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海の囜再興譚 ヌ悪女ず腹黒王の契玄ヌ35

第35話 みなが諊めろず蚀う。意味が分からない。

 グレむは枯の貎族甚の宿に着くず目を避け、ひっそりずシヌアを運び蟌んだ。呚囲の者にシヌアの凊眮を指瀺し、レオンの元ぞ戻る。

 ━━こっちもたぁ、ひでぇ顔しおるこず。
 憔悎しきったレオンの顔にグレむは眉を顰める。

 それはそうだろう。
 惚れた女を海賊船に送り出し、そこぞ砲匟を撃ち蟌む。

 四日前、そんな圌らの策を聞かされた。
 銬鹿じゃないのか。それが最良の䜜戊なのか。
 圌等の策を聞かされシヌアに付き添えず指瀺された時、正盎にそう思ったし、珟にそう蚀った。

 そしおそれを「いい䜙興だ」ずいうような顔で芋守る。それが囜王が自らに課せた仕事だった。
 今日の䞀日をどんな思いで過ごしたのか。
 その心情は察するに䜙る。

『よくそんな策を採甚したな。他に手はねぇのかよ』
 そう尋ねればレオンは苊悶の衚情を浮かべた。

『手はいくらでもあるがこれが䞀番、人的被害も蚭備的損害も出ないんだ。公的な立堎で、遞ばざるを埗なかった』
 レオンは厳しい状況に眮かれた心情を吐露した。

『成功するからな。腕は信甚しおる。それが分かっおるのに俺の我が儘であい぀の策を撥ねれば俺は確実に軜蔑される』
 最善の策であり、公的な立堎では採択すべきだ。
 しかし私的な郚分では━━

 きっ぀い話だな。
 口にこそ出そうしはしないがそう顔を翳らせたグレむに、レオンは取り繕うように笑った。
『どうせあい぀の案を採甚しないず最終的に本気の殎り合いになるんだ。お互い骚の䞀本や二本は芚悟するような泥仕合だぞ。仕方ないだろう』
 レオンに合わせおグレむも笑ったが、内心苊虫をかみ぀ぶした。
 こんな時に、俺にたで気を遣うなよ。
 
 そんなグレむもたた、海姫が拿捕される䞀郚始終を陞に朜んで芋届けた。
 実に嫌な仕事だった。 
  
 王宀埡甚達の高玚宿の䞀宀でシヌアは蛹さなぎ状態のたた、膝から䞋は毛垃をめくり䞊げお桶に匵った湯に浞぀けられおいる。
 グレむの適切な凊眮のおかげで震えは治たり、ずいぶん楜になった。
 レオンぞの報告を終え、様子を芋に来たグレむが蛹をのぞき蟌む。

「  だいぶマシな顔になったな」
 到着した頃の顔色ず比べ、もう倧䞈倫だろうずグレむは刀断した。
 宿に着いた時点のシヌアの疲れ切った顔は、誰もこれが囜王の婚玄者だずは思わないようなひどいものだった。

「お前、もう諊めお嫁に来い」
「䜕蚀っおんだ。たずは劎えよ」
 郚屋に珟れるなり開口䞀番わけの分からない事を蚀う囜王に、シヌアは呆れおなじる。回埩したシヌアに比べ、囜王の疲れた顔はただひどく疲劎を滲たせたものだった。

 ◆◇◆

 今回新造した軍甚船も䞉角波を受けお枯に衝突する事も芚悟したが、山からの匷い吹き降ろしで船には沖ぞず進む匷い力が加わった。
 補助の垆を匵る事で調敎し、枯ぞの衝突を最小限にずどめた為、少しの修繕で枈む損傷にずどたったのは本圓に運が良かった。

 䞉角波は海姫が乗船するドレファン䞀家でも回避するような、実に危険な海である。
 海賊船の船隊は船同士で衝突し、入り江から撀退した。
 衝突はごく軜い物でしかない。
 そうなるように、シヌアが船の配眮を指瀺した。

 無傷で撀退したのでは北の台地レむスノヌトも玍埗しない。
 枯から芋れば隊列状になった船隊は倧きな損害を被ったように芋えたが、実際は䞀日もあれば修繕出来るような砎損ばかりだろう。
 レむスノヌトず深い取匕をした船も、その流れに埓わざるを埗なかった。
 シヌアにそこたで芪切にしおやる矩理はなかったが、招集に応じた圌等は無益な流血を奜たない方針の連䞭である。
 海王たる逊父の教えに埓い、恚みを買うよりは恩を売る事を遞んだのである。

「セド爺達は」
「ずっくに垰ったぞ」
「くそ、あい぀ら  」
 文句の䞀぀も蚀っおやろうず思っおいたのに。逃げたな。
 物隒な衚情になったシヌアに、その思想をやめさせるようにレオンは口を開く。圌らには恩が出来たのだ。

「船長から耒矎をもらった」
 ギルから「奜きに䜿え」ずいう䌝蚀ずずもに受け取った物である。
 唐突に告げるレオンに、シヌアは蚝しむような目を向けた。

「りォルタヌから え、お前に なんでお前がもらうんだよ」
 レオンが海王りォルタヌ・ドレファンを船長ず呌ぶのは乗船しおいた時の名残であり、そう呌ぶ事を圌自身が気に入っおいた。
 シヌアは䞍満そうに口を曲げたが「こい぀も頑匵っおるもんな」ず思い盎す。

「た、たたにはお前もご耒矎もらっおもいいか。で 䜕もらったんだよ」
「垰ったら芋せおやる」
 レオンはそう蚀うだけで、詳现は語らなかった。そんな圌は床にひざたづいおいる。湯に浞かったシヌアの爪先を凍傷予防のため揉んでは広げ、足銖を回しおやる。冷え切った䜓の末端たで血を巡らせるためだ。

「冷めお来たな。倉えるか」
 桶の湯に手を入れおいたレオンが呟くずシヌアは銖を振る。
「いや、もう倧䞈倫そうだ」
 レオンは现い足銖がしっかりず枩たっおいるのを確認し安堵する。シヌアの足を䞁寧に拭っおから毛垃に包んだ。
 䞀囜の囜王ずもあろう者がずいぶんず甲斐甲斐しい。

「王様に足を拭かせるなんお重眪だな」
 シヌアは悪びれもせずに、軜口を叩く。
 その距離感は、船で組んで仕事をしおいた頃ず倉わらなかった。

「それだけの働きをしたんだ、誰も文句は蚀うたい」
 圌女を芋䞊げたレオンも喉で笑った。
 そんな圌に、シヌアはい぀ものように蚀う。

「仕事だからな」

 戞口にもたれお呆れ぀぀二人のやり取りを芋るずもなしに芋おいたグレむは、それを聞いた瞬間、䜓の深いずころに泥のような塊がわき出したのを感じた。
 ふ぀ふ぀ず沞き起こるのは苛立ちなのか、どす黒い吐き気のような物でもあり、圧のようにも感じる。
 ずにかく無性に腹が立った。
 発散すべく、握った拳の偎面を壁に叩き぀ける。

「どうした」
 鈍い音に二人が圌を芋やった。

「なんでもねぇよ」
 この女の茶番に反吐が出そうだ。
 グレむはか぀おないほど憮然ずした衚情で吐き捚おるように答え、シヌアはそんな圌を静かな目で芋぀めた。
 䜕を考えおいるか分からないその芖線が、䞀局圌を苛立たせる。
 
「俺もお友達、迎えに行っおくるわ」
 このたたここにいたら䞍愉快な思いしかしない。
 ゞェむドにくっ぀いお経理の婆ちゃんを迎えに行く方が、よっぜどマシだず思った。

「ああ、だったら䌝蚀を頌みたいんだけど」
 身を起こそうずするシヌアを制しお、レオンは寝台の脇机からペンを取る。
 囜家管理宀に転職するリザぞの、短い䌝蚀だった。
 その䜍は芚えられる。グレむはたた苛立぀が、状態ではレオンに曞き取らせるのは正解だず思われた。

「リザず䞀緒に戻りたいずころだけど、先に垰らせおもらうわ。レオン、今倜の晩さん䌚は予定通りやるんだろ わたしも出るからな」
 レオンは盛倧に顔をしかめる。

「䜕蚀っおんだお前、寝ずけよ」
 グレむでさえ、唖然ずしお蚀ったほどである。
 そんな男二人に、シヌアは笑む。
 それはい぀もの、意地の悪い笑みだった。

「いやいや、ご心配をおかけした王匟陛䞋にはご挚拶しずきたいじゃないか」
「本圓に怪我はしおないんだな」
 レオンがそれを尋ねるのは二床目の事だった。
 倜䌚に出るず蚀い出した婚玄者の状態を確かめる。
「やめろ」ず蚀った所で簡単に聞きはしない婚玄者だ。
 怪我でもあれば、説埗が容易になる。

 レオンは䜓枩を確かめるように頬、銖筋ぞず手を移動させた。
 圌女の髪は朮氎から䞊がったたたなので、いく぀もの小さな束になっお固たっおいる。
 シヌアは小さな矜虫が顔のたわりを飛ぶのが䞍快だずでもいうように顔をしかめ、銖を振っおその手を払う。䞡腕は毛垃の䞭なので動けなかった。
 もういい加枛この状態から解攟されおもいいだろう。
 シヌアはごそごそず動き、䞊半身を起こす。

「怪我はしおないっお。なぁ」
 出お行こうずしたずころぞ声を寄越されたグレむは、顔を陰らせる。
 嫌な予感しかしなかった。

「そい぀に聞いおくれ。着替え手䌝っおもらったからさ」
 続けられたシヌアの蚀葉にグレむは歊骚な手を己の額に圓お、こめかみをもむ仕草をしながら、眉間にか぀おないほど深い皺を寄せお目を固く閉じた。
 䞡手の拳で壁を叩きたい気分だ。

「お前  」
 黙っおいたいのが本音だった。しかし埌で知れた堎合、より問題が倧きくなるのは目に芋えおいる。
 疚しい気持ちはないし、なにか芋た蚳ではない。
 それでも慎重に蚀葉を遞び、絶奜のタむミングで報告する予定だったずいうのに。

 すべおぶち壊しだ━━

 空気がおかしくなったのでシヌアは面倒くさそうに口を開いた。
「こっちは死にかけおるんだぞ、ぐだぐだ蚀っおる堎合じゃないんだからお前グレむももう気にするなっお、なぁレオ」
 グレむを気遣うように蚀っお同意を求めお囜王を芋やったシヌアは、最埌たで蚀葉を発する事は出来なかった。
 芖線の先でレオンがこれたで芋た事もないような冷え冷えずした、難しいずも厳しいずも蚀える衚情をしおいたからだ。
 野性味を感じさせる粟悍な顔立ちがそういった衚情を浮かべるず、シヌアでさえも動揺を隠せなかった。

 シヌアなりにグレむを気遣った぀もりなのか。
 それずも海に䞊がった時、さっさず保護しなかったグレむぞの意趣返しなのか。

 惚れた女が他の男に着替えの手を借りお、平気でいられる男がいるず思うのか。
 いや、もしかしたらいるのかもしれない。
 圌女の逊父である海王はそうなのかもしれない。
 
 だが断じおこの男はそんな男ではない。

 幞いレオンは状況を理解出来る人間であり、グレむを詰るような男ではなかった。
 グレむは内心頭を抱えながら説明しようず振り返ろうずした時、宀内に「ぎゃあ」ずも「うぉ」ずも蚀えない、あられもない悲鳎が響く。
 ぎょっずしおグレむが振り返ったそこでは、寝台の䞊で囜王にのし掛かられた蛹がのたうちたわるように激しく蠢いおいた。

「おた、ちょ、埅お━━䜕すんだ」
 シヌアが咄嗟に毛垃から出した右腕でレオンの肩を抌し返し、䜕か喚いおいる。

 自由に動けない女の唇を奪うずか、さすがにそれはえげ぀ないだろ。
 䞻君であり、昔なじみ男の暎挙に思わずたじろぐ。

 本圓にこの男は━━

「おったえ、匱っお動けない人間に䜕するんだ、この銬鹿」
「頑匵った婚玄者ぞのご耒矎だ」
 シヌアは憀然ず抗議したが、レオンはどこ吹く颚で受け流す。 
 囜王の暎挙は未遂に終わったようだ。
 嫌がらせに過ぎなかったらしい。
 毛垃から解攟されようずもがくシヌアの頭にレオンはなだめるようにぜんぜんず手を乗せ、シヌアはそんな圌を嫌なものでも芋るような目぀きで睚む。

「なぁ、お前ホントもう諊めたら」
 グレむのその呆れ果おたような声は、意倖なこずにシヌアに向けられおいた。
 䞀瞬ぜかんず口を開けたシヌアだったが、次に憀怒に圩られた圢盞でグレむを睚み付けた。

「こっの裏切りもん おめぇだっお垞識で考えろっ぀ったじゃねヌか」
 圌女は普段䞊品ずはいえない蚀葉遣いだが、口調は意倖ずいうほど穏やかだ。
 あたり驚いたり、慌おたりずいう事もない。
 い぀も憎たらしいほど、飄々ず、泰然ずしおいるのが海姫ずいう女だった。
 それがこうも激高しおいるのは実に珍しく、グレむなどは初めおお目にかかる物だった。
 グレむはハッず倧げさなほど錻で笑う。

「あんな垞識はずれな事しずいお䜕蚀っおやがる。テメェが垞識語るんじゃねぇよ」
 あれだけの非垞識を芋せおおいお。

 気迫みなぎる瞳を芋おグレむは内心「よし」ず頷く。無鉄砲な半商半賊の䜓力も回埩したようだ。
「じゃ、行っおくるわ」
 付き合いきれない。
 シヌアはただ䜕か蚀い足りないような、それでいお助けを乞うような顔で䜕か蚀いかけたが、気付かないふりをしお扉を閉めた。

 いい気味だ。

 グレむは少しだけ気分が晎れるのを感じた。 

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いいなず思ったら応揎しよう