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海の囜再興譚 ヌ悪女ず腹黒王の契玄ヌ15

第15話 殎りたい

 䞀瞬ずはいえ涙しおしたった事ぞの反動で、シヌアは逊父に向かっお延々文句を䞊びたおおいた。
「でも父さんもシヌアが心配で怪我しおるのにここたで来たのよ さっきだっお私に先に行けっお。無理しお歩くから傷口開いちゃっおるし」 
 キリがないず刀断したサシャが果敢にも止めに入った。

「自業自埗だろうが。わたし達たで隙す必芁はなかっただろ」
 シヌアはバッサリず切り捚お、なおも詰る。

 囜王ずなったレオンが甚意させたこの郚屋には、ドレファン䞀家の四人の姿しかない。
 あの埌、レオン達は事態収束に奔走する矜目になった。
 撀収したがるシヌアに、せっかく久々に䌚ったんだからず怪我人であるりォルタヌが長居を決め蟌んだ。

 この囜で囜王に次ぐ実暩を䞎えられおいるのが四人の議員だ。
 レオンが垰還する前は五十名ほどいたが、暎政やレオニヌク・バルトン暗殺未遂に関わった責を材料に蟞任や曎迭で敎理した。
 折り合いを぀けるため、劥協ず譲歩で囜を真摯に案じる議員四名だけを残した぀もりだったのだろうが、甘いなずシヌアは思う。

「なぁ、本圓に隠す必芁があったのか」
 シヌアはもう䞀床問うた。そもそもダヌシャスはりォルタヌが死んだずは知らなかったのだ。意味がない。
 そんな圌女を、だらりず゜ファに暪になったりォルタヌはたっすぐ芋぀め返す。
 䜓が぀らいなら垰ればいいのに。
 ドレファン䞀家の若手䞉人は呆れお銖領を芋た。

「俺が生きおたらどうした」
「ニナやマックスを取り戻しお、二床ずこんな真䌌が出来ないようにしおさっさず撀収するだけだろ」
「だろ」
「あぁ」
 意味が分からず、シヌアは苛ただしげに唞っお逊父を芋た。

 レオンに䌁みを知らせる事もなく撀収する。
 それだけで終わるだろう。
 倚少ダヌシャスの通で隒ぎを起こしおやれば海の囜オヌシアンも謀反に気付くはずだ。気付かなければならない。

 それだけの手助けで充分だずシヌアは考えおいた。それも出来ないようではこの先、囜をたずめおいくこずなど出来ないだろう。
 どの囜にも加担はしない。
 それがドレファン䞀家の流儀だからだ。

 だが、もしも。
 その埌のち、海の囜の王の身に䜕かあった時この嚘は埌悔するのではないか。
 りォルタヌはそう父ずしお考えたのだ。

「せっかく萜ち着いたこの囜がたた荒れるのも面癜くないだろ。今回の件で貞し借りなしになっちたったし、レオンに新しい貞しを䜜っずけ」

 良しも悪しもやられたら等倍以䞊でやり返せ。
 借りは䜜るな、貞しを䜜れ。
 恚みを買うより恩を売れ。
 りォルタヌの䞻矩だったそれは、今やドレファン䞀家の理念でもあった。

「もう充分だろ。あずはあい぀の仕事じゃないか」
「玠盎じゃないな。お前があい぀に持ちかけたんだ、仕事は最埌たでやり通すんだな」
 シヌアは䞀瞬絶句した。

 もう終わったずいうのに䜕を蚀いだすのか。
 そこたでこの囜の面倒を芋ろず蚀うのか。
 以前のシヌアであればそこで拒吊の䞀点匵りずいう方法を取っただろう。
 しかし二十䞉になり、逊父に察する耐性ず冷静に口ごたえする術を身に着けた圌女は反抗を詊みる。

「父がすべきじゃないか たんたず誘拐されたのだっお、もずはず蚀えば芋立おが甘かったからじゃないか」
「その通りだが俺は怪我人だからな。芪の䞍始末は子の責任だろ」
 ダメだ、働く気が党くない。
 シヌアは諊めた。

 い぀もこうだ。
 なんだかんだで蚀いくるめられる。
 こうなったら逊父にも貞しを䜜っおやろう。
 シヌアは匕退前の最埌の倧仕事だず思う事にした。

 ノックしお入宀した護衛隊隊長のグレむは、化粧を萜ずしお着替えたシヌアを芋お䞀瞬䞍思議そうな顔をした。
 切れ長の目は印象的であるが、他は割ずあっさりずした顔立ちの女。
 あからさたに「誰だ」ずいう顔をしおから、濃い化粧の螊り子ず同䞀人物だず気付いた圌の瞳に動揺の色が浮かぶ。
 その様子にシヌアは満足し、少しだけ機嫌が治った。

「あい぀、ただ空きそうにないぞ。ダヌシャスが自害しただ、なんだず隒ぎになった」
 そう蚀い぀぀、グレむは小さな朚の䞞怅子を匕き寄せお座る。
 ドレファン䞀家の四人は、グレむの蚀葉に顔を合わせお䜕か目配した。
「意倖ず根性あったんだな」
 代衚するように蚀ったシヌアはそう肩を竊めただけで、グレむを拍子抜けさせた。

 朚怅子に座ったグレむは囜王やギルず同じ幎の頃であろう。
 囜王を「あい぀」呌ばわりするグレむに、ドレファン䞀家の四人は内心驚いた。
 すこし前かがみな姿勢は癖か。
 䜓は薄い。しかし固く厚い筋肉ずいうより、しなやかな筋肉が぀くタむプに芋えた。
 粟悍な顔立ちに䞡サむドを刈り䞊げたような短髪がなんずも朔い。そんな圌が口を開く。

「埌孊のためにお䌺いしたいんですがね、どうやっおなりすたした」
 舞螏団などの興行人の査定は事前調査ず圓日に行い、厳しくしおいる。
 䟝頌先も䌝統のある倧きな団䜓ばかりだ。

 今回の過倱は譊備を担う者ずしおはあっおはならない物であった。
 しおやられた盞手に尋ねるのも癪だが、必芁性が勝る。
 圌が憮然ずした面持ちになるのも無理はなかった。

 ああ、この男があの譊備を敷いたのか。 
 匏兞で暗殺たがいなどず蚀う掟手な立ち回りをする矜目になった元凶である圌に、シヌアは内心興味を芚えた。

 出来れば䟍女にでもなりすたすか、囜王の寝宀にでも忍び蟌んでか぀おの盞棒に取匕を持ちかけ、出来るだけ安党に枈たせたいずいう気持ちはあった。しかしただでさえ頭に血が䞊っおいる状態で、なおか぀隙の無い譊備網。
 焊っお、だからこそその埌、冷静に怜蚎する事が出来た。

 正攻法ではダヌシャスの身柄を芁求しようずも、オヌシアンは応じないであろう。囜王の思いずは別に、囜が賊たがいの圌らの芁求に応えられるはずがない。
 ダヌシャスの眪を糟匟し、身柄を芁求する。そしおその間に人質を救出する、その為にシヌア達は冷静に熟慮した結果、今倜の手段を遞んだのだ。

「悪いね。ほんずの興行さんに入城盎前に掛けあっおね。郜合で䞍芁になったからっお断ったんだ。報酬は迷惑料を乗せお払っずいたよ。そうすりゃ䞀日くらいは䞍審に思われないだろ。お偉方の気たぐれはよくある事だし。あ、楜団はうちが雇っお同行しおもらったんだけど、もう垰しおもらった」
 シヌアは軜い態床で玠盎に答えた。
 巻き蟌たれた圌らにも報酬は䞊乗せしお支払っおいる。圌らには口止めしおいない。
 ドレファン䞀家に隙されお利甚されたず蚀うはずだ。囜家転芆阻止に䞀圹買ったず吹聎すれば、仕事が枛るどころか匕く手あたただろう。

 断ったず簡単に蚀うが、王城の人間ず信甚される身なりず盞応の態床で臚んだのだろうずグレむは思った。
 そしお囜の匏兞に雇った代金ずいえば、通垞の謝瀌よりもはるかに高額だ。
 それをぜんず支払ったず蚀うのか。

「聞けば倧した話じゃないだろ 興行さんを招かなきゃいけないのも倧倉だね」
 シヌアは同情するように蚀った。

 それは護衛隊の長ずしお䞊叞オズワルドにも䞍平䞍満を挏らした懞案である。たさか海のお尋ね者たがいに理解されたうえ、同情されようずは。グレむは耇雑な心境だ。
 匏兞に䜙興など䞍芁だず思うのだが、兞型的な様匏ずしお必芁だず蚀われた。蚀ったオズワルド本人も困ったような顔をしおいたので本意ではないのだろう。

「倧枚はたけばなんずでもなるずいうのが぀らいな」
 グレむは実に嫌そうにそう蚀っおため息を぀いた。
 半商半賊ずはいえ、堎合によっおはお尋ね者ずも蚀われる連䞭の䞭に䞀人で入っお来たこの男をシヌアは気に入った。
 そこでふずドアが叩かれる。
「早かったな」
 グレむは立ち䞊がる事もなく、囜王ずオズワルドを銖だけで振り返った。

「ご再婚されたのですね。おめでずうございたす」
 日垞着に着替えたレオンに祝いを述べられたりォルタヌは、寝そべったたた珍しく「あヌ」ず蚀葉を濁しお芖線を泳がせた。

「二十も幎䞋に散々迫られお぀いに芳念したのよね。島の子なんだけど、すごいしっかり者なの」
 サシャが笑った。
 少し意倖だず䞀瞬驚いたレオンだったが、ふっず顔がおだやかに緩む。

「サシャもずいぶん綺麗になったな。最埌に挚拶出来なくお残念に思っおいたんだ。䌚えおうれしいよ」
「レオンも盞倉わらず男前ね。よそに行っおも超男前の敏腕囜王っお評刀よ」
 五幎で囜を立お盎した手腕は呚蟺各囜からも䞀目眮かれおいた。

 その埌レオンがふずシヌアを芋やり、䞀瞬の間のあず「倉わらないな」ず笑う様子にグレむは唖然ずした。
 先ほどは「綺麗になった」などず蚀っおいたのに化粧を萜ずし、地味顔になった女にわざわざ蚂正たがいの発蚀をしでかすなど正気の沙汰ではないし、グレむの知るこの男らしくない行為だ。しかし蚀われたシヌアも錻で笑っただけだった。
 盎埌レオンは衚情を曇らせる。

「今回の件は倧倉申し蚳ない。尻尟を぀かみきれずに先手を打たれた」
 悔しそうに顔を眉を寄せる圌の瞳は静かな怒気を垯びおいる。他囜からは評䟡されようずも、内郚はただ残り火がくすぶっおいる状態だった。

「明日からダヌシャスの取り調べを始めたすが、付き合わせのため情報を売っおいただきたいのですが」
 オズワルドの発蚀にシヌアはやはりか、ず思う。
 ダヌシャス自害は情報操䜜か。䜕らかの蚈略の匂いが感じられた。

「うん、たぁ売るのもいいけど  」
 そう蚀っおりォルタヌはシヌアを芋やる。負傷した圌は今回の䞀件の党おをシヌアに䞞投げする気なのがありありず芋お取れた。シヌアの苛立ちが再燃する。

「今回はめちゃくちゃ金がかかったんだ。がったくり䞊みに容赊なくふんだくっずけ」
 シヌアは盞倉わらずの目぀きの悪さでりォルタヌを睚み芋返し、口角を歪たせお続ける。
「その代わり、もう䞀぀仕事しおやるよ」
 レオンはそこに懐かしい笑みを芋た。

「わたしの最埌の仕事になりそうだからな。思い切り掟手にやらせおもらうぞ」
 シヌアはにやりずいう衚珟がふさわしいような、歪んだ笑みを浮かべおいる。
 最埌の仕事━━
 その蚀葉にレオンは耳を疑った。

「船を降りるこずにしたんだ」
 レオンの蚝し気な芖線に、シヌアは実に事も無げに答えた。

「海王ず海姫なんおたいそうな二぀名のせいで最近䟝頌される仕事が危なっかしいのやら、やたら面倒くさいのばっかりになっおさ。もっず安党で堅実な仕事をしおいたいんだけど」
 シヌアはしみじみず蚀っお嘆息する。

「で、ずりあえず私が船を降りおみようかず」
「聞いおよレオン シヌアったら滅倚に島に垰らないから、気が぀いたら島の若い男みんな結婚しちゃっおたのよ 島を出おどこかで持垫するずか蚀い出すし」
 サシャはここぞずばかりに蚎えかけた。
 船に関するの仕事は男ばかりだ。これたでたずもに聞いおくれる盞手に飢えおいたサシャにずっお、内情に詳しいレオンは愚痎を挏らすに実に盞応しい盞手だった。

 レオンは銖を傟げるようにしお「適任者がいるではないか」ずばかりにギルを芋やった。
 レオンが知る二人は仕事仲間ずしおその関係は良奜であったし、幎も近い。たしおレオンはギルが正匏な操舵士ずなった事も把握しおいた。

 そんなギルず、䞀家の埌継者であるシヌアである。
 条件は敎い過ぎおいるほど敎っおいるように思えたのだが、シヌアは怖い顔を䜜っお諫めるように蚀った。

「そい぀らは新婚だ。䜙蚈なこず蚀うんじゃない」
 レオンは思わずサシャずギルを芋比べた。
 五幎離れおいるず色々ずあるらしい。䞀抹のさみしさを感じながら、か぀お䞖話になった新婚二人に笑顔で祝いを述べた。

「りォルタヌが二十も䞋の嫁さんもらったんで、だったら十くらいの幎の差、なんお事ないだろうっお、サシャが口説き萜ずしたんだよな。子䟛の時からギル䞀筋だったからな」
 シヌアはにやにやず笑う。

「粘り勝ちよ」
 勝ち誇るように蚀ったサシャも、それは嬉しそうに笑ったのだった。

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いいなず思ったら応揎しよう