
スターさんのBLT
VIPの2組のご夫妻が来日した。ご主人様同士はハーバードのご学友。でもこの2組のカップルは全く違った。
まずF夫妻はお肉が苦手で、スター夫妻は魚貝類が苦手。
これはガイドにとっては本当に頭が痛い。
この食事制限を満足させるべく、予約が入っていない日は、各日の行程上都合のいいホテルのレストランを予約した。グランドハイアット、パレスホテル、椿山荘。
そして椿山荘で事件は起こる。
「私はBLTが良いわ。」とスター夫人。「でも、ベーコンとトマトとレタスは取ってね」と続ける。
ってただのチキンサンドじゃん、って心の中でツッコむ。
サンドイッチが届く。スター夫人が一口かじる。そして叫んだ。
「私が嫌いなものはこの世でマスタードだけなのに、このパンにはマスタードがぬってある!」
は?マスタードだけ?ベーコンとレタスとトマトは??
もちろん誰もツッコまない。
その瞬間、スター夫人はそのサンドイッチをお皿に投げ捨てた。
それをみたスター氏。「マスタードが付いているのは片側のパンだから、それは食べなければいいんじゃない?」
「もうチキンにマスタードがついてる!」
と、奥様。
その騒動を見ていたウエイトレスが、サッときて「お作り直し致します」とお皿を引いた。
そして、スター夫人希望通りの「BLT」が提供された。マスタード、ベーコン、レタス、トマト抜き。
ちなみに、B=ベーコン、L=レタス、T=トマト。
その10日後、友人の誕生会で同じレストランに呼ばれた。
座ったテーブルは奇しくもあの時と同じ席。
そしたら、あの時のウエイトレスさんがいた。
声をかけて、「その節は」と、お礼を言うと、あちらも覚えていて、
「あの時は本当に大変でしたよね」と、二人だけの秘密を共有するみたいに笑い合った。
関西でスターさんを受け持ったガイドのミチさんとたまにお客様の話をする。
「スターさんよりまし」「スターさん並み」
スターさんは私たちの基準になった。
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