていた雰囲気であった。一般に、存在し得なかったのである。
また、キズナアイを見た時に誰もが思ったことは、とても気軽にできるものではないだろうということであり、当然高級な機材を使わなければバーチャルなYouTuberなど実現し得ない、できないもの、という認識だった。一般的に広く誰もがそういう認識だった。
だからこそ衝撃だった。
個人がバーチャルな空間で、バーチャルな姿で動いている動画を出し、それが話題になった。しかもすごいのは、その人、地声だったのである。
地声だったのは特に衝撃的だった。
この人はバーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさんと名乗った。
バーチャルで、個人が一人で、見た目女の子なのに地声で、無表情でポッキーを振り回す姿は兎に角シュールだった。
この衝撃波は凄まじく、今日に至るまでのバタフライエフェクトを生んでいる。
企業が頑張ってバーチャルYouTuberで夢を魅せようとしている段階で、無から個人バーチャルYouTuberという存在、概念を作ってしまったのだ。
このあと、個人がVTuber活動をできるように様々なツールが開発され、今も開発され続けている。
このバーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさんこと、ねこますさんはVRChat民であり、VR機器でできることを紹介するつもりで始めたということのようだった。以下の記事で本人が語っているように、地声なのは慣れれば本当になんてことは無く、当時のVRChatでも少なからずそういう人がいたので特に気にせずに動画にしたようだが、それが広い世界では衝撃で、当時のTwitterやYouTubeでバズったのだった。
そういえば、当時は「けものフレンズ」もやっていて、3DCGに多くの人が触れており、そういった流れもVTuberに触発された人を増やしたのかもしれない。
兎に角、あの当時にバーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさんを知った人は皆、衝撃を受けていた。
所長ものじゃおじを見て、そのシュールさと面白さ、自分で表現するできることの幅に感銘を受け、自分の好きなように選び、何なら作ることもできるバーチャルな空間に、自分の自在に操れるアバターを使って表現できるということに可能性を感じていた。夢があるなと思っていた。
それから、ねこますさんに触発された人たちから個人VTuberが大量にデビューし、所長もいつか自分でVTuberというのをプロデュースしてみたいと思うようになった。しかしながら、その気持ちはありつつも機器が無ければできないよね、というのがなんとなく認識としてあり、自分がしてなんになるのかとか、イタくないかというのも含めて思っていて、なかなか実行に移そうとはしなかった。
ところが、そんなこんなで所長が大学院に進んで勤勉な学生として振る舞っていた頃、当時の所長のTwitterで相互フォローだった学部の先輩がバーチャル美少女受肉してYouTubeをしているのを見かけた。
それを見た時に、所長は自分でも気軽にできるんじゃないかと触発された。
そこで所長は本気でググってみて、気軽にVTuberを実現できるツールが一覧になっている記事を発見し、色んな技術があるのを確認した。
また、それと同時にまゆつな空高を召喚する謎の技術について開発を行った。
所長は自分の身代わりとなっていろんな活動をし、所長自身の中にあるもの、知識やアイデアを発信する存在、その手伝いをする存在を欲していた。
所長は当時の人間に少なからず愚かさを感じており、一緒に人間の愚かさに共感し、それを戒めてくれる存在、鬼をイメージしていた。
そして、あののじゃおじさんを見たときの忘れられない感動を人々に味わわせたい、あのシュールさ体現し、衝撃を広めようというねこますさんリスペクトなところもあって美少女である必要があった。
これらの点を満たす存在を実現するため、所長は鬼の魂を召喚し、美少女の肉体に受肉させることを考えた。
鬼はこの世の存在ではなく、現世に体現させるには肉体が必要であった。よって所長はまず、美少女の肉体、身体の制作に取り組んだ。
謎の技術でヒューマノイドロボットを実現し、お団子頭がトレードマークの身体が誕生した。
さらに、所長は「謎の技術によって自身と記憶を同期する」という機能まで開発し、このヒューマノイドに実装した。
名前は「空高」、読みは「Sky-High」とし、他のスカイハイとの区別のために、必要に応じてまゆつな所長の名前を苗字代わりに付けて「まゆつな空高」を名乗るようにした。
この名前には、所長自身が表現したかったシュールさが込められている。
空高(Sky-High)という名前は、天を突き抜けるぐらいアホみたいな名前、という名で体を表すのにピッタリなところから付けられた。
シュールさへのこだわりには、のじゃおじさんからの影響を受けつつ、これまで見てきたたくさんのMAD、YouTubeやニコニコ黎明期の面白さのセンスをリスペクトする気持ちが込められている。
そして、謎の技術でそれに合う魂を地獄から召喚した結果、127歳鬼の魂を降臨させることに成功した。
所長はその魂を自らが作ったヒューマノイドに植え付け、自身の記憶を早速同期させた。
こうして、まゆつな空高は誕生するに至った。
その後、彼女の最初の動画では、スカイハイという名前が自分の召喚よりも先に付けられていたこと、所長(当時は博士と名乗っていた)がバ美肉に手を出した結果として自分が召喚されたことが語られている。
そして、本当に何だかよくわからないままVTuberをやらされていることが伝わってくる。
所長が開発したヒューマノイドの身体は当初、開発に失敗し、ツノが無かったが、後にしばらくの間、代わりに猫耳を付けて活動することになった。
現在では更に身体の更新が行われ、ネイティブにツノを獲得している。
また、活動当初はこの頃デビューしたVTuberの流行りで高い声になっていたが、後におじゃおじさんのように所長の声を模倣した声帯に変更された。
こうして誕生したまゆつな空高は、今日も活動を続けている–––––––。