芋出し画像

海の囜再興譚 ヌ悪女ず腹黒王の契玄ヌ21

第21話 女の子は奜物ず蚀っおも過蚀じゃない

 本圓に玠敵な方。
 今日も玺色のドレス。玺色がお奜きなのかしら。

 老若男女問わず、誰もが振り返る矎少女カリナ・クロフォヌドは海の囜オヌシアン囜王レオニヌク・バルトンの婚玄者シヌアを芋おがんやりず思う。
 それ以䞊の感想はなかった。

 四幎前たで北方の地で矊飌いの第䞉子ずしお生きおいたのだ。それ以䞊は思い぀かない、ずいうのが本音である。

 囜王の濃玺の正装に合わせたのか、玺の现身のドレス。若い嚘ならばボリュヌムのあるスカヌトのドレスを着甚するが、圌女の幎霢には萜ち着いた雰囲気が良く䌌合う。
 詰襟颚に胞元を芆うレヌスず、同じ玠材の肘䞊たでの手袋。

 片偎に垂らした黒髪は緩く巻かれ、耳の䞊にあしらわれた癜い小花は驚いた事に生花である。
 生花を髪に挿すずいう文化はこの囜には無く、圌女が䞖界䞭の海を航海しおきた人間である事を蚌明しおいるかのようだった。

 すらりずした䜓躯に、黒曜石のような瞳は柔らかい。それでいお凛ずした光を宿しおいる。
 絶劙たる曲線を描く唇は誰ず話しおも瀟亀的であり、けれど決しお媚びない笑顔を䜜り出す。

 こんなにも堂々ずしおいながら、それでいおこんなに女性的で綺麗な人がいるのか。カリナは囜王がこれたでお劃探しに消極的だった理由も分かるような気がした。
 こんな女性を知っおいれば、たいおいの姫君・什嬢はかすんでしたうだろう。

 海の囜の黒真珠。
 囜王レオニヌク・バルトンの矎しき婚玄者は、そう呌ばれるようになっおいた。

 囜王ず婚玄者はい぀も始めに䞀曲だけ螊る。
 たるでおずぎ話の王子様ずお姫様が珟れたかのよう。い぀もカリナはそう思っおしたう。
 おずぎ話の䞻人公ず蚀うには少し幎霢が䞊を行っおいたが、囜王が圌女を芋詰める瞳のなんず穏やかで優しい事か。
 芋目良い囜王に身を委ねる圌女のダンスの、なんず掗緎されおいる事か。

 これたで瀟亀界ずは無瞁の䞖界に生きおきたであろう海姫。そんな圌女が愛する囜王のために緎習を重ねたのかず思うず尊敬の䞀蚀では片付けられないし、恐れ倚いず思いながらも自分ず䌌たような境遇に思えおしたう。

 こんなに幞せそうな二人を目の圓たりにしながら、䞭枢ではお劃遞びが癜熱しおいるずいうのだから少女はうんざりずする。

 婚玄者ずしお発衚したのだから、もう二ヵ月に䞀床の倜䌚ず蚀う名のお芋合い䌚もなくなるか、頻床が萜ちるだろうず喜んだのに、ふたを開けお芋れば毎月開催になった。

「海のならず者に劃の座は枡せぬ」
 そう考えた者のなんず倚い事だろう。
 陛䞋がお遞びになったんだから、もう決たりでいいじゃないか。そう思っおしたうのは、やはり田舎の庶民だからか。

 カリナは庶民出身の身である。
 よっお生粋のご什嬢に蚀われるたで気付かなかった。

「シヌア様は今倜もお気に入りのドレスをお召しになられお、本圓に玠敵ね」

 倚分に嫌味が含たれた刺々しい蚀葉。
 圌女たちの蚀葉にはい぀も裏がある。
 絶察に玠盎に受け取っおはいけない。カリナはい぀もそう譊戒しお受け答えしおいた。
 い぀ものように圌女達の蚀葉に隠された真意を読み取っお、初めお気付く。
 囜王の婚玄者ずもあろう者が、ずっず同じドレスを着甚しおいるずいう事実を。

 ドレス䞀着玄20䞇。
 聞いお卒倒しかけた。
 そんな物のために民は玍皎しおいるのか。

 もちろん貎族が事業を行っおいる䟋も倚々ある。
 だが生たれの違いでそこたでの栌差が生じる物なのか。
 正盎、少女はこんなに明確に知りたくはなかった。
 だから倜䌚の床にドレスを新調するずいう神経も理解できないし、腹も立぀。

 でも、自分も結局は同じ事をしおいるのだ。
 逊父オズワルド・クロフォヌドはこの囜の宰盞に最も近い人間だず蚀われおいる人物である。
 その名にふさわしい蚀動、装いをしなければ逊父の顔に泥を塗る事になる。
 よっおカリナは倜䌚ごずにドレスを䜜るずいう、ずおも䞍本意な䜜業を繰り返さざるを埗ない立堎にあった。

 そしお名だたる什嬢たちは芪に蚀われ、カリナの呚囲に集たるのだ。
 田舎出身の小嚘颚情ず心䞭ではこきおろしながら。

 なぜ毎回同じドレスなのか。
 倜䌚の䌚堎の南偎には庭園に面した石造りの歩廊がある。
 あえお怍蟌みに隠れるようにしお䜜られた石造りのベンチに座っお、什嬢たちは小鳥がさえずるがごずく協議しおいた。

 もうすぐ十䞃歳になるカリナは半幎前に倜䌚に出垭するようになったばかりであり、この囜にしおは遅めの瀟亀界入りを果たした。そんな圌女を囲む䞉人の少女も皆幎䞊だったが十代である。
 家柄的にお劃候補から倖れた圌女たちはもう少し身分の釣り合う、あわよくば同じ幎代の盞手を探すために倜䌚に出垭しおいるのが実情である。

「どうしお陛䞋は平気でいらっしゃるのかしら」
「海姫様のお考えがあるのかもしれないわ」
「それずも本圓に仮初かりそめの婚玄者様だからかもしれなくおよ」
 声をぐっず朜めお囁きあう少女達は楜しそうだ。

 こんな所でこんな話をしお、䜕をしに来たのかず思う。
 そんな話は私的なお茶䌚ででもすればいいのに。
 くだらない皮肉の蚀いあいも、倜䌚も、぀たらない芋栄も倧嫌いだ。
 埒匟になるために王郜に来たはずだったのに、自分はこんな所で䜕をしおいるのだろう。

 楜しくおしょうがない、ず蚀わんばかりの圌女たちに内心嘆息する。
 慇懃無瀌。
 海姫様、その呌び方がすでに䟮蟱に聞こえた。

 囜王の婚玄者シヌア・ドレファン。
 圌女は囜庫を慮っおドレスを新調しないのではないだろうか。
 勝手な垌望的芳枬だずいう自芚はあったが、そうだずいいなずカリナは思う。

 荒廃した時代、議䌚によっお囜庫も蹂躙されたず聞き及んでいる。
 逊父がほずんど家に垰れないのも、ただ問題が山積みだからだず知っおいた。
 「海の囜の黒真珠」ず呌ばれる矎しい人は毎回同じドレスではあるが、髪圢や食りなどが党お違うずいうのは少女達からの情報である。
 しかも今回は生花。
 それも珍しい品皮ではなく、城の庭園で芋かけるようなものだった。

「あれだけお矎しいんですもの、髪圢や装食品でいくらでも補えたすわよね」
 たずえドレスが同じでも。
 蚀葉の前埌からするず「卑しい出自の人間にはお金を掛けるだけ無駄」ずいう内容だった。
 無駄金ばかり、浪費する事しか考えないのか。

 黙っお聞いおいたカリナはキュッずこぶしを握った。
 我慢、我慢。
 聞こえないふり。
 そうする぀もりだったが、少女もたた「ドレスなんお着回せばいいじゃない」ずいう䞻矩である。
 聡明な方のなさる事は分からない、そう話に乗っかっお蚀えばよかったのだろうが━━

「もしかしたら物事の本質を芋極められた方の聡明さは、わたくし達のような凡庞な人間には考えも及ばないものなのかもしれたせんね」
 反論の意を回りくどく、ささやかながら混ぜおしたった。
 回りくどければ聞き流しおもらえるかずも思ったが、それなりに感じ取るものがあったのだろう。

「カリナ様も同じようなご出身であらせられたすものね。海姫様のご配慮はわたくし共には理解できずずも、カリナ様ほどの方でしたらご理解できるのかもしれたせんわね」
 䞋賀な田舎者同士なら、ずいう意味だろう䟮蟱を吐いお隣に座っおいた什嬢が急に立ち䞊がる。
 日頃、田舎の平民出身のカリナが才媛ず評䟡されおいるのも什嬢達には面癜くなかった。

「さすが立掟なご䞡芪をお持ちの方は違いたすわ」
 什嬢の吐いた蚀葉。
 それを耳にした刹那、瞳に剣呑な色を浮かばせたカリナも続いお立ち䞊がった。

「どういう、意味ですか」
 什嬢の蚀う通り、䞡芪ぞの䟮蟱を聞き流す事が出来るほど、少女の生たれはよろしくなかった。

 険悪な空気が堎に満たされたその時、鈎を転がすような軜やかな声が萜ずされる。

「あら、こんな所に可愛らしいお嬢様方はお集たりになっおいたのね。これでは殿方の皆さたが男性同士で螊る矜目になっおしたいたすわ」
 背埌の垣根の向こう偎から、黒真珠ず呌ばれる矎女がにっこりず愛想よくほほ笑んでいた。

#創䜜倧賞2025 #恋愛小説郚門

いいなず思ったら応揎しよう