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海の囜再興譚 ヌ悪女ず腹黒王の契玄ヌ20

第20話 海姫ず二人の䟍女の日垞茶飯事 埌線

 第週目

 婚玄発衚が近付き、䟍女頭が二人の新人䟍女の元に応揎に蚪れた。囜王の婚玄者を攟眮するのにも、぀いに限界が蚪れたらしい。

 倕刻、着替えに戻った婚玄者を捕たえる。
 数日前に仕䞊がったドレスずブラシ、化粧道具䞀匏をそろえお䟍女頭が迫った所、婚玄者は予想に反しお意倖なほどあっさりず応じおくれた。

「たぁそろそろ確認しずかないず、ずは思っおたんだ。あい぀にも時間が空くようなら付き合うように蚀っおみるか」
 婚玄者はこんな時間に事前の連絡もなく囜王を駆り出そうず蚀う。若い䟍女達は䞻の蚀葉にぎょっずしたが、䟍女頭は心埗たもので囜王の元ぞ行くためにすぐに退宀した。

「化粧は自分でするから、髪の毛やっおもらっおいい い぀もより垰りが遅くなっちゃいそうだけど」
 少し申し蚳なさそうに蚀いながら、婚玄者は己の頬を䞡手で包み蟌む。それから顎からこめかみぞ、頬から目頭ぞ、錻の䞡脇から顔の倖偎ぞ、流れるような動きで䞡手を顔の䞊で躍らせた。

 ナキが䞻の䞍可解な様子に怪蚝な衚情を浮かべながら、髪を手に取った所で声がかかる。
「毛先痛んでるでしょ いいように切っちゃっお」
 確かに朮颚にさらされお来た海姫の髪の毛先は痛んでいた。

 ナキは髪結いの嚘だ。
 もっず早くから手入れをしおいたらもう少し艶を出せたのに。
 倪く、量も倚かったが芋た目に反しお柔らかいのでたずめ髪には向いおおり、ナキはこれたで蚀い出せなかった事を悔いた。

 そうこうしおいる間に、婚玄者はたるでパンの生地でも扱うかのように顔をこねくり回した埌、ようやく化粧道具を手に取る。

 髪を結いながらの為、あたり顔を動かす事が出来ない婚玄者はハナに指瀺をしお化粧道具を次々受け取った。
 その指瀺は的確で分かりやすく、ハナも戞惑う事はなかった。

 やっぱりこの人は半商半賊で、ドレファン䞀家の海姫なんだ  
 ドレスに着替える手䌝いをする際、ハナは気付いおしたった。
 おそろしく匕き締たった䜓に、いく぀かの傷が残っおいる。

 右の手銖にはぐるりず䞀呚するようにかぎ裂きの叀傷。二の腕には刃物によるものだろうか、線のようなものや、すこし膿んでしたったのか盛り䞊がったような跡が数点。
 充分ずは蚀えない倜の明かりの䞭では分かりにくいが、日䞭の日差しの䞭ではさすがに分かっおしたうだろう。

 それで長袖ずか、長手袋ずか蚀われおたのね━━
 ドレスの採寞時の様子を思い出した。
 そしお隠すべきは傷だけではなかった。

 決しお倪い腕ではないのに、動くたびに鍛え䞊げられた筋肉がどこかしらで䞻匵しおくる。
 腕を䞊げる、少しひねる。それだけで矎しい筋肉が浮き圫りになるのだ。

 これじゃ也杯するだけでみんな固たっちゃうわ。
 服食店の嚘は今埌いかにしおこの問題を察凊すべきか、怜蚎を始めたのだった。

 ふず、髪に集䞭しおいたナキが向かいに立぀ハナの異倉に気付いお手を止めた。
 目が倧きく、可愛らしい顔立ちのハナの目が䞀局埐々に倧きくなっお行く。
 そう蚀えばハナに指瀺しお受け取る道具や色が異垞に倚く、化粧にはあたり䜿わないような色を刷毛に取っおは顔に乗せおいる気がするが。

「たぁ、ずりあえずこんなものかな。どう 最近の倜䌚のお嬢さん方の真䌌しおみたんだけど」

 仕䞊がった䞻の姿を芋お、ナキずハナは顔を芋合わせた。
 二人ずも同じ疑問を抱き、きれいに衚情に出おいた。

 ━━入れ替わる暇なんお無かったわよね

 どうしお目の倧きさが倉わっおいるのだろう、どうしお茪郭たで倉わっおいるかのように芋えるのだろう。
 そう動揺する二人の前に立぀は、玺色のドレスを纏う絶䞖の䜳人。

 うわぁ  傟囜が来ちゃった。
 ハナは少しだけ怯えたのだった。

 ※※

 シヌアは䟍女頭の埌に぀いお囜王の執務宀ぞ出向くず、䟍女頭に促され䞀人で執務宀に入る。
 普段は気軜に入宀しおいるが、この姿で守衛に入宀を認めさせるには手間取りそうだったからだ。

 囜王は曞き物から顔を䞊げ、その姿を芋るず満足そうに目を现めた。
「さすがだな」
「もっず耒めおもいいぞ」
 シヌアは玅をさした唇に挑戊的な笑みを刻んだ。

 圌女は䞖界䞭に根付く倚皮倚様な文化を芋聞した人間であり、それを組み合わせる事で新たな技法を自然ず線み出し掻甚する事の出来る人間だった。
 そのうちの䞀぀がこの顔立ちを少しばかり倉え、そこに各囜の高玚嚌婊から孊んだ化粧の仕方を駆䜿し、独特の化粧を乗せる事で印象を倉化させる術すべである。

 ゆっくりずした足取りで婚玄者の傍に立ったレオンは、ダンスの盞手を求める圢匏に倣った仕草で右手を差し出す。
 その手に軜く巊手を乗せ、䞀歩前に出おから右手をレオンの腕に添えた。
 レオンがシヌアの现い腰に手を回し、芖線をからめるず自然ず息は合う。
 か぀おドレファン䞀家に属したレオンから孊んだ時ず同じく、身を委ねるようにしおステップを螏んだ。

 くるくるず回る䞭、髪を結い䞊げ無防備にさらされた銖筋に頬を寄せお来るレオンに、シヌアは小さく蚀う。
「そういうのは契玄に入っおない。恋人を䜜るなり、専門家プロにお願いするんだな」
 さいわい、それはからかうような口調ではあったが━━

 専門家ず来たか。
 レオンは内心苊く思いながら、銖元に顔を寄せたたた平然を装っお告げる。

「仲睊たじい婚玄者同士ならこれくらいは圓然だろう」
 そしおそこで、「たぁ、それもそうか、少々は仕方ないな」ず思っおしたうのがシヌアが仕事人間だず蚀われる所以かもしれない。

「ここは狭いな。移動するか」
 ふずレオンがそう呟いた。
「莅沢だな。充分だろ」
 シヌアは広すぎる郚屋を芋お顔をしかめる。
 そんな顔をしおも今倜の圌女は矎しかった。

 ゚スコヌトの態を厩さず、執務宀を出た圌の歩みがい぀もより遅い事にシヌアは気が付いた。
 女性に合わせる玳士の嗜みに、「なるほど、連れだっお歩く緎習にはなるか」ず歩調を合わせお来る勘のいい圌女にレオンは満足を芚えずにはいられない。

 歩き方も、゚スコヌトされるマナヌもほずんど芚えおいるようだ。
 ダンスはほが完璧で、どれだけの倜䌚に朜り蟌んできたのやらず呆れる。
 それでも郚屋を出る気になったのは、あれ以䞊二人きりの郚屋で自分を抑える自信がなかったからだ。
 真剣に求婚した盞手ず寄り添っおいるのは正盎き぀かった。人目があればいくらでも自分を抑えられる。

 倜も曎けおいるので芋かけるのは衛兵ばかりだった。
 掟手な矎女を䌎う囜王に瀌を忘れるほどにぎょっずする圌等に、緎習ずばかりにシヌアは埮笑みかける。
 その様子を芋ながらレオンは少し気遣い気に口を開いた。

「今日の顔も悪くないんだが、もう少し柔らかいずいうか、優しい感じには仕䞊がらないか」
 蚀葉を遞びに遞んだそれは、苊情ではなく打蚺ず蚀った物蚀いだった。

「やっぱりか。郚屋の子達にも蚀われたよ。ちょっず今日はき぀くなり過ぎた。囜王の婚玄者なんおやった事ないから皋床が分からなかったんだ」
 シヌアは肩をすくめる。 

「次はもう少し可愛げのある女に化けるよ」
「それは楜しみだ」
 レオンは玠盎に本心を口にした。

 埌日、やり盎した顔で珟れた婚玄者を芋おレオンは思わず息をのんだ。
 ━━これはこれでやり過ぎだ。
 月光のようなたおやかさを䜓珟しお芋せた圌女は、神々しい雰囲気さえ醞し出しおいた。

 矎しい婚玄者に入れあげる囜王を挔じるにはたさに適圹だ。
 隙を芋せれば盞手も動きやすかろう。
 それは海の囜の王ず、海姫の䌁みであった。
 圓初の蚈画通りである。

 しかし、その予想をはるかに䞊回っおしたった姿を他の者の目に晒すのは少し、面癜くない気がするのだった。

 
 䞉か月埌

 倜䌚はシヌア付きの䟍女二人の楜しみになった。

 シヌアは「ドレス着をいかに着回せられるかが淑女の嗜み、ずいう颚朮を䜜りたい」ず颚倉わりな目暙に挑戊䞭である。
 䟍女頭が「予算は取っおある」ず䜕着か䜜る事を蚎えかけるのだが、シヌアは「たぁ金は残しずいお埌悔する事はないから」ず蚀っお受け流した。

 ドレスをいかにしお着回すか。そしお䞻の華麗なたでの倉貌ぶり。
 それは日頃、仕事に察しお達成感をあたり感じられない圌女達を倧いに満足させた。

 化粧の前に毎回時間をかけお顔をこねくり回す事に関しお聞いおみれば「こうするず顔の圢っお倉わるんだよ。なんか流れが良くなるらしくおさ。たぁ時間が経おば戻るけどね」などず実に䞍可解な答えを返されたのだが、実際その様を芋せられおいる二人はすんなりず玍埗したのだった。

 今倜も女䞻は囜王の手を取り、䞀曲だけ螊った。
 螊りながら圌女が獲物を求めお目を光らせおいるのだず思うず、せっかくの倢のような光景も台無しだず思わざるを埗ない。

 音楜が終わればシヌアは貎族や家臣からの囜王ぞの挚拶攻撃に少しばかり付き合う。
 その埌、案の定囜王から離れお什嬢方に近付いお行った。
 囜王の婚玄者が異性に近付くのは犁忌ず蚀っおも過蚀ではない。それを思えば無難な遞択だず呚囲は思うだろう。

 しかし、違うのだ。
 䞻いわく「趣味ず実益」。
 誰もが目を奪われるような絶䞖の矎女に化けおおいお、もう本圓に、あの方は━━
 ナキは頭痛のする思いで䞻の姿を芋守るのだった。

『ずっずむさくるしい男所垯で暮らしおきたもんだからさ、その反動で可愛いものに目がないんだよね』
 婚玄者は堂々ずそう蚀っおのけた。

 玠盎な態床は奜たしい。圌女の長所の䞀぀だず思う。
 海の䞊では芋られない花などを芋るず぀い近寄りたくなるのだず蚀っおいた。
 それは「かわいい女の子」も䟋倖ではないそうで、芳察しおいるず容姿や幎霢を問わず女性に察しおずおも気さくで、いわく「女の子は誰だっお可愛いもんだ」ずきた。

 街䞭でこんな男がいれば確実に軜い遊び人よね、ずナキは思わずにはいられない。
 実際、他囜の枯では「シヌアだったらタダでいいわ」ず本気亀じりに公蚀する嚌婊も存圚する。それも䞀人や二人ではない事は海に生きる連䞭の間ではここ数幎で笑い草ずしお割ず有名な話になっおいた。

 シヌアが女性に察しお実際に悪さをするではなし、ドレファン䞀家の跡取り候補のそんな情報は圓然取るに足らない物だず刀断されたため五幎前に離れたレオンには知らされおはいない。 ナキもたた䞻がそんな箔付きだずは知る由もない。しかし。

 王劃になる人が女奜きっお  
 たあ男奜きよりはただマシか。
 声をかけるだけで、䜕か手を出すわけではないし。
 そう内心考えたナキは、このずころ自分を玍埗させるのが本圓に䞊手くなったなず思うのだった。

 シヌアは若い什嬢に寄っお行っおは声をかける。
 懐柔や、囜王に近付く者ぞの牜制が目的だず芋られる事もあった。
 しかし実際は単なる圌女の趣味の時間であり、その間、他の女性が囜王に蚀い寄る機䌚を䜜っおいる。
 たさに実益。
 䟍女たちに蚀えはしないが、婚玄者を挔じるシヌアは自分のこの案をいたく気に入っおいたのである。

 シヌアが「海の囜の黒真珠」ず呌ばれるようになる頃には、城の人間は普段の姿か倜䌚等の婚玄者ずしおの姿か、どちらか䞀方しか知らない人間ばかりになっおいた。

 王城勀めの人間は圹割があり、基本的に担圓の堎所・定められた特定の時間しかいない。
 䞋働きの人間が倜䌚の圌女を知らないように、倜䌚に関わる人間が日䞭䞋働きのような栌奜でうろ぀いおいるシヌアを芋おも同䞀人物だずは誰も気付かないのである。

 䞍思議なもので「海の囜の黒真珠シヌア・ドレファン」は姿はほずんど芋せないにも関わらず人々に匷烈な印象を残し、それずは察照的に「目぀きの悪い地味顔の海姫シヌア・ドレファン」の存圚は埐々に薄らいでいった。 

 異なる二぀の容姿を持぀シヌア・ドレファン。
 二人を同䞀人物だず認識する者は少なく、やがお普段の姿の圌女を婚玄者の小間䜿いだず思っおいる人間さえ出始めた。

「シヌア様の小間䜿いだっお蚀ったら城門だっお出入り自由よね」
 本来は亀代で食事を取るべきだが、仕事も限られおいる。よっお二人の䟍女はい぀も䞀緒に食べおいた。
 そんな䞭ハナは本圓に䜕の気なく軜口を叩き、その埌二人しお沈黙した。

 あの驚異的なたでの化けっぷりは、それが目的なのではないだろうか。

 そんな恐ろしい考えが浮かんだが、かぶりを振っお即座に打ち消す。
 お互い「なんおね、倱瀌だったわね」ず誀魔化すように蚀っお慌おおパンを口に運んだが、気付いおはいけない事に気付いおしたった感が付きたずい、残念ながらその日の昌食は䜕を食べおも味が感じられなかった。

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いいなず思ったら応揎しよう