
現代妖怪図鑑① 現代の恐怖に、名前をつけることにした。
電話口で「息子が事故を起こした」と言う声がある。
会議室で「そんなこともできないのか」と言い続ける上司がいる。
大学の廊下で「君は特別だ」と囁く教授がいる。
セミナー会場で「今だけのチャンスです」と熱気を作る人間がいる。
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これらに共通することが一つある。
名前がない。
ピンとくる名前がないから、実感を持てない。名前がないから、対策できない。名前がないから、笑えない。
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昔の人間は、名前のない恐怖に名前をつけた。
それを妖怪と呼んだ。
川で子どもが溺れる恐怖を「河童」と呼んだ。山で人が迷う恐怖を「天狗」と呼んだ。村の掟を破る者を「鬼」と呼んだ。
名前をつけることで、恐怖は「扱えるもの」に変わった。笑えるようになった。身を守れるようになった。世代を越えて伝えられるようになった。
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現代にも、名前のない恐怖がある。
この図鑑は、その恐怖に名前と姿を与える試みだ。
一つだけ、守ってほしいことがある。
罠にかかったのは、その人が悪かったからではない。妖怪の設計が巧妙だったからだ。
被害者を責めない。加害者を個人として叩かない。妖怪という「システムのバグ」を笑いながら解剖し、身を守る知恵を共有する——それがこの図鑑のグランドルールだ。
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笑えるほど、人の記憶に残る。
記憶に残るほど、身を守れる。
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現代妖怪図鑑 原案・著作:松ノ尾トラスト|山田宗平
本シリーズの二次利用・改変・配布は自由です。その際は「原案:松ノ尾トラスト」のクレジットを明記してください。
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