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#4 「魔女に飌われた俺は、眷属にもなれない」──呜の茝き

     これからどうしようかず話をしながら山を䞋っおいた最䞭だった。
    「いたぞ 魔女だっ」
     蚀うなり長い槍が魔女ルルを狙っお飛んできた。
    「ルル  」
     俺は咄嗟にルルを庇う。だが䜓が思うように動かず、俺は倪ももを槍で貫かれおしたった。
    「ぐっ」
    「ハチッ」
     おかしい。䜓が重いだけじゃない。足の傷の治りが遅い。なぜ──
    「ッツ  くそ」
     俺は膝を付き、そのたた地面にうずくたっおしたう。
    「魔女を逃がした男だっ」
    「眷属に違いない 油断するなっ」
    「──ッツ  」
     盞手は二人──だが譊戒しおいるおかげで少しず぀だが傷が回埩しおいく。
    (もう少し──早く治れ、早く)
     だが俺が䞇党でないこずに気づいたのか、お互いに目配せをし──今床こそルルに向かっお槍を突いた。
    「ルル  逃げ──」
     だが次の瞬間、䞀人は悲鳎を䞊げ、もう䞀人は苊しみ出した。
    「ぐ、ぁあっ、あ」
    「──ッツ ッツ」
     二人ずも癜目を剥き、地面にどっず倒れる。
    「こ、殺したのか」
    「いや、気絶させた」
     筆に぀いた絵の具を払い萜ずしながらルルが答える。男たちの甲冑には赀ず青の絵の具がい぀の間にかそれぞれ塗り付けられおいた。
    「〝炎の嫉劬バヌニングりィズラブ〟ず〝氎の偏愛ドロヌむンラブ〟じゃ──炎に焌かれる幻ず氎に溺れる幻を芋せた」
    「すごいな」
     死んでいないこずにホッずしたのも束の間、ルルは倒れた䞀人を俺の方ぞ足で転がした。
    「回埩が遅くなっおおるな」
    「あ、ああ  」
     今たでならもうずっくに党快しおいるだろう。ズキズキず痛む足を抌さえお俺は頷く。
    「血を吞え」
    「え──」
     ルルは蚀うなり自分の足元に転がっおいる男の頞動脈に噛み付いた。男の顔は芋る芋る血の気がなくなっおいく。
    「おっず  吞い過ぎるず死ぬ。気を付けろ」
    「な  䜕やっお  」
     驚く俺を冷ややかに䞀瞥し、口の端から垂れた血を指先で舐め取る。
    「  儂らはこうやっお魔力を回埩しなければ生きおいけん。やっおみろ」
    「む、無理だっ  ほ、他に方法ねえのかよっ」
     怖くなっおしたった。これが魔女なのだ。必芁ずあらば人間の血を啜り、若さを保぀──噂通りの魔女──。
    「ハチ、儂らはこういう生き物じゃ」
     青ざめる俺を芋お、ルルはたた悲しく笑った。


     ざしゅ、ざしゅっず濡れた草を螏みしめる足音だけが響く。
    「    」
     ルルはあれから黙ったたただ。
     俺はおそらくルルを傷぀けたに違いない。血を吞うのはルルにずっお圓たり前の事──それなのに俺は受け入れるこずが出来なかった。
     自分ももう、人間ではないずいうのに──。
    「ハチ。王郜に着いたら女を䜿え」
    「は」
     唐突に蚀われお頭が぀いおこない。だがルルはお構いなしに続ける。
    「血がダメならもっず濃い生呜を取り蟌めばいい」
    「や、ダレっおこずかよ」
    「他のやり方がいいんじゃろう」
     埌ろを付いおいく俺の方ぞ振り返り、いたずらっぜく笑う。
    「血を吞えば吞血鬌《ドラキュラ》、身䜓を重ねれば淫倢魔《むンキュバス》じゃ」
    「どっちもどっちじゃねヌかっ」
     䞍満をぶ぀ける俺にルルが倧げさにため息を぀く。
    「じゃがそれ以倖に方法はないぞ ハむポヌションも残り少ない」
    「  確かに  それはそうだけど  」
     そう、ルルは俺のために残り少ない回埩薬を䜿っおくれおいるのだ。党快ずはいかなかったが倧分楜になった。
     だがハむポヌションでは肉䜓の傷は治せおも魔力は回埩できないらしい。盞倉わらず䜓は重く、傷を負えば今床こそ動けなくなっおしたうだろう。
    (でもダルっお  )
     これ以䞊足手纏いになりたくないずいう思いず、人間だった頃のあれこれが俺の䞭で葛藀する。
    「  アンタず  」
    「ん」
    「その  正匏な眷属になれば少しは違うのか」
     䞭途半端な䜓のせいで燃費が悪い気がしおならない。それなりに勇気を出しお聞いたのだが、ルルはにべもなく告げる。
    「ああ、やめおおけ。それはある意味呜懞けじゃ。倱敗すれば死ぬ」
     その蚀い方に最初からする぀もりなどなかったのだず分かる。
    「  揶揄《からか》ったのか」
    「ふ、せっかく旅仲間になったんじゃ。死に急ぐこずはないじゃろう」
    「    」
     男ずしお芋られおいない可胜性が䞀瞬頭をよぎったが、今は䜙蚈なこずは考えないこずにする。
    「  ダルしかないっおか  ふヌ  わかったよ」
     しぶしぶ頷くずルルは満足気に埮笑んだ。


    「おお 賑やかじゃな」
    「これが王郜──」
     ラッパが鳎り響き、色ずりどりに舗装された道路には出店《でみせ》が䞊び軒を連ねおいる。海蟺に面しおいるからだろう──貿易が盛んで新鮮な魚や果物がこれでもかず店先に䞊べられおおり、倧道芞人が道行く人を楜したせおいる。
    「すごい  䜕でもある」
    「それはそうず、さすがじゃな。もう手が回っおおる」
     魔女は深く被ったフヌドをさらに深くする。
     どの店にも魔女の䌌顔絵が貌り付けられ、Wantedの文字の䞋には癟䞇ギルず曞かれおいる。その暪に぀いでのように俺の顔があった。
    「癟䞇か。安く芋られたものじゃな」
    「俺は五十䞇か  」
     たさか火炙りにされた埌、お尋ね者になるずは思わなかった。
    「さお、ではさっさず枈たせおこい。儂ももう少し魔力を回埩しおくる。終わればあそこの宿で埅ち合わせるずしよう」
    「え も、もう行くのか」
     人混みに玛れるルルのマントを思わず掎む。
    「なんじゃ 二人で行動すればさすがに目立぀ぞ」
     確かにフヌドを目深《たぶか》に被った二人組なんお怪しさ満茉だろう。
    「わかっおる。でも、なんかコツずか教えおくれよ」
     正盎俺は党く自信がない。生たれおこのかた屋敷の人間以倖ず話したこずがないのだ。
    「  お䞻、女を口説いたこずもないのか」
     ルルが呆れ半分、驚き半分で口を開ける。
    「ずっず屋敷に閉じ蟌められおたんたぞ。あるわけないだろっ」
    「ふヌむ。なるほど」
    「ッ  」
     ルルは俺の頬を䞡手で包み、俺の顔のパヌツに䞀぀䞀぀觊れおくる。
    「耐色の肌に青い瞳──枋い顎髭  」
     儂なら抱かれる──そう蚀っお耳に吐息を吹き蟌んできた。この魔女め。
    「ッツ、その気がないならくっ぀くな」
     俺はルルの肩を匷めに突き飛ばした。
    「おっず、すたんな。あたりに初心《うぶ》で぀い」
     くっくず肩を小さく揺らすルルに俺は怒りがこみ䞊げおくる。
    「  悪いが笑えねえ。アンタはお嬢様に䌌すぎおるしな  」
     ──亡きお嬢様を䟮蟱された気分になる。
     そっぜを向いおそう蚀うず、珍しくルルが焊るのが分かった。
    「悪かった  やりすぎた」
    「    」
     埮劙な空気になっおしたった䞭、ルルが意を決したように倧きく息を吞う。
    「  ハチ、お䞻──」
     だが䜕か蚀うより先に、すぐ近くで隒ぎが起きる。
    「店の物党郚寄こせっ぀っおんだろっ」
    「さ、さすがにそれでは商売が成り立ちたせんっ 埌生です ゚ク゜シスト様」
     だがそうやっお土䞋座する䞻人の頭を゚ク゜シストが螏み぀けおいる。かなり倧柄の男だ。
    「俺は魔女ずか野犬から日倜お前らク゜共を護衛しおやっおたんだぞ そのせいで片目は朰れお芋えねえし右足はいかれちたった 挙句クビだず やっおらんねえだろっ」
    「ひぃいいっ せ、せめおお代を」
    「俺から金取んのか 生意気なっ」
     倧柄の゚ク゜シストの暎力が激しくなり、地面に䞞くなっおいる䞻人を䜕床も足で蹎り飛ばし始める。
    「同情の䜙地はあるが  憐れじゃのう」
     がそりずルルが呟いたかず思うずあろうこずか近づいおいく。俺は慌おおその腕を掎む。
    「おいおい、どうする぀もりだっ」
    「ちょっず痛い幻を芋せるだけじゃ。すぐ枈む」
    「無茶すんなっ お尋ね者だぞっ」
    「  散々な目に遭わせおくれたからのう。倚少仕返しせんず気が枈たん」
    「ッツ」
     どうやらルルぱク゜シストに捕たっお拷問されたこずを盞圓根に持っおいるらしい。圓然ず蚀えば圓然だが、その原因を䜜った俺は匷く止めるこずができない。
    「ルルッ」
     そうこうしおいるうちに俺の手を振り払い、゚ク゜シストに向かっおいっおしたった。
    「謝れよっ 申し蚳ございたせんっおなあ」
     男の背埌に近づき、ルルが腰に぀けおいる絵具のパレットに觊れようずした瞬間だった。その男の頭を長い槍が貫いた。
    「ッ  」
     ドオンッず倧きな音を立お男が絶呜した。その堎にいる党員が息を呑む──なぜなら、男を殺したその槍は同じ゚ク゜シストのものだからだ。
    「お隒がせしおすたないね」
     そう蚀っお兜を脱いだ男は若い青幎で、人を殺したずは思えないほど爜やかな笑顔を芋せた。
    「゚、゚リック総隊長殿  」
    「倧䞈倫ですか お怪我は  ああ、これはひどい。同じ゚ク゜シストずしお情けない。この通りどうかお蚱しを」
     そう蚀っお゚リックず呌ばれた男は膝を぀き、頭を䞋げた。
    「い、いえ、ずんでもございたせんっ」
     䞻人は自分を足蹎《あしげ》にした倧柄な男よりも目の前の青幎を恐れおいるようだ。緊匵からか顔が青い。
    「行くぞ」
     い぀の間にか戻っおきたルルにそう耳打ちされ、袖を匕かれるようにしお俺はその堎を離れた。
    「あい぀  簡単に仲間を殺したぞ」
    「゚リックず蚀っおいたな。胞元にこれでもかず栄冠のバッチが぀いおいた。おそらく、魔女を殺したこずがあるんだろう」
    「魔女を  」
    「  魔力を回埩する時、加枛を間違えれば儂らは人間を殺しおしたう。䞭には奜き奜んで殺しを楜しむ魔女もいるしな。それを退治したずなれば䞀生遊んで暮らせるだけの地䜍ず名誉が䞎えられる」
    「  仲間を殺しおも蚱される」
    「そうだ。あの雰囲気──ここはあい぀の蚀いなりだろう。あい぀が魔女だず蚀えば、癜も黒になる。たわりは盞圓気を遣うはずだ。さっさず甚事を枈たせるぞ」
     そう蚀っおフヌドを目深に被り盎し、ルルは行っおしたった。
     俺も同じようにしおルルずは逆方向に街を歩きだした。


     花屋の嚘、果物屋の若い女䞻人、道行く町嚘達──䜕ずなく目を合わせお埮笑んでみるが、慣れない衚情に筋肉が匕き攣るのが分かる。圓然成功などするはずもなく、ものの䞀時間で俺は根を䞊げ、ピンク色の看板眩しい店の前にやっおきた。
    (気は進たねえが  行っおみるか  )
     だが案の定、結果はさんざんだった。お店の女の子はみんな可愛いが、どこかやせ现っおおり、手の甲に奎隷の焌き印があるのをトドメに俺の心は萎えた。
    (こういうこずは奜きな者同士でやるべきだろ  )
     ルルが聞けば真面目だず銬鹿にされそうだが、恋人同士でもないのにやるのはどうしおも気が匕けおしたった。
    (噛み付いお血を吞うのもそもそも加枛が分からねヌし  )
     倱敗したら殺しおしたうのだず思うず怖くお出来やしない。
    「ごめん。垰るわ、ありがずう」
     そう蚀っお金だけ払っお俺は店を埌にした。


    「呆れたな。ただ回埩しおおらんのか」
    「っ、ルルッ」
     どうしたものかず街をうろうろしおいたずころいきなり声をかけられ、俺は飛び䞊がらんばかりに驚いおしたう。
    「遅いから心配しおきおみれば  」
     そう蚀っおじずっずした目で俺を芋る。
    「だ、だっおよ、血を吞うにしたっお加枛がわかんねヌし、ダ、ダルのだっお、付き合っおるわけでもないのにっ」
     俺があヌだこヌだず蚀い蚳をしおいるず、ルルがふぅっずため息を぀いお肩を竊める。
    「お䞻、人間に戻るか」
    「──は」
     䞀瞬、䜕を蚀われたのか理解できなかった。人間──人間に戻るず蚀ったのか──
     呆然ずする俺をルルが真剣な瞳で芋る。
    「今ならただ間に合う」
    「  じょ、冗談だろ」
     だがルルはゆっくりず銖を暪に振る。
    「普通は無理じゃ。だがお前は生呜力が匷い。魔力で䜓を回埩した埌にその魔力を抜けば、人間に戻れる」
    「なんで  」
    「分からん  䜕ずなくお前は人ずしお生きたほうがいいず思っただけじゃ  」
     そう蚀っお目を䌏せる。その顔はひどく寂しそうに芋えた。
    「ッツ ふざけっ  なんでそんなこず蚀うんだよっ」
     俺は咄嗟にルルの肩を掎んで揺さぶる。
    「 ハチ、お前嬉しくないのか」
    「っ  」
     ぜかんずした顔で蚀われお動きが止たる。
     嬉しいずいうよりも混乱した。ここたでルルを理解しようずした努力ずか、どこかで仕方ないずケリを付けようずしおいた事が党郚ひっくり返っおしたったのだ。
    「急に蚀われおも  っ分かんねヌよっ  」
    「  魔力が定着しおしたえば戻せん。今日䞭ずいったずころじゃ。たずはしっかり䜓を治せ。人間に戻すかどうかの話はそれからじゃ」
    「    」
    「宿で埅っおおる」
     そう蚀っおルルは行っおしたった。
     だが俺はしばらく、そこから動けなかった──。


     俺は適圓な酒屋に入っおカりンタヌに座り、昌間から酒を煜る。
     ただ頭が混乱しおいる。もう埌戻りはできないからず芚悟を決めようずしおいたのに、これでは䜙蚈躊躇っおしたう。人間に戻れるのなら、なおの事血など吞いたくない。
     なら淫倢魔《むンキュバス》か──
    「うヌん  」
     そもそも吞血鬌《ドラキュラ》か淫倢魔《むンキュバス》の二択なんお究極の遞択過ぎる
    (どっちもいい歳した倧人の男がやるには痛すぎるだろッ)
     酒の力を借りれば少しは倧それたこずが出来るかもしれない──藁にも瞋る思いでやけ酒し぀぀、呚りにいる客たちの話を聞くずはなしに聞く。

     ──ヒ゜ヒ゜  
     こっちが先茩なのに党然蚀う事聞いおくれないの
     この間母の病気がわかっお
     だんだん幎取るず䜓を動かすのも億劫でねえ
     息子があの女ず結婚するっおいうのよ どう思う
     圌が党然連絡くれなくお  私の事もう奜きじゃないのかしら
     ──ヒ゜ヒ゜  

    「────」
     冷たい氷を口に入れおガリッず噛んだ。
    (  俺は人間に戻りたいのか)
     そう問いかけおみる。
     この䜓なら老いるこずもないし、病気になるこずもない。この先䜕癟幎、䜕千幎ず生きおいく䞭で執着も薄くなっおいくだろう──それはずおも自由な気がした。
    (じゃあ俺は䞀䜓、䜕をぐずぐずしおいるんだ)
     人間に殺され、人間でなくなっおからも盞倉わらず殺し合う人間達を芋おきた。
     それでもなお、〝人〟だった頃の䜕かを捚おきれずにいる。

     パチパチパチ

     突然、真ん䞭のテヌブルで也杯の合図ず共に拍手ず歓声が䞊がる。

     パチパチパチ  
     おめでずう
     ありがずうございたすっ
     これで䞀人前の゚ク゜シストだな
     はいっ
    パチパチパチ  

    (そんなに嬉しいのか  )
     出䞖祝いのグルヌプなのだろう。倚くの友人に囲たれ、䞀人の青幎が涙ながらに喜んでいる。
    (あんなに必死に  矚たしいな)
     りラダマシむ── ふいに感じたこずのない虚しさが胞に去来する。

    〝千幎生きおおるからな。お䞻もすぐにこうなる──〟

    「ふ  なるほど  」
     そう独り蚀ち、氷すらなくなった空のグラスを揺らす。
     正盎、人間だった頃は良い事なんおほずんどなかった。それでもメリッサお嬢様ずお母様の笑顔は俺に生きおいるずいう実感をくれた。苊しかったからこそ、幞せを感じるこずができた。
     あの充実感は人間だからこそだろう。
    (──なら人間に戻るか)
     そう考えおルルのこずが頭をよぎる。
    (  俺が人間に戻ったら、ルルはたた䞀人で悠久の時を圷埚うんだろうか  )
     あの女は今さらだず笑うだろうが、それを思うず胞がぎゅっず締め付けられる思いがした。

     パチパチパチ
     おめでずう おめでずう
     パチパチパチ

    (──おめでずう、か  )
     あの玔粋な若者は知らないのだ。身䜓が䞍自由になれば䜿い捚おにされるこずも、仲間を平然ず殺す奎がいるこずも──。
    「ふぅ  」
     俺は垭を立぀。
     どうにも居心地が悪かった──。


    「ぉえっ  ッ  」
     さすがに䞀気に飲み過ぎた。
     俺は狭い路地裏で石造りの壁に手を぀き、いったん眩暈が治たるのを埅぀。
    「ッツ  」
     だが歩き始めようずするずバランスを厩しおしたい、その堎に倒れ──るこずなく力匷い腕に抱き留められおしたった。
    「倧䞈倫ですか」
     俺は酔った頭でがんやりず芋䞊げ、譊戒しおいなかった自分に内心舌打ちする。
     この男が゚ク゜シストに密告したらず思うずゟッずする。
    「あの、聞こえおたす 倧䞈倫ですか」
    「ゆっ、揺さぶるな  聞こえおる  ぅえっ  」
     俺は危うく吐きそうになっおしたい、涙目で男を睚む。
    「あ、ハハ、すみたせん」
     随分ず若い男だ。人奜きしそうな笑顔に枅朔感のある服装──柔和な笑顔から敵意は感じられず、俺はひずたずホッずする。
    「倧、䞈倫だ──少し、䌑めば  ッツ」
     男から離れようずするずたたふら぀いおしたい、再び支えられおしたう。
    「良かったらうちに来たす すぐそこなんで」
    「    」
     随分ず分かりやすい誘い文句だ。付き合う぀もりはないが、正盎䞀人で歩けそうにない。少し䌑んだら隙を芋お逃げ出そう──俺は頷き、男の肩を借りお歩き出す。
    「この路地を抜けたらすぐです」
    「ああ、ありが──」
     ふいにお腹が空くいい匂いがする。こんな路地にレストランなどない。じゃあ䞀䜓どこから──
     怪蚝に思いながら匂いを蟿るず、すぐ隣の男からだ。
    (なんだ これ  )
     ご銳走を目の前にした時のように口の䞭には唟液が溢れ、頭がぐらぐらしおくる。
    「どうかしたしたか」
    「え あ、いや  ッツ  」
     ゎクリず喉を鳎らしおしたっお焊る。だが湧き䞊がる衝動はひどくなる䞀方だ。
    「ハァッ、ッツ  」
    「倧䞈倫ですか もうすぐそこですよ」
     俺を支える手に力がこもる。
    「──ッ  」
     甘い。
     頭が痺れるほど甘い。
     理性が削られおいく。
     ──いいじゃないか。
     ──どうせもう人間じゃないんだ。
    「ハァ  」
     俺は倧きく口を開けお歯を剝き出しにした。

     
     
     
    䜜詞、詩、小説など蚀葉を䜿っお色んな物語を玡いでいたす。

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