
<言葉の密度> 習作#05 責任
昇進には興味がなかった。
余計な責務は、
僕のワンルームには必要のないものだったから。
図書館の窓口の女性と、
週末ごとに言葉を交わすようになった。
関係を育むとは、
本を手に、
二人で海や美術館を巡ること。
そうするうちに、
心は上に、広がっていくと知った。
その次に、
必要十分だった給料は、十分を満たさなくなった。
心は浮き立つのに、
体はもう身軽に生きることはできなくなっていた。
彼女との時間。
心の高鳴り。
温泉旅行の夜。
それらと引き換えに、
引き受けないといけないもの。
浮ついた心への錘(おもり)。
目の前にずしりと垂れる、
彼女の乳房。
***
執筆メモ:今回の#05では、「責任」という言葉の意味が主人公の中で少しずつ変容していく、
そのズレ自体をストーリーにできるかを試してみました。
「必要」「十分」「浮つく」「錘」。
それぞれの言葉が、関係の変化とともに少しずつ重量を持っていく。
そんな変化を楽しんでもらえたらと思います。
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Open Script Labo『ある映画作りの記録』
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