新人現場監督へ。「分からない」のは、あなただけじゃない
「監督、これどうする?」
現場に出ると、職人さんから突然こう聞かれる。
でも、分からない。
図面を見ても分からない。
現場用語も分からない。
誰に確認すればいいのかも分からない。
それでも自分は「現場監督」だから、何か答えなければいけない。
新人現場監督になったばかりの頃、こんな経験をする人は少なくないと思います。
この記事では、新人現場監督が最初にぶつかる「しんどさ」について考えてみます。
施工管理という仕事を否定したいわけではありません。
むしろ、建設という仕事に魅力があるからこそ、新人がもっと働きやすく、成長しやすい業界になってほしい。
そんな思いで書いています。
「現場監督になった!」という期待
入社する前は、現場監督という仕事に期待していました。
大きな建物をつくる。
多くの職人さんと協力して、一つのものを完成させる。
自分が携わった建物が何十年も街に残る。
純粋に、
「カッコいい仕事だな」
と思った人もいるでしょう。
ところが、実際に現場へ出てみると状況が一変します。
現場に出た瞬間、知らない言葉だらけ
「墨出し終わってる?」
「ここの納まりどうする?」
「天端いくつ?」
「拾っといて」
「ふかしは?」
新人監督の頭の中。
「…………何の話?」
大学や専門学校で建築について勉強していたとしても、現場で使われる言葉をすべて理解しているわけではありません。
しかし、周囲の人にとっては日常的に使っている言葉です。
そのため、
「これくらい知ってるだろ」
という前提で話が進むことがあります。
新人からすると、その「これくらい」が分からない。
職人さんがいなくなったあと、こっそりスマホで、
「天端とは」
「ふかし 建築」
「墨出し 意味」
と検索する。

そんな経験をした新人監督もいるのではないでしょうか。
「分からなかったら聞け」の難しさ
そして新人をさらに悩ませるのが、質問です。
上司から、
「新人なんだから、分からないことは何でも聞けよ」
と言われる。
新人としては安心します。
「分からなかったら質問していいんだ」
と思うからです。
そこで実際に、
「すみません、ここが分からないんですけど……」
と質問してみる。
すると、
「まず自分で考えた?」
と言われる。
もちろん、上司が言っていることも分かります。
何でも答えを教えてもらっていたら、自分で考える力が身につかない。
でも新人は、次からこう考えるようになります。
「これは聞いていい質問なのかな」
「もう少し自分で考えた方がいいのかな」
「こんなこと聞いたら怒られるかな」
そして質問できずに自分で判断する。
間違える。
すると今度は、
「なんで確認しなかったの?」
と言われる。
新人現場監督が最初に覚えるのは施工管理ではなく、
「質問するタイミング」
なのかもしれません。

「段取りが悪い」と怒られる
現場監督にとって「段取り」は非常に重要です。
材料を手配する。
職人さんと打ち合わせする。
作業場所を確保する。
前工程が終わっているか確認する。
次工程との調整をする。
一つでも抜ければ、現場が止まることがあります。
職人さんからすれば、
「監督、こんな段取りじゃ仕事できねえよ!」
と言いたくなることもあるでしょう。
新人は、
「すみません!」
と謝ります。
でも心の中では、
「その段取りを、まだ教わってないんです……」
と思っていることがあります。
新人だからといって、失敗していいわけではありません。
でも、経験したことのない仕事を最初から完璧にできる人もほとんどいません。
何日前に材料を手配するのか。
どのタイミングで職人さんに連絡するのか。
どこを事前に確認しておくのか。
新人は失敗しながら、一つずつ覚えていきます。
朝が想像以上に早い
仕事内容だけではありません。
生活そのものが大きく変わる人もいます。
朝5時。
目覚ましが鳴る。
「まだ寝たい……」
眠いまま電車に乗る。
現場へ到着すると、眠そうな顔を隠して、
「おはようございます!」
と挨拶する。
そして外を見る。
まだ暗い。
現場監督になって、
「こんなに朝早いの?」
と驚いた人もいると思います。
朝礼より前に準備することがあれば、その分早く現場へ行くことになります。
仕事を覚えるだけでも大変なのに、新しい生活リズムにも慣れなければならない。
新人にとっては、この変化も小さくありません。
それでも、ちょっと報われる日がある
ここまで読むと、
「現場監督って大変なことしかないじゃん」
と思うかもしれません。
でも、それだけを書きたいわけではありません。
新人時代には、ちょっとだけ報われる瞬間があります。
いつも怖い職人さん。
昨日は、
「段取り悪いぞ!」
と怒られた。
だから今日は、昨日の失敗を思い出しながら準備する。
材料を確認する。
職人さんに連絡する。
次工程も確認する。
不安になりながら一日を終える。
すると帰り際、職人さんから、
「監督、今日はちゃんとできてんじゃん」
と言われる。
「ありがとうございます!」
その場では普通に返す。

でも、誰もいないところに行って、
「……よかった」
と少し嬉しくなる。
たった一言です。
でも新人にとっては、その一言で明日も頑張れたりします。
新人を「使える・使えない」で判断する前に
建設業界では、新人に対して、
「最近の若手はすぐ辞める」
「根性がない」
「俺たちの若い頃はもっと大変だった」
という言葉が出ることがあります。
もちろん、本人側に改善すべきところがあるケースもあります。
ただ、新人が辞めたとき、
「最近の若者だから」
だけで終わらせてしまえば、何も変わりません。
なぜ質問できなかったのか。
なぜ仕事を覚えられなかったのか。
なぜ失敗が続いたのか。
なぜ会社へ行くことが嫌になったのか。
一度考えてみてもいいのではないでしょうか。
「怒られない現場」をつくりたいわけじゃない
誤解してほしくないことがあります。
新人を一切怒らない業界にすればいい、という話ではありません。
建設現場では、小さな判断ミスが大きな事故につながる可能性があります。
安全に関わることであれば、厳しく伝えなければならない場面もあります。
仕事である以上、新人自身が勉強することも必要です。
だから必要なのは、
「新人に優しくしよう」
だけではないと思っています。
大切なのは、
厳しさと教育を混同しないこと。
失敗した新人に、
「なんでこんなこともできないんだ」
だけで終わるのか。
それとも、
「ここがダメだった。次はこう確認しよう」
まで伝えるのか。
この違いは大きいと思います。
若手が「この仕事を選んでよかった」と思える業界へ
建設業は、社会になくてはならない仕事です。
住宅も、学校も、病院も、オフィスも、道路も、橋も。
誰かがつくらなければ存在しません。
そして現場監督は、多くの人と協力しながら、それを形にしていく仕事です。
大変だからこそ、完成したときに得られるものもある。
だから僕は、
「建設業界は大変だから若者は来ない方がいい」
とは思いません。
むしろ逆です。
魅力のある仕事だからこそ、
若い人が入ってきて、
ちゃんと教えてもらえて、
失敗しながら成長して、
いつか自分が後輩を育てる側になる。
そんな循環がもっと増えてほしいと思っています。
最後に、新人現場監督へ
今、
「何も分からない」
と思っている人へ。
周りのベテラン監督や職人さんを見ると、何でも知っているように見えるかもしれません。
でも、その人たちにも新人だった時期があります。
最初から段取りが完璧だったわけでも、
最初から図面を全部読めたわけでも、
最初から職人さんとうまく話せたわけでもないはずです。
今日分からなかったことを、一つ覚える。
今日失敗したことを、次はできるようにする。
その積み重ねでいい。
そして教育する側の人には、
新人が少し成長した日、
「今日よかったよ」
と一言だけでも伝えてほしい。
本人が思っている以上に、その一言に救われているかもしれません。
僕はこれからも、新人現場監督の失敗、理不尽、苦労、そして時々訪れる嬉しい瞬間を発信していきます。
建設業界を批判するためではありません。
若手が「この仕事を選んでよかった」と思える建設業界にするために。
現場監督のみなさん。
今日も一日、お疲れさまでした。
