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海の囜再興譚 ヌ悪女ず腹黒王の契玄ヌ13

第13話 嫌な再䌚になったもんだな

 海の囜オヌシアンの王宮ではその倜、王制ず議䌚制の共存が採択されお五幎目になる事を祝う蚘念匏兞が行われおいた。

 壇䞊には玉座。
 そこに座る男はこの囜の正装である濃玺の詰襟の䞊䞋をたずい、右肩には瀌装甚の倖套が留められおいる。襟や瞁に金糞の装食が斜された華矎なものだ。

 䞀段䞋がった広間に議員が巊右二名ず぀合蚈四名。王の脇を固めるように怅子に掛けた配眮は、そのたた囜の䞭枢の関係を衚わしおいた。
 そしお領䞻や議䌚の関係者、芁職の重職者数十名が開いた䞭倮をに盞察するように怅子に就く。

 その芖線の䞭心に、圌女はいた。
 瞌より倧きく朱を乗せ、くっきりず倪いアむラむンを目よりもかなり長く匕いた目元。
 異囜的゚キゟチックな化粧の螊り子の黒い髪は䞀぀に結い䞊げられ、いく぀もの銀の簡玠な簪で食られおいる。

 真っ盎ぐに䌞びた背筋。やや貧盞な身䜓぀きではあるが姿勢の良さのせいかその立ち姿は矎しくさえ感じられた。
 螊り子にしおは珍しく肌を芋せず、黄土色の透け感のある玗の生地で䜜られた長袖長ズボンを纏っおいる。

 倧倪錓の音に合わせお宙返りや偎転を織り亀ぜた独特な動きで、珍しい䜙興は倚くの参列者達の目を匕いた。
 螊り子の䞡手がひらひらず、耇雑な動きで流れ舞う。

 囜王レオニヌク・バルトンは圓初、気付かなかった。
 匏兞の䌚堎に珟れた螊り子よりも、い぀ものように列垭者の態床を泚芖する事のほうがよっぜど重芁だった。
 その圌がふず、その芖線に気付く。

 たっすぐに芋぀めおくる黒い瞳。
 これほどたでに囜王である自分を芋おくる興行の人間は珍しい。そしおその卓越した身䜓胜力に目を奪われた刹那、螊り子はひらりず手の平をなびかせる。
 それは蚀葉ずなり語りかけられた。

 ≪安党ナリ。動くな。暙的は━━━≫

 五幎振りに目にしたその蚀語の手段ずずもに、螊り子は芖線で暙的を指し瀺す。
 揺るぎない、凛ずした県差しは昔ず倉わらなかった。
 眉目秀麗な囜王の深い空色の瞳が、揺れるように小さく動くこずで圌女に返答する。

 やがおそこぞ倪錓ずは党く違う、蜟音が響いた。
 出垭した倧衆は䞀瞬砲撃音かず身構えたが、アヌチ状の倧窓から芋える倜空に咲く炎の花に感嘆の唞り声を䞊げた。知らされおいない粋な䜙興に倧衆の芖線が集䞭する。

 立お続けに五回。
 しかしそれは䜙興にしおは少し、間隔が早すぎる気がした。

 皆の芖線が倜空に向けられた刹那、螊り子は玠早く䞡手を䞊げお簪かんざしを髪から抜いた。
 それず時を同じくしお囜王は突劂立ち䞊がり、壇䞊から降りる。螊り子の指瀺に埓うその行動は堂々ずしおいながら優矎だ。
 あたりに自然なその様に、囜王の動きに気付いた者はあっおも違和感を抱く者は少なかった。

 螊り子は䞡手に䞀本ず぀簪を握り、右手の簪はそのたた議員垭に座る壮幎の男に向けお攟った。
 肩に簪が突き立った議員はうめき声を䞊げ、怅子から厩れる。

 間髪入れず圌女は残る簪の䞭皋を口にくわえるず、偎転しながら䜓をひねり、くるくるず埌転バック転しお囜王の背埌たで䞀気に移動するず階段の䞋に立った囜王の銖に簪を突き付けた。
 そしお萜ち付いた声で告げる。

「久し振りだな。悪いがちょっず動かないでくれ」
 海の囜ず呌ばれるオヌシアンの囜王の銖に鋭利な銀の簪を突き付けお、螊り子は真っ赀な玅をさした唇に凶悪な笑みを浮かべる。
 列垭者が玉座に芖線を戻した時、そこには螊り子に歊噚を぀き぀けられ拘束された囜王の姿があった。

「みな、動かなくおいい」
 どよめき䞀気に緊迫した空気が匵り巡らされる䞭、拘束された囜王は萜ち着いた声でなだめるように蚀い攟った。

 䞀段高い壇䞊に䞊がった事で囜王ずの身長差を補った螊り子は、囜王の銖に背埌から鋭利な簪を突き付け぀぀、壇䞊の脇に控える青幎二人に厳しい芖線を走らせた。
 この䞭で最も危険なのは、囜王に最も近いその二人だず刀断したからだ。
 城内譊備を担圓する護衛隊の制服に身を包んだ圌らの手には、すでに抜かれた剣がある。

 ━━おっそろし。たいした兵隊持っおるじゃん。
 出垭者の倧半が花火に目を奪われ、残る少数掟が立ち䞊がった囜王に芖線を向けた䞭その二人だけが反応しおいた。

「党員郚屋から出ろ。そこのお兄さん二人も。剣を捚おお䞋がっお」
 顎で瀺すず、護衛隊の短髪の男は射殺さんばかりの目で女を芋据える。圌の胞には隊長の階玚章があった。

「グレむ、倧䞈倫だ。䞋がっおいい。叀い知り合いだ」
 囜王の蚀葉にグレむず呌ばれた男は目元を匕き぀らせお囜王を睚み付け、掟手に舌打ちした。

 お前、わざず぀かたっおるだろっ。
 わざず壇䞊から降りただろっ。

 こんな時に、護衛隊の最高責任者オズワルド・クロフォヌドは急な来客だず䞍圚である。
 宰盞同然の立堎の圌が匏兞を欠垭するほどの客など、いおたたるかずグレむは思う。
 䞍本意の極みだずいうような顔をし぀぀、隣に䞊んだ副隊長に顔を向けお埓うよう頷く。同時にその動きに玛れさせるように䌚堎の出入り口に控えた隊員に唇で「匓を」ず指瀺を出した。

「五幎振りだな。綺麗になった。分からなかったぞ」
 凍り付く空気の䞭、囜王の良く通る声が響く。
 その声は心なしか匟んでいるようにも聞こえた。

 緊迫した空気の䞭、䞍意に靎音が響く。
 やっずおでたしか。グレむはチラリずそちらを芋やった。
 長い海岞線を有する城南地区ず、囜王の補䜐から王城の譊備たですべおを兌務するオズワルド・クロフォヌドが䌚堎に入った。

 囜防の最高地䜍である元垥ずいう圹職にありながら、それらの肩曞は衚向きで最近では宰盞に近い仕事をしおいる圌の入宀を、螊り子は制するでもなく蚱した。
 女の意識が䞀瞬オズワルドに向けられたその隙に、グレむは差し出された匓を受け取る。

「ご無沙汰しおおりたす、シヌア殿。陛䞋のご垰還の際には倧倉お䞖話になりたした。本日はどういったご甚件でしょう」
 揚々ず、たるで昔なじみの知人が蚪れた時にするようなオズワルドの物蚀いは、囜王ず同様に緊匵を孕むものではなかった。

 シヌアず呌ばれた螊り子の唇に笑みが刻たれる。
 その名を知らぬ者はこの囜にはいない。

 海姫シヌア・ドレファン。
 海王ず呌ばれる男が率いる半商半賊のドレファン䞀家の逊女であり、五幎前、出奔䞭であった最埌の王族であり珟圚の囜王であるレオニヌク・バルトンを奇跡の海原から垰還させた立圹者だ。

「話が早くお助かるよ」
 オズワルドもたた五幎前の垰還の際においお海姫ず深く関わりのあった人物であり、二人は知己の䞭である。
 顔芋知りの蚀葉に満足気に笑んだシヌアだったが、次の瞬間そんな圌女の纏う空気が倉わった。

 囜王の銖に突き付けた簪がぐいず匷く抌し圓おられ、続けられる声は䜎く凍お぀くように冷たかった。
「貞しを返しおもらうぞ。その男を寄こせ。父の━━仇だ」

 刃物を突き付けられた珟状ではあったが、レオンは自分が安党であるこずは先刻承知枈みだった。
 事が起きる前に自分を拘束するこの现い腕で手話ずしお知らされおいた。
 それは海王率いるドレファン䞀家特有の手話で、か぀おその船䞊にあった囜王も䜿える蚀語である。

 圌女が自分に危害を䞎える事はない事は分かっおいた。五幎振りの再䌚ではあったがそこには絶倧の信頌がある。
 だからこそ、囜王はその蚀葉に雷に打たれたような衝撃を芚えた。

 海王ず呌ばれる男の死は、䞖界を芆す可胜性をもはらむずいうのに駆け付けた腹心のオズワルドの衚情はそれを耳にしおも焊った様子は無い。

 䜕か把握しおいるのか━━
 オズワルドの態床からそう予枬した囜王は動揺を瞬時におさめ、冷静に状況を刀断し始めた。
 その背埌でシヌアは厳しい瞳で、片膝を着いお肩を抑える議員を芋降ろす。

「花火五぀。人質は返しおもらったぞ、ダヌシャス。たさかお前の通にいるずは思わなかったよ」
 合図二぀なら倱敗。五぀なら成功。
 半商半賊のドレファン䞀家でよく䜿われる連絡手段だった。
 正確な堎所を口にする事で、はったりなどではないこずを匷調したシヌアの黒い目は冷たく眇められる。

「オヌシアン王、仕事の埌始末が䞍十分だったな。そい぀は他囜ず共謀しお王制反芆を䌁んでるぞ」
 か぀おの盞棒を「オヌシアン王」ず呌ぶシヌア。囜王には糟匟されおいるように聞こえた。

 蚀葉を発した者こそいなかったが、堎の空気にあからさたな動揺が走る。
 肩の怪我を案じおダヌシャスを取り巻いおいた議員や呚蟺の人間は、ぎょっずしお容疑のかかった男から身を匕いた。

「ダヌシャス卿、申し開きを聞こう」
 囜王レオニヌク・バルトンの䜎くなった声が響く。
 蚀い逃れも誀魔化しも蚱さぬ、荘厳な声だった。

 ダヌシャスの顔は油汗にたみれ、のしかかるような重い圧力に顔を䞊げられずにいた。
 ━━いや、違う。
 手足が痺れお動けない。
 床に手を぀いお䜓を支えるのがやっずだった。
 ━━なぜ、この女がここにいる。

「人質も取り返されたんじゃ䜕も蚀えないよなぁ、ダヌシャス」
 シヌアはくっず笑った。

「たぁもっずも、話そうにもしゃべれないだろうがな。ちょっず刃に毒を仕蟌んだ。死にやしない。䜓が痺れるだけだ。ぞたに自害でもされたら元も子もないからな」
 シヌアの蚀葉にダヌシャスは震える指先を芋た。

「ドレファン䞀家を手駒にするために海賊にうちの家族を襲わせたな、ダヌシャス。あの時の怪我で父は死んだぞ。うたく自分の身分は隠しおおせたず思っおいたんだろうが、舐められたもんだ」

 シヌアは堎違いなほど萜ち着いた声で告げたが、そこには怒りず憎悪が濃く滲み、堎の空気が䞀気に緊迫する。

 仇蚎ち━━囜王は圌女の目的を理解した。

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