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Photo bykawachinbooklog

はるか昔の私が描き散らしていた、小説っぽいものを供養する

    いわゆる中二病な時期……というのは誰にでもあるかと思います。…え、ない…?

    とりあえず私にはありました。


    今でこそ日常系イラストレーターとして活動している私ですが、昔は、まっっっっっっっったく違う作風のものをたくさん、たくさん書いて、描いていました…。もちろん、違う名義でです。

    特に二次創作をみっちりやり込んできた私は、原作がコメディの漫画を大改造するような、いかにもなオタクでした。陰鬱シリアスや転生パロとか大好物、ほんのちょっとのシリアス要素をキャッチしては大増幅させ、世界中を敵に回しても貴方だけは、みたいなやたら壮大な世界観に改変するとかそういうのを読むのが大好きな、典型的な黒歴史生産者&愛好者…だったのです、はい。

    当時はイラストだけでなく、小説やら手描きMAD動画やら、ありとあらゆる創作手段で妄想を炸裂させていました。毎日のようにpixivを見に行き、ニコ動を見に行き、同人誌を買い漁る日々。記憶はおぼろげですが楽しい時間でした。今でも、pixivではその断片を見ることができます。

    …正直、今はもうそんなガッツはないです。世界ネコ歩きを観ながら、のんびりお茶するのが楽しい日々。


    今回書き残すこの〝物語の断片〟は、そんな中で生み出したものです。
    パソコンの片隅にデータが残っていました。


    高校くらいのころ、私は〝古文を作る〟ことにハマっていました。
    なんのこっちゃと思われると思いますが、本当に授業中や放課後、勉強そっちのけで〝新作の古文〟を書くことに熱中していたんです…。

    今となっては、自分でもどうやってたのかまったく思い出せません。

    ただ日夜、国語便覧や古文の副読本ととにらめっこしていて、なんか楽しかったことは覚えています。

    ▽たしかこんな感じの副読本だったかと…

    小説としては体をなしていない、途中でぶつっと終わってしまう、オチもない短い文章ですが、当時の私が一生懸命(?)書き残したものを、お蔵入りさせたままなのはもったいないので、今の私が加筆訂正のうえ、この場を借りて残しておきます。

    ジャンルとしては、平安時代が舞台のホラーミステリーとでもいいましょうか。それを現代の青年が紐解いていく、という形で書こうとしていたようです。
    アニメにもなったジャンプ作品「逃げ上手の若君」をご存じの方なら、ニュアンスはあれをさらにドロドロ暗~くしたような雰囲気のものです。
    書いていた当時は確か、大河ドラマ『平清盛』の放送中で、色濃く影響を受けていたと思われます。
    お暇つぶしにでもなれば幸いです。




    幽鬼の滓


    プロローグ


     のちに〝幽鬼の滓(おり)〟と語り継がれることになった彼は、長元5年、つまり1038年に生まれ、永承7年、つまり1052年に没した。わずか14年の生涯である。
     
     ちょうど藤原頼通が関白として権勢をふるっていた時期であり、永承6年には前九年合戦が勃発した。そして永承7年、これは浄土信仰で末法、つまりこれから天下が乱れると考えられていた時期だ。この年に頼道は平等院鳳凰堂を建てた。そんな時代に幽鬼の末裔・霧という少年は、あやかしの世で権勢を誇っていた幽鬼の首長の長男として生を受けた。しかし寛徳5年、すなわち1048年、彼が10歳のとき〝あの忌まわしい事件〟が勃発。波瀾万丈の四字ではとても言い表せぬような、過酷で残酷な運命を辿ることとなる。
     
     彼は最期にこう言い遺したとされる。
     
     語り部の老人はふぅ、と深く息をつく。ゆっくりと古い本を閉じる、深く皺が刻まれた手には、図書館の天窓から細く光が落ちていた。
    「『此処は地獄、末法の世―――』」


    第1章         古文書


     歴史などというものは、常に勝者が作るものだ。分かりきったことだ。
     後になって研究でわかるものがたくさんある。それまでの常識が根底から覆るなんてこともある。大河ドラマですら、昔放送されてたやつと最新作では同じ人物の解釈が全然違う、なんてこともありうる。
     しかしそんなことができるのは、記録が残されていたり、痕跡があったりと『手がかり』があり、新たに発見されたりすることもあるからだ。

     では、その歴史の裏に、記録も、痕跡すら残されず、忘れ去られていることがあるとすれば?
     それは完膚なきまでに叩きのめした勝者と、叩きのめされた敗者がいるということだ。でもその存在を後世で知ることは、不可能に等しい。
     
     
     
     実家の古い蔵で、紙魚だらけのぼろぼろのそれを見つけたのは、本当に偶然だった。
    「ね~かーちゃん、あれってどこだっけ?」
    「あれって?」
    「蚊やり豚だよ。昔使ってたやつ。居間には電気でやるやつ使ってるから使ってないだろ?」
    「そげだねえ、もうずいぶん使っちょらんねぇ。でもいまさら何に使うの?」
    「俺の部屋には蚊に対抗できるものなんもねぇんだよ…」
     大学の夏休みに、お盆の墓参りを兼ねて実家に帰ってきた俺は、さっきも見た押し入れをまた覗き込んで、困ったなと頭を掻いていた。
     俺は蚊が嫌いだし怖い。なによりあのしま模様といかにも蚊、なフォルム。音を聞いただけで身の毛がよだつ。部屋に一匹侵入を許そうものならその夜はもう寝れない。俺にとっては死活問題だ。
    「たぶん蔵だと思うよ。いらないものぽんぽん放り込んじゃってるし」
     ……えぇ~、蔵か~……。
     ……という本音が顔に出そうなのを、俺はぐっと飲み込んだ。あそこ苦手なんだよな。暗いし埃っぽいし、なんか出そうだし。だから数えるほどしか入ったことがない。

     親に鍵の場所を聞いて、親も場所を忘れて探し回るひと悶着のあと、ようやく俺は錆びた錠前を手に、庭の奥にある蔵へ向かった。

     蔵はいかにも昔の商家なんかにあったようなやつだ。白い壁は夏の日差しがビカッと反射して眩しいので、正直この時期、庭に出るのは苦手だ。隣には立派な松の木があって、蔵ができたころに植えられたんかな、となんとなく思っていた。
     蔵の観音扉には家紋が入っている。炎みたいな文様だ。法事やら結婚式やら、本家であるうちに集まる親戚たちはいつもこれが入った着物を着ていた。でもこの家紋の由来は知らない。まぁ、炎に思い当たるふしはあるんだけど。
     南京錠を外し、手をかけた土壁の扉は、想像以上に重かった。入ったのは、いつも他の大人が開けてるときだったからな。などと考えながら、ギイィ…と重たい音を立てる扉を最後まで引き開けた。


     長らく閉ざされていただろう空間に陽が差し込み、床の埃が舞う。めんどくさがりな母が物を置く場所なんて限られているだろうから、入り口近くの棚や箱を、順番に覗き込んでいった。置いていった昔の教科書から、乗らなくなった自転車まで、いろんなものがある。
    「お、あったあった」
    お目当てのものはずいぶん埃をかぶっていた。軽く持ち上げただけでぶわっと粉が舞う。
    「うわっ、ぺっぺっ!」
    慌てて手近な古めかしい棚に豚を置いた、そのときだ。

     その棚にはいくつか行李が並んでいる。その一番奥、ひときわボロボロな行李の上に、まるで誰かが抜き出してポンと置いたように、古ぼけた和綴じの本が一冊、のっていた。
    「……なんだこれ」
     
     手に取ると、行李に降り積もった埃が舞ったが、その本の表面は思ったより綺麗だ。かなり年季が入って、今にもボロッと崩れそうではあるが。


     ……いやいや、親も鍵の保管場所忘れるくらい長年放置されてた蔵だぞ。なんで、今しがた引っぱり出したような古本があるんだ。
     薄気味悪さを感じ戻そうとした。が、ちょうど隙間から差し込んだ陽が本にあたって、表紙が見え、その手を止めた。

     かなり古いもののようだが、授業で観てきたいろんな古文書に似て、上等な和紙が使われているようだ。掠れているが題字にはかすかに『印李紀文』とある。ほっそりした筆致だがなかなかの達筆だ。

     こんな古めかしくて興味をそそられるものを手に取って、中を見ないわけにはいかない。これでも俺は、昔は神童ともてはやされたくらいの活字中毒だった。今は見る影もない、無気力ないち大学生なのだが。
     しかも、もしお宝だったら、あの鑑定番組に出られるかもしれない。もし値打ちものだったら、その金で念願のバイクを買えるかも。そんなよこしまなことを考えた。
     薄暗い蔵の中で、漏れた日が差し込んで字が読め、乗っても壊れなさそうな茶箱を見つけて腰を下ろした。ぼろぼろで今にも崩れそうな和紙を破らないように、そっとページをめくる。 

     中の文字列も題字と同じ筆跡だった。親に流されて大学に進み、楽そうだからという理由で人文学部を、はたまた人少なくて楽そうだからと古文ゼミを選んだ俺にも、だからこそ、なんとか読むことができた。


     今は昔、我わかき頃、かの霧公おはしける。公は一族のまつりごたせ給ひし殿の御子息なり。我公に仕ふこと十年ばかり、常ならば千年ながらへ給ふべけれど、御年十五にしてかくれさせ給ひけり。幽鬼は人の出でし前より日本国なりたるも、人の世になりて、物の怪のたぐひ、みなみな衰へたりけり。
    なれば、日出露覇殿の、御世継ぎ生まれ給ひけるの知らせ、くらき世の一筋の光となりけり。我公のをさなき頃より仕へ侍りて、つひに元服の日を迎えけり。されど、時に威ふるいし西妖国の炎鬼の長、殿を殺し、公をせちにその駒としたり。世のことはりとはいかなるものにか、その後五年に及ぶ年月の間に、よろづともつかぬ事ありけり。さて、公の御身の上にありしことごと、これよりつまびらかに書き記さん。
     寛徳五年、皐月のつとめて、公の元服の日近し。いとめでたき者にて、村人のみならず、異郷が人もこぞり参りて祝ひけり。「昔は赤子なりきものを、かくもきよらに、ねび給いしものかな」と、公を知る一の国の長言い給ふを、「さはあらじ。おのれ、父上には及ばざるなり」とて、赤面し給ひけり。公、本草の学びにも長けたれば、日ごろ薬作られしあやしき者ども、知らせ聞きて、いそぎまうでて、わづかなる米など奉る。
     あすは元服なる日、腹の痛み愁う者あり。かかれば、倉なる草葉取り出だし、木陰にて煎じ給ふ。をさなき頃よりなじみたる多良奴、咲良、春女、善雄などおのおのがた、そのわざ見んとて、また公とうわさ話に興ぜんとて集まりけり。だいぶ時行きて、七つ半をまわりし頃、叫びて公のもとに駆け参る者あり。「殿より御ことづけあり。七つ半より陰の刻に入るゆえ、やがて内に入らるべしとのおおせなり」とぞ申す。公、火を止めさせ、各々帰らせんとすも、ふと、林中のくさむら、いらなく動きけり。「中に何者かあらんか」とて、息ひそめてまもり給ふに、あらはれしは以津真天なり。こは人の怨みのこころより生まれしものなりて、それぞれに異なる姿をとるものなるが、公の御前に出でしものは、宋なるらむ虎なると見ゆ。げに恐ろしくたけりて、十八、九とおぼしきをのこにのしかかりて、喉を喰ひちぎらんとす。をなご、みなずちなくて退き、公、をのこなどは弓うちけるも、皮鉄のごとく厚ければにや、倒るるけしきなし。刀抜きさけ給ひ、うち振りければ、真天の目公に向きけり。公、剣ふりてひきつけつつ指の矢うち給へば、額をぞ貫きたりける。をのこ、公の御前に参りて、「いとかたじけなし。われは西妖国の宰相なり。こを過ぐるは、出雲の国に用あればなり。我心より礼をぞしたき。君の名は」と言ひけり。公、「我が名は霧なり」と応ふれば、をのこ、しばし公をうちながめて、「霧。きっと覚えたらむ」とて、けしきありげにものしたりけり。公、心得ざるままにて見送り給ふも、いみじきことならむやうにて、気に留めさせ給はざりけり。気づきけるほどに、のちのち来たること悟りたらましとなむ、今も悔やみたる。


     どうやらこれは、なにやら高貴な方に仕えていた『印李』という人物が書いた随筆らしい。読み方はインリー、で合っているのか。主人の名は『霧』というらしい。主人が幼いころからこの人は仕えていたようだ。今は昔、という書き出しから、日記ではなく回顧録だとわかる。霧は衰退する一族の中で待望の世継ぎで、薬師でもあり、剣技の腕も相当だったらしい。元服の日を迎えたところから話が始まるようだ。そしてこの印李という人は、なにかを後悔してこの記録を残すことにしたと。
     それで「物の怪」やら「幽鬼」「炎鬼」「以津真天」やらしれっと出てくるパワーワード。あの水木しげる先生と近い地元なんだからわかる。どうやら人間の話ではないらしい、ということだけ分かった。
     怪談か?いやそれにしても文体が古い。平安時代って感じの文章だ。しかも書いてる本人の回顧録っぽいから作り物っていう感じもしない。源氏物語とかとは明らかに違う。
     
    ……あ~、これ、これ以上、自力での解読はちょっと無理だ。ひとしきりうんうん唸ったあと、そう悟った。
     大学の授業をもうちょっと真面目に受けていれば…と、今さら後悔しても仕方がない。こんな達筆な古文なんてチャッピーでも解読はたぶんできない。そもそも掠れまくった古文書なんて文字がカメラに映るかも怪しい。こうなったら、アナログだが先人の知恵を借りるしかない。


     それで、もしかしたら小学生以来かもしれない町の図書館に、足を運ぶことにしたのである。






    【メモに残っていた断片的な設定集と台詞集】


    ・大学生の〝俺〟(名前は書いた時点で設定なし) 実は幽鬼を滅ぼした炎鬼と、陰陽師の末裔。先祖返りで火おこしの能力がある。

    「……悪いけどさ、なんであんたらが滅んだのか、わかったよ」
    「いい悪いじゃないんだ。ただそう在ったということ。それだけを俺は未来に届ける。俺にはその義務があると思う」

    ・霧は、最期は「幽鬼を生かしておいたせいで天が怒り世が乱れる。生かしておいたのは間違いだった。それを鎮めるための生贄」という名目で処刑された。

    ・図書館の老人の正体は、霧に仕えていたインリー。
    実は語り継いでいるのは彼だけで、なんとか自分の一族の記録を繋ぎ止めようとしていた。図書館にあった本は彼が自費出版したもの。

    「確かに生きていたのに、ここにいたのに、なきものとされ、忘れ去られる。その辛さがわかりますか。」

    後になってみれば、幽鬼は昔の威光にしがみつき、頑なな考えのために身を滅ぼした一族だった。

    ・炎鬼 幽鬼と敵対していた勢力。人間(陰陽師)と手を結び(式神となり)、幽鬼は人間の脅威になるとそそのかし、幽鬼を滅ぼした。炎鬼の長は気まぐれで霧のみを生かし(彼を器量よしで使えると評した)、自分の手駒として利用する。
    当時はあやかしは人間より上位で、相容れない存在という考えが主流だった。見方を変えれば先見の明があったといえる。

    ・蔵に残されていた古文書には「捨てても戻ってくる」呪いがかけられていた。

    「なにそれ呪い人形じゃん…」と〝俺〟はドン引きしていた。






    ここまでです。なんとも中途半端なところで終わってしまいました。

    正直自分でも、この先の展開をどうしようとしていたのか、ぜんっぜん思い出せないのです……。なのでこのお話はこれで終わりです。

    最後までお読みいただき、ありがとうございました。




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