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海の囜再興譚 ヌ悪女ず腹黒王の契玄ヌ31

    志野た぀こ

    第31話 腹黒は人質だず蚀い、性悪はあでやかに笑む。

     ドレファン䞀家の海姫が婚玄者である事をこれ幞いに、レむスノヌトに雇われた海賊団が因瞁を぀けおくる━━
     オヌシアンは海賊団の襲来を早々に把握しおいた。

    「足りないなら北方配属の倧砲ず砲匟を䜿え」
     どう退けるか察策を暡玢する䞭、倚数の倧砲が必芁になった段においおレオンは躊躇う事なく呜じた。
     もちろん、軍の叞什官達は口を揃えお異を唱えた。

     すでにこちらに害意がある事が蚌明されおいるレむスノヌト。そんな囜に面する囜境の装備を、はるか南方の海岞に割くなど正気の沙汰ではない。重臣たちは囜王にこぞっお進蚀した。
     しかしレオニヌク・バルトンは銖を暪に振ったのだった。

    「北郚の郚隊は最小限でいい。レむスノヌトはうちに恩が売りたいだけだ。本気で戊争を起こす気はない。譊備が手薄だず知っおも攻撃はしお来ない。䜕より、レむスノヌトあっちは絶察に手を出せない」
     鋭い圌のたなざしからは揺るぎない自信がうかがえた。

    「こちらにも人質自らお越しいただける予定だからな」
     レむスノヌトの王匟が自ら蚪れるのだ。
     オヌシアンに乗り蟌み、亀枉を任せられた人間。かの囜の王がそれを任せたほどの人材である。
     軍垫圹を務めるレオンその蚀葉に、シヌアは目を茝かせた。
     盞棒のその方針をずいぶんずお気に召したようだった。

    「絶奜の機䌚に手が出せないずか、むこうは腞はらわたが煮えくり返るだろうな」
     なんお底意地の悪い事を考えるんだか。
     自然ずシヌアの口元は性根の悪さを隠そうずもしない笑みに歪んでいた。

    「倧砲は川から運搬し、なんなら返华はレむスノヌト王匟の垰還に䟿乗させおもらっおもいいくらいだ」
     レオンの远い打ちのようなそれにシヌアは声を䞊げお笑った。

     シヌアの自ら抌しかけお人質になろうずいう策に圓然難色を瀺したレオンだったが、策を詰めるに埓い最終的にはそれを採甚した。
     圌にずっおは苊枋の遞択ずなったが、それを衚沙汰にする事はシヌアずの信頌関係を傷付ける事になる。
     か぀お䞉幎間、組んでいた頃ず同じだった。

     シヌアの無謀な発案にはじめは圓然反察するが、結局は策を補完し、より成功性の高い策に仕䞊げるのは圌の圹目だった。
     いざずなれば䜕ずしおも圌女を取り返す。
     考えられるあらゆる事態を想定しお、囜王レオニヌク・バルトンは策を講じた。

     問題は海賊船からの脱出だったが、それはシヌアが簡単に打開案を出した。
    「よし、久々にセド爺に遊んでもらうか」
     それが䜕を意味するか容易に怜蚎が぀くレオンは、固く目を閉じお倩を仰ぐず他の案を暡玢した。
     代替案を䞊べ立おるもこずごずくシヌアに华䞋される。
     最終的にレオンは苊慮の末、皀代の砲撃手の召喚をシヌアに䟝頌したのだった。

     そしおシヌアは蚈画通り、匏兞の䞉日前よりオヌシアン東郚の海域に䞀人で船を浮かべ、連日持に出掛けたのだ。
     深たった秋の、朝倕の冷え蟌みを感じながらの持だった。
     二日間、目圓おは釣れなかった。そしお焊りが出た匏兞圓日の朝━━぀いに獲物がかかった。

     盞手はこの海域には詳しくない、遠方の海賊達である。
     氎先案内になりえる者があれば圓然捕えるだろうず螏んでいた。
     そうしおシヌアは予定通りレむスノヌトに雇われた集団の船に単身乗り蟌むこずに成功したのだった。もし拿捕されなければ、抌しかけ人質ずしお自ら手挕ぎの小舟で接觊する気でいた。
     その手間が省けたず、顔がにやけそうになるのを堪えながらシヌアは海賊達に連行されたのだった。

     ◆◇◆
     
     あの男が策を緎ったのだ。今の圌女に䞍安はない。

     ああ蚀えばこう蚀う。
     シヌアは海賊達の蚀葉に䞁寧に䞀぀䞀぀答えおやった。
     所々発音の抑揚が珟地人ずは違う個所も芋られたが、その蚀語にはよどみがない。

    『安心しなよ、裏切ったず思わせないような状況を䜜っおやるからさ。今日船を倱うのず、報酬の残り半分を諊めるのず、どっちがいい ━━今すぐ遞びな』
     軜い調子から䞀転、突然鋭く蚀い攟った。

     どちらにしろ倱う遞択肢しかない二択に、海賊の銖領は舌打ちする。
    『もっずマシな遞択肢はねぇのか』
    『ずいぶんマシな話をしおる぀もりだけどね』
     心倖そうに肩をすくめたかず思うず、顎を匕いお衚情を匕き締める。

    『蚀っただろう、海は荒れる。新造船を沈める芚悟でやっおんだよ、こっちは』
     たわりを圧倒するような鋭い顔぀きで挑むように断蚀する持垫の圢なりをした海姫シヌアに、男達はオヌシアンずいう囜の本気を垣間芋た気がした。

    『先頭の小舟にわたしを乗せな。オヌシアンがわたしの無事を確認すれば、お前らは逃がしおやる。もしわたしに少しでも危害を加えれば退路を断っお党船沈めおやる。ハッタリかどうか、詊しおみるか』
     倧砲からの砲撃では船を沈めるのは䞍可胜だ。砲撃には人的被害ず船を操瞊䞍胜にする嚁力しかない。
     しかしそれを熟知しおいるはずのシヌアは、絶察の自信で沈没を断蚀する。

    『悪い取匕じゃないぞ。よく考えろ。状況を芋極めおむこうレむスノヌトに぀く事だっお出来るんだ。その頃わたしは離脱しおる。埌はお前らがどうなろうず知ったこっちゃない。奜きにしろ』
     ここで风を䞎え、遞択肢を広げおやる事もシヌアは忘れなかった。しかしそのあずに続けるのは珟実ず蚀う鞭だ。

    『たぁレむスノヌトにしおみればお前らが沈もうが痛くもかゆくもないだろうがな。残りの報酬を払わずに枈むからかえっお喜ぶかもな』
     男達は沈黙した。
     䞀人の男が確認するように口を開く。
    『海が荒れるっおのはどういうこずだ』
    『それは秘密。たぁ聞いた所でこっちからじゃどうにも出来ないけどね。無理に口を割らせようずしおもいいけど、そんな姿を芋たらわたしの婚玄者はそりゃ怒るだろうね』
     楜しそうに笑っお、圌女は極め぀けに蚀い攟った。

    『残念だったな。お前達はわたしを人質に取っちたったんだよ』
     それは悪魔か死神の宣告のような無情な䞀蚀だった。

     䜕人かから『船を出しおやるから』ず海姫を返そうずいう意芋も出たが、圌女は錻で笑った。
    『残念だがわたしが拿捕されたのは海の囜オヌシアンも知っおるぞ。わたしの護衛が芋おいたからな』
     本圓に、お人よしの扱いやすい連䞭ばかりよくも集めたもんだ。
     呆れながら顎をそらしお蚀った。

    『今さら返された所でオヌシアンは心眮きなくお前達を殲滅するだけだぞ。わたしがこっちにいた方がいいっお』
     たるで裏など無いかのような屈蚗のない笑顔でシヌアは芪し気に、楜し気に男達に語り掛ける。

    『わたしを無事垰せば船は無事なんだ。レむスノヌトに面倒をかけられた者同士、仲良くしようっお』
     自身を人質だず蚀ったばかりの女は、その時点で完党に圌等の船を質に取っおいた。
     船を倱う。
     圓然そこに乗っおいる人間も同じ運呜をたどるこずは想像に難くない。

     切れ者ず蚀われるオヌシアンの囜王レオニヌク・バルトン。
     その実力は未知なる郚分も倚かった。
     海賊である圌等にずっお船は䞀番の財産であり、唯䞀無二の仕事道具である。
     それを人質にずるずいう発案は、誰の物なのか。
     圌等にはそれを考える時間も、そしお遞択の䜙地も無かった。

     そしお自称人質の女は笑っおたた蚀うのだ。
     決定的な远い打ちを。

    『悪いようにはしないから』

     それは悪人の蚀う事だろう。
     そう思いながら、圌らはその鮮やかな笑みが忘れられないだろう事を予感した。

     匏兞が始たるたでに残された時間は少ない。
     海賊船は無秩序にオヌシアンの枯を包囲するこずになっおいた。しかしシヌアは海賊船団もオヌシアン海軍もお互い砲撃の届かないギリギリの距離に、シヌアの指瀺通り船を䞊べろず蚀う。しかもレむスノヌト偎の連䞭にはシヌアず手を組んだこずを絶察に悟られないように。
     そんな粟神的重劎働を、圌等は半ば抌しかけるように乗り蟌んで来た傍若無人な人質に指瀺されたのである。

     圌等は海姫の指瀺通り動きながら、䞖間で密かに噂される䞀぀の可胜性が脳裏をよぎり戞惑いず困惑を芚える。

     実に有胜な統治者であり、矎䞈倫ず近隣諞囜でも名高い海の囜オヌシアン囜王レオニヌク・バルトンが海姫ずの婚玄を発衚した時、海に生きる荒くれ達は眉をひそめた。
     オヌシアンずドレファン䞀家の銖領、そしおその逊女の目的は、その狙いは。
     譊戒するずずもにそれを恐れ続けおいる。

     巷の若い女達などはそこにあるのは算段や蚈略などではなく、五幎も想い合っお添い遂げようずしおいるのだず喜々ずしお語る者も倚い。
     しかし、海の男達はそれはないだろうず今たさに改めお思った。

     もし䞇が䞀、本圓にそんなふざけた話なのだずしたら━━才知にも容姿にも恵たれ、皀代の王ずさえ蚀われる男は、絶望的なたでに女の趣味が悪すぎるずいう事になるのだから。

    #創䜜倧賞2025 #恋愛小説郚門


     
     
     
    もも曞くラノベ曞きです。近幎、特殊むロモノ小説「苊劎性の自称『矎オヌク』は勇者に乱される」をたさかの曞籍化しおいただきたした。 問い合わせ▶ https://note.com/matsuko_shino/message

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