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【二次創作 小説19 20 21 呪術廻戦 懐玉・玉折】五条悟との邂逅 黎明編19〜21(完結)

    ご覧いただきありがとうございます。この小説は約5200文字で、約13分程度でお読みいただけます。
    【pixivの更新に合わせて再公開予定です。】

    ※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
    ※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
    ※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

    ◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
    ◆「夢小説」タグは広義で使用しています。不快な方はご注意ください。

    🌀念のため1〜3話目のリンクを置いておきます。


    ●19

     俺は焦っていた。焦っていたから見誤った。
     そんな焦りすら、あの男の思惑通りになった。

    「──ようやく、術式頼りの守りに入ったな」

     無下限呪術を纏った俺に、男の刃は届かないはずだ。
     ──しかし、現実は違った。
     男の振るった刃はことごとく、俺の身体を切り裂きさいていく。スローモーションのようにゆっくりと。
     焼けるような痛み、飛び散る鮮血。

     ──何もかもが赤く染まっていった。

     ……真っ暗になった視界に光が差した。
     死ぬ間際で会得した反転術式。
     周囲には先ほどの男も、呪霊もいなかった。
     思ったより時間がかかってしまったようだ。

     何もかもが見え、理解出来てしまう。
     それがまるでひどく面白いことのように感じて、笑いが込み上げてくる。

     そして俺は、あの男を見つけ出し戦いを挑んだ。
     今は何よりあの男を見つけ出して決着をつけないといけないと思ったから。

     とても気分が良かった。
     晴れやかな気持ち。
     清々しくて戦っていることすら、どうでもいいと感じるほどの全能感。

     男は知っていた。五条家の人間がどんな術式を使うのか。だから対策が出来ていた。それならば──

     順転と反転を衝突させ生じるのは、五条家でも限られた者しか知らない術式。

     虚式 『茈』

     男の身体の一部を吹き飛ばした。

     明らかな致命傷、反転術式でも治せない。それでもこの男が立っているのは、それだけの実力者ということだろう。
    「最後に何か言い残したいことある?」
     男に声をかける。
    「──これで終わりか。ここまでやられるとは思っていなかったぜ……このまま見殺しにするつもりか?」
     男は誰にともなくそう言った。
    「何を言って──」
    「悟!」
     そよか、せいら、傑まで。慌てた様子で走ってくる。
    「あなたを一人にしてしまってごめんなさい」
     今にも泣き出しそうな表情でそよかは言った。
    「無事だったんだな」
     ホッと息をつく。急に現実に引き戻されたような……。
    「そよか! おじさんがたいへん!」
     せいらが慌てている。
    「お願い」
     そよかが腕を上げると、白猫の姿をした呪霊が腕に据えた。呪霊? 本当に呪霊か? 俺の六眼はその白猫に途方もないエネルギーを感じてぞくりと震える。
    「力を貸して──」
     そよかが白猫と額同士を合わせると、白猫の姿がそよかの中に消えた。

     莫大な呪力がそよかを中心に渦巻き始める。
    『其は長き旅の果ての到達者、其は厳しくも温かい運命導き手、開門せよ──癒しの力を、私に!』
     まばゆい光が視界を埋め尽くす。


    ●20

     生まれて何も俺は持たなかった。
     それはそれで別にいい。期待することもなければ、絶望することもない。出来ることをやって、そこそこ楽しめればそれでいいと思っていた。
     禅院家に居場所はなく、その内に穀潰しだと追い出された。
     そんなもんだと思っていた。何もかも面倒で、煩わしい。そういうことから離れて生きることは楽だなと感じるほどに。

     そんな無意味な日々を送っていると、一人の女に出会った。変わった女だった。こんな俺の手をしっかりと掴んでくれた。

     生まれて初めて手にした確かなもの。失いたくないなんて、柄にもないことを考える日々が続いた。
     その後、息子を一人授かって、あいつも喜んでいたから俺も初めて父親ってやつを意識したんだ。

     なんてことのない仕事。
     人を一人殺すなんて、俺にとっては造作もない。
     五条家のぼんを相手にするには骨が折れたが、これまでの経験と知識が役に立って倒すことが出来た。

     ──呪霊から拳銃を取り出し、天内理子の頭に狙いをつける。
     ぞくりと寒気がした。内臓をいきなり掴まれたような感覚、俺に向けた明確な殺意だ。
    「あ、本当に動きが止まった。やっぱりやる気だったんですね~。でもやめましょうよ。不意打ちなんて」
     なんとも気の抜けた声だった。高専の制服、腰に刀を下げている。しかし、殺意は間違いなくその男から発せられたものだとわかった。拳銃を向けて発砲する。視界から消えた!?
    「危ないなぁ。でも拳銃って不便ですよねー。避けられやすいし、こうして近付くと撃ちにくいし」
     背後から刀が首にあてられていた。
    「灰原? 東京の空港で分かれたのに……」
    「なんか心配で来ちゃいました! お疲れ様です!」
     呪霊操術使いの呼び出した呪霊が、天内理子を守るように前に出る。肉の壁のように広がったその影の中に──先ほど殺せなかった女がいた。
    「あなた、伏黒甚爾ね。私を殺さなかったのは、まだ呪霊に取り込まれた奥さんを助けたいと思っているからかしら?」
     ──記憶力のいい女だ。俺が五条家に泣きついた時のことを覚えていたな?
    「わかったわかった。降参だ」
     足元に銃を落として両手を上げる。
    「先輩! この人拘束しといた方がいいですよ!」
    「あぁ、そうしよう」
     呪霊操術使いが一体の呪霊を指先で招く。
     そいつは地を這うように近づき、俺の身体に巻き付き拘束しようとした──が。

    『拘束は不要よ』
     どこからか声がした。薨星宮に続く複雑な構造の空中に椅子にでも腰掛けるような様子で、こちらを見据える女がいた。白い着物を身に纏った、白い百合の花のような美しい女だ。
    「……誰だ?」
    『天元の代弁者、とでも思ってくれればいいわ』
     呪霊は俺の身体から離れ、ゆっくりと戻っていく。
    『星漿体と天元との同化は行わない事にしたのね。
    天元も選ばれし未来に賭けると言っているわ。
    星漿体との同化は中止──良いでしょう』
     女はゆっくりと天内理子へと視線を向ける。
    『天内理子』
    「はいぃ!」
    『あなたには、これから“天元の眼”として生きてもらえないかしら? 同化ではなく、天元の認識と記憶を補う“外部の視座”として。年に数日、拘束される時間は生まれるけれど──それでも構わない?』
    「勿体ないお言葉です」
     深々と頭を下げていた。
    『……よろしい。では告げましょう』
     女は一瞬、異なる何かの気配を纏い、声の調子が変わる。
    『天内理子の殺害は、天元に仇なす大罪とする。今後この決定を覆す意志を持つ者には、我らの全力をもって対処する』


    ●21

     ファミリーレストランの一角を占拠する妾たち。
    「あー死んだ死んだ。五条家のぼんはなんの躊躇いもなく人を殺すバケモンだな」
    「あぁ!? やんのかおっさん!」
    「悟、落ち着いて」
    「ねー! ねー! ファミレスでこんな賑やかにしてて大丈夫?」
    「妾が天元様より賜った特別な帳を下ろしておる! 安心するが良い! そして盤星教 時の器の会は妾のパトロンになった! ここは妾の奢りじゃ!!」
    「奢りって言うならザギンのシースーでも食わせろよー」
    「ドリンクバー頼む人挙手してくださーい!! あ、ウェイトレスのお姉さん! とりあえずメニューのこっからここまで2つずつで」
    「そんなに食べるのか?」
    「なんか最近よくお腹が空いちゃって」
    「そよかもサラダボウル食べる? 半分こしようよ。
    すぐるはホットケーキ食べる? 食べさせあいっこしない?」
    「いいね。そうしよう」
    「すみませんー! ミックスピザも三枚追加で!」
    「黒井もたくさん食べるのじゃぞ?」
    「お嬢様……お友達とファミレストークしたいって言ってましたもんね……」
    「泣くな黒井! これからいくらでも出来るんじゃからな!」
    「俺はマグロ御膳ととんかつ定食、それとビッグパフェ──パフェは食後だ。決まってるだろ」
    「──あの、とりあえずそろそろ本題に入らない?」
    「そよか先輩! あたたかい紅茶でも入れてきましょうか?」
    「おい待て灰原ぁ!! 俺がやる!」
    「えっ? 五条先輩が? もしかして、やっと告白したんですか?」
    「うるせー!!!」

     伏黒甚爾は、ある意味不幸な男じゃった。
    「お嬢様……」
     甚爾の話しを聞いて、妾はいつの間にか目に涙を浮かべていた。黒井が心配そうに妾にハンカチを渡してくる。
    「要は、そのおっさんの奥さんと二人目の奥さんと元旦那を取り込んだ呪霊を見つけて祓えばいいんだろ? ところでなんだよ二人目の妻って」
     五条がキレ散らかしておる。一度殺されかけたからか、甚爾への当たりがつよいの。
    「フリーのオカルト記者の元旦那を探していたあいつが提案してきただけだ。俺もあいつも連れ子がいたからな」
     五条がガンたれておる! そよか!
    「悟!」
     袖を引いて名前を呼ばれただけでデレておる! わかりやすっ!!
    「俺が禅院家の人間でも、誰も力を貸してはくれなかった──今となっては自業自得だが。呪術師なんてそんな奴らばかりだ」
     夏油が息を呑んだ。何か思うところがあったらしい。
    「そんで? おっさんはこれからどうしたいわけ?」
    「呪霊の居場所さえわかれば──」
    「駄目だろ。おっさんの戦い方じゃ、助かるものも助からねーよ」
    「……」
    「おっさん。人手不足の学校があんだけどさ、そこで雑用でもやらねぇ?」
     は? と甚爾以外の全員が五条に注目する。
     五条は携帯電話を取り出すと、おもむろに電話をかけ始めた。
    「もしもーし? 夜蛾? 呪術高専で雑用したいって奴がいるんだけど、採用でいいよね? ──はい、けってーい!!」
     携帯電話の相手はブチ切れておったぞ!? 五条はニヤニヤと笑って電話を切った。
    「はい。これでおっさんは高専の人間。困ってんなら仕方がねぇ、助けてやらないとな」
     得意げにニヤリと笑う。こやつ──調子に乗っておるな!
    「うまい! うまい! うまいっ!!」
     ──ところで灰原、お主はどこを見ているのじゃ……!


    ●エピローグ

     祓う、取り込む、その繰り返し

     祓う、取り込む……皆は知らない呪霊の味

     吐瀉物を処理した雑巾を丸飲みしている様な……
     祓う、取り込む──

     現場近くに到着すると、せいらとそよかが交戦中と補助監督から報告を受けた。長く時間がかかっているらしい──苦戦しているのか? いてもたってもいられず走って現場に向かう。
    「せいら! そよか!」
     あまりの様子に私は言葉を失った。
    「?」
     毛むくじゃらの大きな呪霊の背に乗り、楽しそうに笑っているせいら。そよかは計測器を使って付近の調査を熱心にしているようだ。
    「?」
    「あ、すぐるだー! おーい!」
     呪霊が犬のような鳴き声を上げる。
    「これは、一体……君たちは何をしているんだ? その呪霊が元凶ならさっさと祓えはいいじゃないか」
    「なんで?」
    「なんでって、呪霊は他のところにもいるしこんなところで時間をかけていても──」
    「傑、私たちは少しでも呪霊を減らしたいの。
    ──ここになぜ呪霊が発生したのが、原因を突き止めて解決案を提示して呪霊を納得させることが出来てこそ、ようやく意味があるのよ。ほら、これをご覧なさい」
     この場所での過去の事故発生件数、事故の種類、具体的な改善案……なんだこれは……。
    「どうかな? これで大丈夫そう?」
     毛むくじゃらの呪霊はわふわふと嬉しそうにしていた。
    「大丈夫そうだね! 良かったー! よーし、じゃあ最後にシャワータイムだー! そよか! お願い!」
    「わかったわ!」
     そよかは白猫の呪霊を呼び出すと、天気雨を降らせた。毛むくじゃらの呪霊は嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねている。
    「あ、そうだ! せっかくすぐるがいるんだもん、お友だちにならない?」
     そんなことをせいらが言い出す。
    「あはは、喜んでだって! すぐる! お願いしまーす!」
     ……毛むくじゃらの呪霊に手を伸ばす。いつものようにきゅるりと球体になるが、いつもの黒い球体とはまるで違った。まるで青空を切り取ったような澄んだ水色。
     口に入れると爽やかなラムネのような味を感じた。
    「お! なんだ苦戦してるっていうから来たのに。終わってたか!」
     悟が突然姿を現す。
    「傑が手伝ったからか? 流石だな。最強!」
     私の肩に悟の腕がまわる。
    「いや、もう私が来た時には終わっていたよ。彼女たちが祓う呪霊を呪霊操術で取り込ませてもらった」
     彼女たちが時間をかけて任務に取り組んでいた理由。私は少しも理解できていなかった。
    「そうだったのか。そういやぁさ、取り込む時はいつも呑み込んでるよな? 呪霊に味ってあるのか?」
     不意に悟は、私に疑問を投げかけてくる。
    「──私も今日初めて知ったんだ。呪霊の味を」
     私はずっと誤解していたんだ。誤解したまま自分を追い詰めようとしていた。
     水滴が頬を伝う──それはきっと天気雨を浴びたから。
    「なんだよそれ?」
    「任務も終わったし、帰ろー! お腹すいたよー!」
     両手を上げて飛び跳ねるせいら。
    「そうね。帰りましょうか」
     濡れた髪を耳にかけ、控えめに微笑むそよか。
    「またファミレスでも行くかー!!」

     私たちの日常は──今日も、
     これからも続いていく──。



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